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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第八章:さあ夏休み!と言えば!?

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193.再び、度々、地獄の渦中へ part2

「きゃあああッ!?」


 絹を裂くような悲鳴!

 彼女の脚に、地面から伸びた触腕が絡み付いている!

 シールドは既に尽きたか!

 俺が踵で断ち切るも、更なる数十本が俺の両足も含めて、彼女の五体を搦め取る!

 

「エンリさん!財布を!」


 彼女が片手でそれを開き、中身をぶちまけて、それは壁に吸収され、それらを薄くした。

 だけど俺達は、もう身動きが取れない!


「い、痛い!痛い痛いイタイイタイイタイ!痛いよお!」

「こな!クソぉ!」


 魔力を爆発させ、片腕で彼女を抱きながら、もう1本の腕で新たな魔の手共を払い、


 足りない!

 手の数が、全然足りてない!

 カンナと出会えた、直前。

 あの時と同じように、俺の攻撃力が、届いていない!


 俺の両肩に何かが乗って、引っ張り下ろす!

 呼吸一つで臓腑を毒する、せ返るような瘴気が吹きすさぶ!

 腕も脚も、思うように動かなくなっていく!

 単体に対して、筋力では、パワーでは勝っているのに、

 数が、物量が、質量が違い過ぎる!

 その上、空間自体が有害で、俺から何もかも奪ってしまう!

 たぶん、さっきから、何体も、何体も殺している。

 だけど、こいつら、欠けるより早く、重たくなっているんだ。

 俺が足を止めてしまった、奴等が集中すべき点が固定されてしまった。


 俺一人対、この階層に居る全モンスターの、押し合いとなり、

 当然、負ける。


「す、ススムくん……!」


 エンリさんが、ずりずりと下ろされて、


「た、たすけ……!」


 コールタールのような黒色が、彼女の下半身を、


「し、死にたく…な……!」


 音を鳴らして、水を飲む喉のように、ずぶり、ごくりと、


「ススムくん…!」


 俺は、


 俺には、何も、残っていない。


 俺も、彼女も、全て捨てて、


 それでも、こいつらは、許して、くれなくて、


 カンナも、何も、言わなくて——


——カンナ?


 

 俺は、イリーガルの本命を、やっと理解した。


 カンナだ。


 俺の右眼が、欲しいんだ!



「ススム、くん……!」


 エンリさんはもう、胸から上と、俺と繋いだ右手しか、出ていない。


「わ、わたし……!」


 彼女を守らなければ、

 救わなければ、

 こうしている間にも、足から消化され、平らげられているのかもしれない。

 遅くなればなるほど、その生存率が低くなる。


 イリーガルは、“羅刹デッター”は、言ってるんだ。

 死にたくなければ、

 殺したくなければ、

 一番大切な物を、

 

 「その右眼を、渡せ」、って。


 俺達に、このダンジョンのローカルを認識させてから、絶対に脱出不可能な窮地に捕らえて、それから交渉する。

 その流れの為に、モンスターを小出しにしたり、一度は俺達が生き延びるのを許したりして、


 今、俺にとって、それ以外の道が無い。

 その局面まで、運ばれてしまった。


 カンナは、彼女が入っている右眼は、

 それを人間に取られたくらいで、彼女を縛る事は出来ない。


 だけど、イリーガルは、どうなんだ?

 奴等には、カンナを、その力の一部だけでも、

 自分の物にする手段が、あるんじゃあ?


 彼女の意識を締め出して、俺の方だけをダンジョンに招き、

 ローカルに則って、彼女の所有権を、奴等に移す。

 それが、カンナですら干渉出来ない、裏技なんじゃ、ないのか?

 カンナが俺に、何も言わないのは、もしかして、何も言えないからなのか?


 あの、朱雀大路君が作ったっていう、夢の中。

 あの時でさえ、「カンナが居る」って事自体は、感じる事が出来た。

 今は、そうじゃない。

 もっと深くに隠れたのかと思っていたが、

 居ない、のか?

 これは、試練なんかじゃなくて、


 本当に、誰にも、


 彼女ですら、手が出せない、


 最悪の事態、なのではないか?


「イヤ……!いやあ…っ!」


 エンリさんは、肩の上、首まで沈んでいる。

 俺が、彼女を救う為には、

 “羅刹デッター”が、それで解放してくれる保証が無かろうと、


 右眼を、


 彼女の住処すみかを、


 ここで捨てるしか、


 べちょり、


 俺の服の裾が、誰かに引っ張られた。

 「誰か」、

 そういう言い方をしたのは、

 それがスライムを構成するような、流体ではなく、

 5本の指が付いた、れっきとした、人間の手、だったからで、


「す、すす、む……?」


 その声に惹かれ、俺は、右後ろを、見下ろした。

 その顔を見た時、はち切れんばかりに、胸中で吐気ときが膨らんだ。


「すす、坊……、な、んで……」

「で、“羅刹デッター”…!」

「こ……な………こと……に……」

「デッ、ダアア゛アアア゛ア゛ア゛ア!!」

 

 えづくように、何処かで見ているだろう、この場所の支配者の名前を叫ぶ。


「おまえは!おまえええエエエエエェェェェ!!アアアア゛ア゛ア゛ッ!!!」

 

 このダンジョンに入れられたのは、

 俺とエンリさんの二人、だけじゃなかった。

 奴らが用意した交換条件が、

 そこで上乗せ(レイズ)された。


「ススムくん……!」

「す、す、む……!」


 おじいちゃんが、

 奴らは、彼までも、この中に、


 腕が、もう1本、泥からつき出された。


「こ、こ、は……?」

 

 当然、

 

 そこに居る、


 そこから顔を出す、


 もう一人は、

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