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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十章:欲を張るなら、力を示せ 

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229.一時間前の俺に今の状況を説明しても多分信じない part1

「………俺達が行きたい方、東にはいない。だけど、西の方に、大きめな気配がある。結構近い」


 魔力による索敵。

 それも、第二段階魔法陣を使って、念入りに綿密に行っている。


「距離は分かるか?」

「5、60m、くらいです。あと、空からのプレッシャーもまだあります。上空を旋回して地上を監視してる奴らが、しっかりいますね」


「あなたのビートで操れないのお?」

「熱狂させる魔法だからなあ…。奴らの場合、余計に腹減りに忠実になるだけだろう」

「………そのガキの報告は何処まで信用できるんだ?吹かしてるんじゃあ、ないんだろうな?」

「ススム君は集中してるんです。黙っててくれませんか、おじさん?」

「無謀な挑発を吐いた文字数と寿命ってのは、反比例するもんだぜ?お嬢ちゃん」

「色ボケ女!余計な諍いを生むのをやめろ!」

「クワトロ、まずいって、ね?」

「クスクス……『オジサン』だって?」「クスクス……いい歳だって?」

「チィッ………」


 バッタが暴れた事で、塞がった地下道。

 その瓦礫の上には、空間があり、魔力くらいなら通せる。

 俺がその隙間から外の様子を窺い、それに対して伊達男、クワトロが懐疑的な眼を露にした。


 それぞれの手元には、スポーツドリンクや携帯食。


 そう、俺達はマフィア連中と、仲良くお食事会をしているのだ。

 


 

 何故そんな事になったかと言えば、話は数分前に巻き戻る。




「そいつをバラして仕事を終わらせ、こんな町からはとっとと出るぞ」


 クワトロの言葉で一触即発、揮発したガソリンに満ちた空気が作られ、互いに遠隔魔法の撃ち合いを始めようとした所で、


「待った!待ったストップ!ちょっと待って!」

 

 彼らの中で一番弱気に見えた、左手の無い角ばった顔の男が、互いの間に割って入り、闘争の火を踏み消した。


「ディーズ、何のつもりだ?」

「クワトロ、ダメだよ!なにやってんの!良いから魔法引っ込めてよ!ドーブルもナイフ仕舞って!」

「??僕から言わせると、僕からすると?なんだこれ?」


 本気で困惑する敵陣営に毒気を抜かれ、弛緩の雰囲気が漂った。


「あの!そっちの人達!」


 ディーズと呼ばれたその男は、俺達の方を見て、


「話し合おう!協力して生き延びようよ!」


 いきなりお目出度い提案をして来た。


「なっ、ススム君を殺そうとしといて、何を都合の良い事を…!」

「まままままま待って!まってまって分かってる!分かってます!あの、友達になりたいって言わない!それはない!僕達は敵同士、それはオーケー!」


 ミヨちゃんが本気で怒るも、情けなく、そして柔軟に、その追及を躱すディーズ。


「でも見て!この状況!ここでやり合って、バッタがその音を聞いたりして、どうなる?はい!どうなる!どうなりますか!はいどうぞ!」

「それは………」

「………」


 確かに、戦いたくないだろと言われれば、それはそう。

 どっちが勝っても、漁夫の利をモンスターに取られて終わり、それが見えている。


「僕達は、どっちも生き残りたい!だから、銃口を向け合ったままさ、その、トリガーは引かない、その約束だけして、不可侵条約を結ぼう!戦力は増えるし、リスクは減る、ほら良い事ずくめ!」

「そちらの面々が約束を守る保証は?」


 六波羅さんが切り込む。


「義理堅いツラ構えには見えないがな」


 皮肉ったのはロクさん。


「それはそう!僕達はそこの、」俺を掌で示し、「そこの彼を換金したい!それはもう!そこをハッキリさせておきます、ハイ!」

「ええ……?」


 そこは「もう殺す気はないよ」とか、嘘でも言う所じゃ?


「嘘を吐いても、誠実さは出ない!今ここに必要なのは、理屈と一振りの誠実さ、ですハイ!」

「誠実さ?」

「僕達はカミザススムを襲いたいですが、そうすると皆さんの反撃が始まり、何かしらで確実に全部死にます!100%、確実です!そして僕達は、犬死にしたくないんです!」


 つまり、


「あなた達は、実利の面から、生存の方法がそれしかないから、今は彼を殺せない、と?」

「例え不意討ちに成功しても、その後におっ始まっちゃうなら、結局ダメなんです!そちらの方は」掌がミヨちゃんに向く。「何?」「ひぃやっ!こ、こんな感じで、カミザススムが失われれば、必ず復讐するでしょう!そういうヤバイ奴の目をしてます!何度も見ました、そういう目!」

「見る目があr「おニク先輩?」純情な少女になんて事を言うんだお前!」

「す、すいません!」


 ニークト先輩って、ミヨちゃんに途轍もなく弱くない?いや女の子全般に弱いんだったわこの人。

(((あなたが言いますか?)))


「と、とにかく、我々の唯一の生存条件が、カミザススムには一時的に手を出さず、皆さんと協調する事、()()()()!この切羽詰まった状況を明かす事が、我々からの『誠意』、です!」


 「理屈」と「誠意」。

 そういう事か。


「信頼は要りません。憎んで結構。しかし表立って全面敵対を選んだ時点で、全滅ルートなんです!必至なんです!我々はなんとしてでも、利用し合いの関係性を作りたい!そしてあなた達には、断る理由はない!四面楚歌の中から、目を光らせるだけで敵の敵になってくれる勢力を、一つ確保できます!ウィンウィン!」

「………成程」


 六波羅さんが一歩前に出る。


「貴方の提案は分かりました。前向きに検討させて頂きたく思います」


 「ですが」、

 それに続けて、


()()()()()要求は?」


 「貴方」ではなく、「そちら側」。

 何を言ってるかと言えば、


「ディーズ、親父が示したまとに、尻尾を振るのか?」


 マフィアの中で、合意が為されていない。

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