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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第九章:ワルモノ共が、続々と

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213.誰かが繋いでくれた縁 part2

「………あんたが」



 少しして、戸惑ったように、彼が口を開く。


「あんたがこれまでやって来た事も、後悔しない為に、なのか?——」


——カミザススム。


「まあ、そうですね。まだまだ全然、分からない事ばかりですけど」

「驚かないんだな?」

「これでも有名人なもので」


 それについ先日、もっとぶっ飛んだ相手に呼び止められたし。

 今更初対面で名前を当てられたくらい、大した事じゃない。


「配信、って言うのが、あんたの信念の一環だった、と?」

「そうです。手段であり、だけど目的でもありました。俺が出来る精一杯を探して、あれしかないって思いました」

「これから、何かあんたに危機が訪れたとして、どうする?」

「最後まで、それを克服してよろうって、戦います。まだ、やりたい事があるので」

「そうか………」


 ギュッと瞼を閉じて、頭痛に耐えるように、何かを考えてたその人は、


「ロク」

「え?」

「俺の事は“ロク”と呼べ」

「ロク、さん?」

「ススム、これからお前に大事な話をする、一度しか言わないからよく聞け」


 目を開けると、そこには光が、ギラついた意思が宿っていた。


「お前は、狙われている」

「え?」


 確かにさっき、イリーガルからそれを知らされたばかりだが、

 どうしてこの人が、それを知ってるんだ?


「この辺りの浮浪者を使って、お前を捜させている外国人が居る。“ママ”、“ディーズ”、聞き覚えは?」

「い、いえ……」

「雇われかもしれんが、しかしどうもこいつは、尋常じゃあない。街一つを、麻薬で支配した上で、お前を迎え撃とうとしている」

「ま、麻薬…!?」

「恐らくコカインのような薬物と同様の効果を、魔法によって再現している。それで一度でも相手の脳を壊せば、二度と忘れられない。依存症によって魔力無しで操れる。悪魔みたいな力の持ち主だ。赤いキャットスーツの女の体臭は嗅ぐな、近付くのもいけない。良いな?」

「は、はい……!」


 こんな事言われて、普通はもっと疑うべきなのかもしれない。

 けれど、俺が狙われているのは事実で、彼の必死の形相が嘘を吐いてるように見えなくて、その話をすんなり受け入れてしまった。


「俺の方でも色々調べてみたが、この辺りにはそいつら以外にも、怪しい余所者が集まって来ている。恐らく、お前を殺す為だ」


 大事も大事。

 「あっちこっちから」って言うのは、本当に「あっちこっち」だったらしい。


「お前をなんとか逃がしてやる」

「え?で、でも」

「取り敢えず、ここはマズい。見晴らしが良すぎる。狙撃されるかもしれない。もっと複雑な地形の中に、身を隠すべきだ」

「いや、防衛隊の拠点のすぐ横ですよ?さ、流石に銃とか魔具とか撃ったりは……」

「これを見ろ」


 その人はスマートフォンを取り出し、とあるニュース速報を表示する。

 位置情報がバレるのが怖くて、俺のスマホは電源を切っているから、その報道に気付けなかった。


「学園が……!?」


 明胤学園が謎の武装勢力に襲撃を受けている。

 「武装勢力」。

 そう、銃火器を装備したテロリストに。


「お前の退路を断つ為だ。敵は丹本の主要施設だとか、お構いなしに攻めてくるぞ?」


 彼は周囲を警戒しながら歩き始める。

 道路の先、ビルの隙間から、こっちに手を振る誰かが居る。


「俺達はこの街に精通している。何処に隠れるのが一番いいか、よく分かってる」


 「かくれんぼと行こう。治安維持組織が、奴等を全員取り押さえるまで」、

 だけどそれじゃあ、


「あなた達を巻き添えにします!俺を狙ってる奴等は、市街地で魔法を使うような危険な奴等です!殺されますよ!?」


 俺を匿うなんて、危険な事を、


「それがなんだ」


 彼は右に曲がった口で、一笑に付す。


「どうせこのまま、ぼんやり死ぬ所だったんだ。

 最期くらい、後悔の無い人生にするさ」

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