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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十章:欲を張るなら、力を示せ 

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227.これは誰が仕掛けたわけ?正直に名乗り出な? part2

BEAT(ぶっ飛べ)!」


 体内に正三角形の原始魔法陣を、いや、それを円で囲う事で出力制御を容易にした第二段階魔法陣を構築。

 強化した魔力爆裂を臭そうな口に押し込み顎を外してついでに遠ざけてやった!


「虫歯と口内炎に気を付けてろ!」


 横から腹這いで滑るように食い付いて来た一匹の頭を蹴り潰し、それでも動いているのも関係ないと群れの中に蹴り返してやる!


「ススム君!?」

「ミヨちゃん!ニヤニヤバッタ共のお蔭で魔素が濃い!俺も戦える!」

「ジェットチビ!進行方向180°の前線を張れ!お前がメインアタッカー、N(ナイト)だ!やれるか!」

「ガッテン了解です先輩!」


 斜め跳躍!横からおやつにありつこうとしていた一匹にドロップキックを入れ反動で空中ひねり回転!先輩の隣へ着地!


「ロクさん!ルートの誘導を頼みます!」

「分かった!が、あまり期待するな!道が元のままで残ってるとは思えん!」

「後ろからも来ましたよおおお!」


 六波羅さんの言う通り、背中側の圧迫感が強くなってきている!


「右の民家を突っ切れ!その先にもっと広い通りがある!」


 ロクさんの誘導によってニークト先輩が横の壁に突っ込む!

 塀を、窓を、内壁を破って反対側へ!

 遠くで背の高いマンションが倒壊しているのを尻目に、

 疎らになった人の間を縫って疾走!

 

「降って来てます!」

「それでも進むんだよ!」


 空からまっすぐ直接攻撃してきた数匹を開脚回転蹴りで飛び散らす!

 滞空する俺を狙って別の奴が突進するが、ミヨちゃんがリボンを縮める事でそれを回避!左の通りから溢れるように雪崩れ込む数体にそのままの勢いで攻撃!右肘からジェット噴射しながらのフックパンチ!拳の先から魔力噴射して引いてからの逆の腕で再度同じ手順を踏む!右左右左右左右左!両拳で交互に叩き突いて一時的に押し返し、全体が止まった隙に一番手前の奴の顎を蹴り上げて元の通路に戻してやり、六波羅さんが通過した所でミヨちゃんに回収して貰う!

 六波羅さんが使っている魔法によって、特定の拍に合わせた攻撃が強化されてる!

 これなら力押しできる!


「なに……!?」


 そうやって戦意を熱していた俺に、冷や水を浴びせる先輩の声。


 彼が足を止め、その先に広がっていたのは、


 黒い洪水。

 いや、津波、と言っていいかもしれない。


 数十数百の横列おうれつを並べ、道路や私有地の区別なく一面を踏み埋めて、跳ね飛びながら向かって来る。


 どんな刑罰よりも残酷な海が、波立ちながら潮を満たしている!


「と、飛び越えよっか…!?」

「出来るかバカ!バッタに挑んでいい勝負じゃないだろ!」

「ロクさん!下水にもう一度入りましょう!奴らのサイズならそう簡単には入って来れません!」

「それならもっと良いのがある!急いで前に走れ!」


 六波羅さんの提案によって、ロクさんがルートを選定する。


「そこの階段だ!降りろ!地下鉄の駅がある!」


 駆け下りて暫く進んだ先、降りていたシャッターを無理矢理引き上げて全員で中へ飛び込む!

 暗い。ここはメインのホームへ続く通路的な場所だろうか?


「だが、路線は地上駅や車庫に通じている場合がある…!そこから侵入されている可能性は、充分にあるぞ…?」

「さっきのおっきい人みたいに、穴を開けて入ってくる事もあるだろうし、いつまでも安全じゃないですね…」


 先輩やミヨちゃんの話し合いを聞いて、次の行動を思案していると、僅かな揺れを感じ始める。

 それは徐々に大きくなっていき、


 数十m先の通路がガラガラと崩れる!


「言った傍から!」

「シッ!待って下さい。落ち着いて、静かに…!」


 それぞれ色めき立つ中で、六波羅さんが最も正しく現状を理解していた。


 揺れが大きくなり、無数の足が踏み鳴らす音が過ぎて行き、やがて沈静化していく。


「さっきの波が、通っただけです。何しろあの脚力が、あれだけ大量に蹴りつけますから、地盤が脆めだと、ああやって踏み抜かれたりもするのでしょう」


 見つかって、追い掛けられた、というわけでは無さそうだ。

 しかし、道が潰れてしまった。

 瓦礫を撤去して通る事は、出来るかもしれない。それをやってる間に、バッタが寄って来る、という必然を度外視すれば。

 かと言って地上に出れば、その瞬間に、飢えた群れの餌食だ。

 さっき上に居た人達は、たぶんほとんどがもう……

 

 だから奴らの前に出れば、目移りする事なく全てがこっちを向く。

 地下に逃げ込んでも、穴を開けて付け狙われるだろう。


「さて、良いニュースと悪いニュース、って奴ですね。カミザさんは魔力が使えるようですが、致命度は深刻化しました。国がいつ救助隊や防衛隊を送ってくれるかも分かりませんし」「待って!」

 

 俺は後ろに振り返り、そちらに魔力を飛ばした。


「チッ、おい、ありゃあどういう事だ」

「モンスターが魔素を作ってるって話、ほんとだったみたいでちゅねえ?」

「僕からすると、僕達をここまでらせるのって、とても失礼な行いなんだよ。だって親父の命令に、逆らう行動だからね」


「…!ええい!どうしてこうトラブルってのは立て続けで休ませてくれないんだ!ふざけやがって!」


 暗闇の中には、俺達と同じ事を考えたらしいマフィア共が勢揃いしていた。

 どうしてここで会ってしまうのか。それこそ魔法のような、不可視の力を感じる。


「まあいい。ここで会えたのは不幸中の幸いだ。そいつをバラして仕事を終わらせ、こんな虫だらけで(ひな)びた町からはとっとと出るぞ」


 狭い通路。

 外には蝗害。

 

 殺し合いが、逃げ場所を断った上で、再開されてしまった。

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