第九章登場人物、用語解説 ※読み返し用、飛ばしても問題ありません
〈登場人物〉
ロクさん:戌島県の永級周辺廃墟区画で進が出会った男。その辺りのホームレス達のリーダー的人物。肌は浅く染まり、皺も多く、頭髪は短く、白髪だらけ。元はやり手の実業家だったが、負けが込んでその地に流れ着いた。
サブロー:戌島県の永級周辺廃墟区画で進が出会った男。髪は細く艶も無く、顔の左右から首まで伸び放題。口周りも髭で隠れて、全体が色褪せたように白っぽく見える。元心理カウンセラーらしい。
六波羅空冶:グランドマスターの私立探偵。伸び気味の髪を頭の後ろでマンバンヘアに纏めた、30代男性。漏魔症罹患者の遭難事件を始めとした、「救助隊すら匙を投げた案件」「司法を当てに出来なくなった行方不明者」の“回収屋”として有名。
表向きの素行は結構良いので、公安からは最低限の定期連絡のみで見逃されている。宍規刑事(第五章参照)とも顔見知りらしい。
玖米島恭子:六波羅の探偵助手。オーバル型眼鏡を掛けて、白シャツにグレーのスカートスーツ、茶色がかったウェーブ髪と、「美人秘書」の顔をしているが、敵に回したくない陰湿さを持つ。
シクシィ:二人で一つの魔法を使う壊し屋コンビ、“69”の片翼。燃えるように逆立つ白黒髪と肉食獣の眼光と鷲鼻、豊満なモデル体型を持つ粗暴な女性。自分やそれに触れた所から何かを切り離す能力。
ナイニィ:二人で一つの魔法を使う壊し屋コンビ、“69”の片翼。地雷系化粧をしたスレンダーなアイドルらしき見た目。桃色と水色の二色の脚に届く長髪が体に巻き付いている。触れたものを自分と融合し一部として取り込んでしまう能力。
セロ:とある麻薬カルテルの首領。特に気に入った手下を「家族」と称し、特別な実働部隊として編成している。
ディーズ:とある麻薬カルテルの精鋭部隊、「家族」の一人。低身長で猫背、四角い顔、丸くギョロついた目を持つ、左手の無い青年。組織一番の臆病者だが、頭の巡りの速さを買われており、セロの後継者として期待されている。本人の戦闘能力は皆無に近い。
ウーナ:とある麻薬カルテルの精鋭部隊、「家族」の一人。影のある美貌と腫れぼったい唇、褐色で砂時計型の肉体を持った、一方的母性に溢れる美女。薬物依存に酷似した症状を相手に植え付ける能力。赤ちゃん言葉がお気に入り。メンバーの揉め事をやんわりと取り成す役目を負う事が多い。
クワトロ:とある麻薬カルテルの精鋭部隊、「家族」の一人。幅広い襟のスタイリッシュなタキシード、上部ボタンをはだけたシャツ、頭にソフトハットを被った顎髭の男。植物の種子等から遺伝子情報を読み取り、その特性を持った魔法生成物を生み出す、用意さえあれば燃費最強クラスとなる能力。
ドーブル:とある麻薬カルテルの精鋭部隊、「家族」の一人、或いは二人。赤と青のバニーコート、ボンレスハムのように網タイツに包まれ、引き締まった脚、肌の色が黒と白と正反対な事以外、瓜二つの見目を持つ二人の少女。互いに引き合う能力。どちらも「ドーブル」。二人で「ドーブル」。
シーズ:とある麻薬カルテルの精鋭部隊、「家族」の一人。黒い顔料でベッタリな顔の、髪も防具もツンツンとした巨漢。突進に関係する能力。知識人ぶった言動が目立つが、精神年齢はメンバーの中で最も幼い。
アルファ・ワン:かつてクリスティア陸軍の一組織グリーンキャップにおける、番外特殊部隊グループ“掃討班”、アルファ分遣隊を指揮していた男。ある任務が原因で退役していたが、妻の難病の治療費の為に暗殺依頼を請け負う。
アルファ・トゥ:アルファ分遣隊元副隊長。ワンの親友。退役後にギャンブルで身を持ち崩し、莫大な報酬が約束された暗殺依頼に飛び付いた。ワンの事情を知っており、チャンスを分けるつもりで勧誘したのも彼。一定範囲に入った物を、音や匂い等まで含めて外から隠匿する能力を持つ。
仲介業者の女:非合法な仕事の依頼者と実行者を結び付ける役割。それ以上の詳細な情報は無い。最近はある青年を便利な手駒として気に入っているらしい。
青年:それ以上でもそれ以下でもない、そういうもの。
“騎行隊”の小隊長:キリルから派遣された銃火器込みの戦力、その纏め役。只者でない相手を見分ける眼力を持ち、独自のバランス感覚で任務前の“同盟”の空中分解を防いだ手腕は見事であったが、体制から犠牲として選ばれた時点で、彼の命運は決していた。
聖地解放戦線:隷服教過激派。旧丹本軍を始めとした、あらゆる武装集団の「えげつない所」を習合させ、「この世で最も死を恐れない軍団」を自称する者達。とある土地の奪還の為に、今回だけは宿敵との呉越同舟を呑んだ。魔学的回路を改造し、自爆技を全員が習得している。
