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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第八章:さあ夏休み!と言えば!?

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189.出来ればここから出ずにいたい思いもある

「や、やっつけた…?」

「うん、一旦大丈夫になった」

「す、すごぉい…!」


 喜んでくれるのは素直に嬉しいが、だけど問題だらけなのは変わらない。


「エンリさん。この家の中に、武器になりそうな物がないか、あとそっちが台所だから、持ってける食料がないか、探して欲しいんだけど、お願い出来るかな?」

「え?それはいいけど……、ディーパーって、つっよい、魔具、だっけ?持ってないのぉ?」

「武器関係は、ダンジョン管理ビルより外には、持ち出せない事がほとんどだよ」


 憲法十条の理念を強く受けた銃刀法は、緩和されたとは言え、ダンジョン以外で殺傷兵器を持つ事を好まない。警察官さえ、魔具の携帯には、煩雑な手続きや厳しい審査があると言う。

 民間の潜行者も同じ事で、通常はダンジョン管理ビルに預けて、持ち出す時は潜行課に記録が残るように届け出を行い、24時間以内に別の管理ビルでの受領が確認できなかった場合、警官が捜索に飛んで来て、免許に違反を付けられる。

 移送中は、武器類が入ったカバンやケース等の見える位置に、専用のマークを付ける事が義務付けられ、それを怠った事が発覚すれば、これも違反。

 

 違反者の態度や違反の仕方によっては、その場で即刻、免許の効力が取り消される事もある。

 当然、魔具や刀剣類は没収。免許再取得まで返って来ない。

 

 潜行免許は取り易い。

 だけど、再取得のハードルは途轍もなく高い。

 労働者は微力でも欲しいが、反社会的人物はマイナスだから要らない、という姿勢なのだ。

 

 まだ無名の漏魔症罹患者だった頃は、少しのミスで免許失効にされ、二度と再取得が出来ずお先真っ暗という恐怖に、日夜うなされていた。お蔭で潜行ルール周りには、随分と詳しくなったけど。


「へぇー!そんな感じなんだぁ…!じゃ、じゃあ、ススム君は、ダンジョン用の装備を何も持ってないの?」

「武器は、ね。ただ魔力シールドジェネレーターとか、防刃スーツとかは、その限りじゃない。ダンジョンが近くに無い場所のショップでも、普通に売ってるくらいだからね」


 まあ、あんまり強いジェネレーターだと、電子機器を壊す恐れがあるから、持ち出し禁止物品に含まれてしまうが、俺がいつも使っているのは、そこまで高価でもピーキーでも無い。みんな大好きアヅマダイブ製品である。


「はい、これ、エンリさんの分」

「二つ持ってるのぉ?」

「前に色々あって、予備を持ち歩くようになったんだ」

「あ、もしかしてあの誘拐騒動?」

「そうそう。モンスターコアは、さっき倒した奴のがあるから、それ使おう。結構強かったから、それなりに強めの守りになってくれる筈。使い方は簡単で、ここのスロットを開いて、この針にコアを刺して、閉じる。で、スイッチオン、それだけ」

「今やるぅ?」

「いや、この家から出発する時まで待って。一応ギリギリまで温存しておきたいから」

「わ、分かった…!」

「あと、電源が入れば自動制御オートマティックだけど、高速の飛来物とか……とにかく強いエネルギーに反応して弾くようになってて、ゆっくり沈めてくるようなやり方相手だと不向きだったりするんだ」

「え、そうなのぉ…?」

「そういう時はこのボタンで、手動展開出来るから、シールドの奴がサボってるな、って身の危険を感じたら、すぐそこを押して。あ、でも、大丈夫になったら、もう1回押すのを忘れないようにね?エネルギー食うし、シールド出しっぱなしで換気が不十分で、酸欠になっちゃった人も居たらしいから」

「わ、分かったぁ」

「で、これが防刃パーカー。暑いだろうけど堪えて。フードもしっかり被って」

「………って言うか、ダンジョンの無い町に、里帰りに来たって言ってたのに、何で一式持ってるのぉ?」

「職業病で」


 嘘である。

 ディーパーとは言え、潜行の予定が無い日まで、重い装備品を伴って出歩くなんて、特殊な理由が無い限りはしないだろう。

 では何で俺が持っているかと言えば、「特殊な理由」があるからだ。


 漏魔症嫌いやカンナ目当ての研究機関、果てはill(イリーガル)に命を狙われる、という理由が。


「でも、ススム君は、無防備になるんじゃないのぉ?」

「俺には防刃スーツとヘッドセットがあるから。流石にこれはサイズの問題で、エンリさんには着せれないからさ。それ以外をあげるってだけだよ。ここまでしても、やっぱりエンリさんの方が、遥かに守りが薄いから」

「そ、そうなんだ………」


 あ、バカ!

 何で不安にさせるような、余計な一言を付けたんだ!


「だ、大丈夫!大丈夫!何があっても、まず俺が攻撃を受けに行くから。エンリさんの防御が俺より先に突破されるなんて、有り得ないよ!大船に乗って池を渡る気持ちで居てくれ!」

「それは逆に不安になる喩えだけど……わかった!」


 な、なんとか持ち直してくれた。

 転んでも起き上がる鋼の度胸に、助けられてます。


「それじゃあ、俺は防刃スーツ着るから」

「うん!どうぞ!」

「………」

「………?」

「着替えるから!出てって!」

「えぇ~?私は全然いいのにぃ~」

「俺が良くないの!!」


 持ち直し過ぎでしょ!?

 俺を転がして楽しむ感性は、助からないです!

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