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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第九章:ワルモノ共が、続々と

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216.見合わない相手 part2

「………一つ上の階に移ったッス!東から3っつ目!」

「りょー…!“グレっち”ー…!」


 魔法によって、兎のような白く長い両耳が生えた、八守月夜。

 その報告を聞いて、ベージュ色に光るおばあちゃんアルパカ人形を、パーカーのチャックに引っ掛けた狩狼が、両掌を合わせて前に伸ばし、その隙間を使って高速貫通弾グレイハウンドを発射。


「オラオラ移動するぞ!掴まれ!」

 

 魔法による一部変身と膂力強化、更にベースの身体能力を底上げした乗研が、六本木と訅和を抱えて走り出す!

 胸ポケットにおじいちゃんヤギ人形を入れ、魔法の効力を向上させ、手足を兎のそれにした八守が、狩狼を背にその後を追う!


 これで4回目。

 彼ら5人は、こうやって何度も場所を変えては、姿無き相手と撃ち合っていた。




 探偵、六波羅空冶が、日魅在進の行動を読み、永級ダンジョンに最も近い場所、棄てられた街区に居ると予想したのは、つい昨日の事だった。


 それを信じ、探索範囲を絞った彼らだったが、そこで思わぬ収穫を得る。

 人の寄り付かない廃墟を根城とする者達、彼らから二つの有力情報が齎されたのだ。


 一つは、最近になって彼らと交流している、妙な若者が居るという事。

 

 そしてもう一つは、怪しげな薬によって、この地の浮浪者達の行動を一手に握ろう、などと画策している勢力が居るらしい事。


 ニークトから聞かされていた、“カミザススム”周りの不穏さ。それを裏付けるような、謎の犯罪者集団の登場に、六波羅はいよいよ本格的に、トクシパーティーの同行に反対し始めた。

 

 が、その議論の決着がつく前に、事態が不可逆点まで到ってしまった。

 

 明胤学園への襲撃。

 時を同じくして、街中に溢れるアウトロー達。

 間違いなく、日魅在進を害するという意思が、存在している。


 まず、詠訵三四が口火を切った。

 居ても立っても居られなくなった彼女は、進を探すと言って、人の流れが向かう先へと一人で突撃して行った。

 嗅覚を使って二人を合流させようと、狼の皮を被ったニークトがそれに続き、二人を守る為に六波羅も付いて行った。


 その時にニークトは六本木に、狙撃手の危険を仄めかした。

 こちらからは見えない程に遠くから、銃弾か魔法で攻撃する、一方的殺傷者。

 

 それを聞いた彼女は、八守の魔法によって得られる、聴覚の鋭敏性を使って、相手を見つけ、抑止する作戦を考えつく。


 彼らは事前に、それぞれの位置がGPSで分かるよう、位置情報連携アプリを入れていた。用心の為のそれが、大いに役立った。


 ニークト達が行く先に、日魅在進が居る。

 であれば、そこを狙いやすい場所を、重点的にマークするべきだ。

 ただ相手は——居るとするなら——人間同士の殺し合いの為に来た、暗殺者である。

 探知されないように、何らかの手を打っている。


 その時、八守が役に立つ。


 遠くから撃つ時、飛翔体が遅ければ、狙った場所に当たらない。当たったとして、標的がそこから動いている、となっては意味が無いだろう。

 飛ばされる物は魔弾であれ鉛の弾丸であれ、音速を遥かに超えるスピードを持つに、違いない。


 であれば、それが空気を押し退け、そのエネルギーが減衰し、生じるソニックブーム、そちらを“聴く”事が出来ればいい。

 それなら弾道を辿れる。

 どこから撃ったかも分かる。


 彼女はその対策に賭け、今彼らがやっている、攻撃後即引っ越しヒット・アンド・アウェイローテーションを編み出した。

 果たしてその狙いは、今の所当たっている。


 が、いつまで続けられるか、それは誰にも断言出来ない。


 相手がもし、それなりに凄腕なら、やられっ放しで終わってくれるとは思えない。

 

 何せ彼らトクシは、対モンスターやギャンバーでは自信があれど、ダンジョン外での実戦対人戦闘、その経験が無い。


 これまでに無い、夜の森を手探りで歩くような緊張感の中、

 

 彼らはまた一射、

 

 目も合わない、居るかどうかも確実でない敵へ、


 こちらが唯一届けられる魔法を、


 半分当てずっぽうに放った。

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