救世主教原理主義者:救世教の一派。科学的見地との宥和を拒み、古い時代の教えをそのまま保存し、その信仰の中で生きることを至上とする者達。彼らにとって漏魔症罹患者とは、人に化けた魔物である。
イー:大陸からの刺客5人組のリーダー。今回の任務は漏魔症の少年を殺すこと。因みに5人組の名前は普通にコードネームで、互いに本名を知らない。
アー:大陸からの刺客5人組のサブリーダー。仕事の詳細を深く詮索するようなことはせず、言われた事を熟すだけ。
サン:大陸からの刺客5人組の一人。お調子者で口が軽い。戦闘員以外にも女性への色仕掛け担当も兼任。
スー:大陸からの刺客5人組の一人。紅一点。戦闘員以外にも男性への色仕掛け担当も兼任。
ウー:大陸からの刺客5人組の一人。同業者の間でも「慎重過ぎる」、「知り過ぎると色々面倒だぞ」と諫められるくらいに、色々余計な事を考えるタイプ。
謎の女:進の前に突如として姿を現し、カンナの事を「お姉様」と称する長身女性。黒と赤のゴスロリ風ドレス、ヨーロッパ貴族のカツラ風に段々となった白い巻き毛、竜の顎めいた面頬と、強烈なキャラをしている。
聖聲屡転:チャンピオン第3位にして救世教会の最高傑作。深級ダンジョン“奇譚行”にインスパイアされ、その魔法は作り上げられた。教会、教王の代弁者。二人の信徒を憑座として声を届ける。
ジャミーラ・サマーニャ:明胤学園中等部主任でランク9。ヤクザ映画が主な学習元なせいで、丹本語が若干怪しい女性教師。
最悪最底:本名、零負遠照。黒のタートルネックに黒コットンパンツ、耳を隠す長髪パーマ、針金めいた瘦せぎすで、顔の造りが緩やかな男。かつてシャンの親友だった。
〈用語〉
六波羅探室:六波羅空冶が所長を務める探偵事務所。ダンジョン関連の荒っぽい人探しが主だが、採算が合わない事も多く助手の頭を悩ませている。
騎行隊:キリル連邦に籍を置く民間軍事会社、の皮を被った海外派遣用非公式キリル軍。内政干渉や侵略行為と咎められずに他国に武力介入をしたい時に利用される、使い捨て軍隊。社会の一員となれなかった者達の、最後の居場所。
番外特殊部隊グループ“掃討班”:クリスティア陸軍が保有する最強歩兵集団、“グリーンキャップ”の別名で知られる彼らの中で、最も極秘性の強い精鋭部隊。困難且つ“汚れ仕事”と称されるような任務に従事する事が主で、その役目は過酷を極める。
枢央教会:陽州神聖ローマ市国教王庁が置かれている、救世教の本拠地となる教会。救世教にとって重要な決定を下す場所。“聖聲屡転”の本体もここに居る。
隷服教:旧典教、救世教という派生系譜の“最後”に名を連ねる教え。その特性上、前記の宗教と一部の聖地を共有しており、その領有権を巡る争いが、“不可踏域”発生の原因となった。
見逢って融け合う:ドーブルが使用する魔法。任意の二つを「出逢わせる」能力を持つ。
割れて芽吹き戻る:クワトロが使用する魔法。様々な種類の植物を生み出す能力。種子を基に生成すれば、必要魔力を大きく節約できる、ダンジョン外使用に適した魔法。
口付けは御預けよ:シクシィとナイニィ、二人で使用する魔法。簡易詠唱“口付”で自身と対象の融合、“御預”で自身の一部を分離する。敵や攻撃を自分の一部としてから解体するコンボが必勝パターン。完全詠唱では同時発動回数と範囲が向上。
強弱均衡同害報復:ジャミーラが使用する魔法。ある対象が受けた損害の分、別の対象からそのまま取り立てる能力。ただし交換レートはそれぞれの本心に依存し、一方からはどうでもよく見える被害が、強力なしっぺ返しを生むことも。
無量の名を称えよ:六波羅の魔法。口で作った音でビートを刻み、対象の体内にリズムを響かせ、生命を高揚させ精神を操る。単純な精神構造なら軽く誘導する事も可能で、強化や解呪、耐呪といった効果を与えること出来る。
十文字詠唱:禁忌。それなりの特別な地位と、強力な魔法能力の持ち主でなければ発動できず、更に完全成立させた例は皆無と言われる。主な使い道は、不完全な発動によって周囲に厄災をばら撒く、自爆的な使い道。
箴埜筵:世界10例目の永級ダンジョン。出現時の逸失の際に現れたモンスターの特徴以外、民間には一切の詳細が伏せられている。
それが出現した周囲には、忌避感から未だ人が寄り付かず、更に国の拠点建設や交通整備、建築物のスクラップ&ビルドが反対運動によって妨害され、復興が断続的にしか進まない廃墟区画となっており、社会からあぶれた者達の逃げ場所と化した。




