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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第九章:ワルモノ共が、続々と

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217.乱闘(袋叩き) part1

「シュッ!」「フッ!」


 双子の片割れが片足飛び蹴りを放ち、もう片方がそれをすぐに引き戻してミヨちゃんの反撃を阻止!


「ぐるり!」「ルルリ!」


 着地した一人を軸に二人が回り今度は先程支点になっていた方が振り回されるように宙を横切る!互いの手をギリギリまで伸ばした上での脚による打撃は、謂わば長射程の回し蹴りだ!ミヨちゃんのバックステップは距離を離し切れず防護膜にまたしても強烈な衝撃が入る!


「ぉぉぉおおおお!!」

「ミヨちゃん!後ろ!」


 棘だらけの巨人が飛来!速い!単なる落下以上の速度で背後から急接近して、またしてもミヨちゃんはこれを避けられない!リボンが作り出す球体面で衝突時のエネルギーを逸らすように受けて横に跳び、辛くも離脱!


「せーの」「ぴょんっと」


 そこに踏み込むようにして同時に現れる双子!

 この二人と巨人とで挟んでダメージを蓄積する、そのやり方が既に出来ている!


「おい!見た所、あの双子の引き合わせる魔法、あっちの大男には効果を発揮しているぞ!」


 必死に怒鳴るはロクさん!


「リボンで包めないと、完全に遮断できない…!」


 焦ったような声で返すミヨちゃん!


 間に彼女が入るだけでは、その能力を無効化する事が出来ていない!


「もっと上げる?」「もっと仕上げる?」


 俺の眼にも明らかな程、ギアを上げて来た!


 目にも留まらぬ速さで一人が拳を何連も撃ちこみミヨちゃんが腕とリボンで全て防ぐ!カウンターの一発はいつの間にか距離が開いていて空を切る!代わりにサイドからもう一人が飛び出し式ナイフで刺しに来てリボンが止め「いっ!?」ミヨちゃんの苦しげな声!障壁が左足で蹴られており、その靴裏からナイフの刃が伸びている!ミヨちゃんの脇腹から流血!


「ミヨちゃん!?」

「魔具……!それも、魔力を中和、相殺して、防御を貫通するタイプ…!」


 そんな、

 彼女の防御を貫ける程の物なんて、かなりの高級魔具だ。数百万はする。

 それを暗器として、足の下に隠し持っているなんて。


「銃よりこっち?」「それっぽっち?」


「つぅ……!」


 傷は治される。

 ただし、ダンジョンの中より、治りが遅い。

 そして、魔力はどんどんと減っている。

 刻限が、向こうから疾走して来る。


「やっ!」「はっ!」


 一瞬なら防御を破れる刃も加えての、再度の攻防!

 手を繋ぎ、指を絡め、位置を入れ替え、飛んでは跳ねて、

 双子の多彩な攻めを相手にしては、守勢に回らざるを得ない!

 一人と拳を交わしていたら、のけぞるような動きで二つの背中が合わさり、下を潜るようにもう一人が前に出る!

 そしてそのスイッチ動作の間にも、俺の眼では見切れないキックやナイフ攻撃が、何度も打ち込まれている筈だ!

 それでも食い下がり、リボンを含めて二人同時に注意を向ければ、後ろから大男が突進して来る!


「カワイイ」「弱っこい」

「あと何手イケる?」「あと何秒生きれる?」


 意識を誘導し、隙間を作って、刺し殺す。

 巧みで、熟達し、華麗ですらある。


「このままじゃ…!」


 このままじゃ、ミヨちゃんが、

 いや、ミヨちゃんだけじゃない。


 俺は視線を下方に、街道の人混みの中に向ける。


 そこに居るやつらは、魔具や拳銃等で武装して、俺達を追っている。

 彼らの中にもディーパーは居て、この戦闘に参加してもおかしくはない。

 そうしないのは、足止め役が居るからだ。


「グゥゥウルルルルルルル……!」


 大きく、力強く、荒々しい狼が、


「ゥオオオオオォォォンンンン!!」


 ニークト先輩が、そいつらの相手をしている!


