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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第九章:ワルモノ共が、続々と

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211.もうなんか始まってた!? part2

『丹本へようこそ』


 どこかの海上施設だろうか?

 白い隔壁のような物に囲まれた、屋内プールめいた場所。

 立っているのは、丹本刀型の魔具で武装した、黒づくめの機動部隊と、巫女服姿の少女。

 優しげな、老いながらも無邪気さを持つ声は、彼女が持つタブレットから発されている。


『歓迎するよ』

「それはそれは……」

 

 イーは不敵に笑う。


「ご苦労な事だな、イソセのお偉いさん?」

『僕を知っているのかい?』

「そりゃあな。防衛隊関係者で、そんな格好してる従者を使えば、誰だってそう思う」


 ビデオ通話だが、向こうのカメラは切られている。

 流石にここで顔を見せるくらい、間抜けではなかったらしい。


「どうやって、俺達の計画を知ったんだ…?」

『僕達は情報戦で後塵こうじんを拝している、とは言え、何もしないで寝ているわけでもないからね。業界が騒がしくなった辺りで、泳がせてた“観光客”の幾つかが、分かりやすく動き出してくれたから』

「先遣隊は、捕らえられてたわけか」


 祖国を裏切って、自分達の所属を喋り、偽りの連絡を送って来るとは。

 丹本政府に、破格の条件でも提示されたのか?それならそれで、イーも同じやり方で、甘い蜜を啜るだけだ。


「お前達に話す事は、特に無い。大使館に連絡してくれ。迎えがすぐに来る」

『連絡はするよ。いや、もうしている』

「何?」

 

 自分達から、捕らえた工作員の、身元受け渡しを提案するなど、どれだけ寝ぼけているんだ?或いは、この国特有のへりくだり姿勢なのか?


「そうかい。だったら、俺はそれまで、臭い飯でも食ってるよ。なあに、少しの辛抱だと思えば」『いや、君に食べさせる食料を、残念ながら我が国は持ち合わせていない』

「……?」

 

 食事を与えるつもりが無い?

 

「おいおい、それは不当な扱いだ。本国に強制送還された後、抗議させて貰う。非人道的行為として、バッシングの対象になるぞ?」

『いや、君は帰さない』

「勾留か?だったらなんで大使館に連絡してるんだ。よく分からないな」



『大使館にはこう言った。そちらの国から不法入国を試みた5人が、()()()()()()()()()()()()()()、って』

 

 

「……は?」


 そこで、水面に何かが浮かんできた。

 イーはそっちを見る。

 体だ。

 手足をだらんと垂らした、人間の抜け殻が、四つ。

 

「……え?」

『まあそろそろ、匂わせるべき時だと思ってね。「僕達も黙ってやられるだけじゃない。やり過ぎると痛い目を見るよ」って』

「……え?」


 何故、部下が死んでいるんだ?

 ここは丹本で、

 世界で最も平和な国の一つで、

 国境までザルなボケた連中で、

 敵を噛む事すら禁じられた飼い犬で、


「て、敵対勢力と確定していない時から、殺したんだぞ…!?専守防衛はどうした……!?批難の的だ…!国際社会も、お前らの国内の諸団体も黙っちゃいない…!国連だってそうだ!『帝国丹本復活』となじり、世界平和の名の下に、ダンジョンの管理、魔学的実力すらその手から剥奪してやるぞ!」

『いや、そうはならない。ここに居るのは非公式機関だ。デバッガーのみに知られた隠し要素。誰も存在を証明出来ない』

「ひ、非公式……!?」


 そんな筈が無い。

 この国に、そんな物を構える度胸があるわけがない。

 クリスティアにリードを繋がれ、よちよち歩きで後ろを付いて行く。

 そんな白痴共に、“ご主人様”に内緒で、爪を研ぐ胆力なんか……!


『僕らを止める法は、どこにも無いんだ。“超法規的”、だからね』


 彼は舌で口内を探る。


『あと、自害用の毒物は、さっき抜かせて貰ったよ』


 あの、水を操る魔法。

 あれは、それ程の精度で……!


『それで、なんだけど』


 だとすれば、


『中で何が起きてるか、外に知られない場所に、スパイが捕まったらどうなると思う?』

「え……」

『そうだね、拷問だね』


 先遣隊が裏切ったのは、

 その、理由は、


『先に来た人達に粗方聞いたんだけど、一応新情報があるかもしれないからね』


「ま、待…!」


死ぬ(ゲームオーバー)までやるから、早逝出来るよう頑張るといい。全ては君の貢献度次第だ』


 「少しでも良いデッドエンドにしてね」、

 彼は、悟った。

 今居る場所は、これまでの仕事場と同じ。

 

 一手誤れば地獄に堕ちる、最前線真っ只中だ。


 どうしてそんな事、任務に就く前から、見抜けなかったのだろう?

 

 それは、今まで何度も、素通りに近い形で、丹本国内に人を送り込めたから。


 これまで相手にして来た勢力とは、丸っきり勝手の違う、警戒に値しない者達だと思っていて、


——ああ、そうか

 

 ()()()()()()()だ。



 その国を裏から弱体化させ、盗み取る。

 それに慣れてしまったから、彼らはこの国に居る間、緊張感を忘れた。

 その地の危険さに、気付けなかったんだ。



 観光旅行気分で禁域に足を踏み入れた、憐れなる犠牲者。

 それが、彼だった。


 結局、その生涯の最後まで、

 祖国が彼を助けに来る事はなかった。

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