 炎を纏ったドスを爪で止め手首を捻って奪い取る!

 散弾や圧縮風刃を肉の鎧で受けながらジャンピング膝蹴りを一人の顎に入れつつ密集地帯にダイブ!飛び道具を撃てばお仲間に当たるような状況を作る!

 後ろ蹴りで警棒型魔具を振り上げた男の胸を打って吹き飛ばし3人を巻き添えに!

 ショルダーで正面からのナイフを受けてそのままタックル!壁と挟み潰す!

 狼の顎が器用に動きさっき入手した長ドスを回して横に居た一人の肩に刺す!

 踏みつけるようなサイドキックで右側面を固めていた敵の膝を破壊して、痛がり下がった頭を両手で引き下ろし膝で打ち据える!

 仲間に当てる事を割り切ったのか、それとも元から別の勢力だったのか、拳銃を容赦なく乱射する複数人!

 狼の肉に何発か喰い込ませながら、先輩はまた大勢の中に跳んで肉の盾を利用する!

 2、3人が彼の後ろから覆い被さるように取り付き短刃を突き立て、その部分から皮鎧が凍結されていく!

 クロスボウ型の魔具から帯電ボルトが発射されるも、爪で弾かれ回りながら生垣を削り割って向こう側へ消える!

 先輩は組み付いている邪魔な奴らの腕を振りほどき、それでも重そうに膝を突く!何か身体の動きを阻害するタイプの魔法も唱えられているのか!

 これ幸いにと周囲が集まってきたところで上半身を大きく振り回し全員を吹き飛ばし、その後に生じる隙を狙った頭の切れる奴の一人を足払いで転倒させ、肘を立てながらドロップアタック!

 そこから巨体による前転で何人かを路面に引き倒し、落ちてた手斧を投げ放ち、弾を込め直して離れて撃とうとした男の手から銃を叩き落とす!

 手首の横から爪を生やして詠唱しようとした一人の肩口に押し当て、更なる力を重ねて容赦なく搔っ切る!

 吠え声を上げながら前進し、通過した敵を続けざまに切り捨てていく!


 互いに撃ち合うような混乱状態を誘発し、一対多の圧倒的劣勢でも、リンチなど受けずに対等な遣りあいの形に持ち込む。


 だけど、そう見せてるだけだ。

 魔具や魔法生成物をぶつけられる度に、よろけ方がより大きくなっている。

 スタミナが削られて、脚に来ているんだ。


「これじゃあ!」


 これじゃあ、どうにもならない。

 勝つ事はおろか、逃げる事さえ出来ない。


「ミヨちゃん!もう駄目だ!これ以上は!」


 これ以上、俺の事情に巻き込めない。

 これがカンナを狙った物なら、全部が全部、俺のワガママの結果だ。


「俺を放せ!狙いは俺だから!そうすればまだ助かる道が」「ススム君」


 ミヨちゃんは一度、今立っているトタン屋根を右足で大きく叩き、踏み破った。


「黙って」「でも!」「もう一度だけ言うよ?」


 肩越しに振り向いたその目は、皮膚組織をズタズタにする程、冷たかった。


「黙って」


 怒り。

 それだけを感じた。


「これは年長者のアドバイスだが」


 ロクさんが小声で語る。


「この状態の女には、大人しく従っておいた方がいい」


 そんな、そんな事を言われても、

 そんな、なんで、

 なんで怒るんだよ。

 怒ってる場合じゃないだろ。

 今、三人とも、命が危ないんだ。

 ミヨちゃんも、ロクさんも、ニークト先輩だって、

 このままじゃ、また、


——すてただろ


 あの声が聞こえる。

 捨てたくない。

 捨てたくないから、離れたのに。

 ここまで来たのに。


「良い友達を持ったな」


 ロクさんは言う。


「ここまで強いえにし、俺は持てなかった」


 どこか羨んでいるように。

 でも俺からすれば、どこも嬉しい事なんてない。

 俺を追い掛けて、みんなが死にに来るなんて、どこも——

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