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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第八章:さあ夏休み!と言えば!?

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180.強くなったもんだなあ…ウンウン

「く~ちゃん!」

「こん!オッケー!こぉおおん!」


 合図を送ると俺は引っ張られ、その下に殺到するG型パラス共。

 牛のような角を持つ、狛犬みたいな頭から人の脚が2本、ニョキッと生えているキモい造形をして、今みたいに突撃して来る。

 そいつらはギャグ漫画の乱闘シーンみたいに、砂埃を立てながら絡まり合ってしまい、リボンがそれを外から巻き締めて、先端で掴んだ魔具で切り殺していく。

 

「右の建物内から来てる!」

「こん!これどうぞ!」

 

 リボンが空中で小さな円を描き、俺はそれが持つ反発力を利用して、足場代わりに使う。

 

〈ジャニアアアッ!〉


 爆発のように2階建ての上階の窓が割れ、いや、窓の枠ごと壁が破られ、中から3メートルくらいの大きさのモンスターが現れる。

 道士が着るような服、道袍どうほう、だっけ?それをはためかせ、筋肉が引き締まった身体と鋭い手足の爪、ゴツゴツして、人が爬虫類化したようにも見える、大きな口を持った頭部。

 呪われし実験で生まれた悲しきミュータント、と言われても納得できそうだ。

 

 W(ワジール)型パラス。

 やっぱり撤退途中で仕掛けて来たか。

 

 W型の例に漏れず、他モンスターを統率し、獲物を追い込む知能がある。

 が、

 それでも結局は浅い知恵で、


「来るの分かってんだよなあ!」

 

 く~ちゃんの作った中継地点を踏み石として俺はそいつの上を取っている。

 両足で後頭部を突きそのまま地面にキスさせる直下攻撃!

〈ブジュジュッ!?〉

 だらしなく開いた口を、自らの歯を嚙み砕くほど強く閉じさせてやる!

 だがこいつは結構タフで、まだまだ負けんと五体に力が入る。

 

「やらせないよ!」


 く~ちゃんのリボンが地面と融合しながらそいつに巻き付き動きを止める。

〈シシシシシシッ!〉

 横合いからの数発の飛びばり

 あいつだな。

 気崩したスーツで身を包む、W型と似たような、しかしもっと小さくパワーも弱めな怪物。そいつの両腕は相手を麻痺させる毒針でびっしりと覆われ、しかもその一本一本を発射できる。撃った後の手と針は、丈夫な体組織で繋がって、刺さった者を自分の近くに引き寄せようとするのだ。

 これはM(メイジ)型。

 そして威力は大した事ないから、く~ちゃんの魔具が作る盾で対処可能。

 彼女が「やらせない」と言うなら、やらせないだろう。

 そう判断した俺は、そちらへは魔力探知するだけで、目はW型の方に固定したまま戦いを続ける。


 出鼻を挫かれても、流石はW型。

 拘束に抗って、その腹を浮かせる事までが出来ている。

 ので、俺はその頭に踵落とし、それを蹴り足にジャンプ、からの前転ワンモア踵落とし。

 首を折れればそれが速かったが、こいつの頭の形、前傾姿勢だと頸部を守れるようになっている。

 だから、愚直に頭をかち割る事にした。


 と、そこで、

 ずぅっ、と感じていた気配が、一段と強くなり、

 

「来るわこれ!」

「やっぱりぃ!?こおおおん!」

 

 く~ちゃんはリボンを天蓋アーケードの骨組みに絡め、俺を引っ張りながら上昇!

 突如床が隆起して割れ、タイルが曲げ飛び、デカいヒキガエルみたいな奴が顔を出す!

 

〈シィィィィイィィィイイィィ、シシシ!!〉

 

 C(カプリコーン)型だ!


 W型の口を更に大きく、横に裂いて、そこから両生類の手足を生やしたみたいな奴で、地中を掘り進んで向かって来る。

 しかも、このダンジョン。俺達が行く通路の下には、予めトンネルが掘られているのだ。奴はそこをスイスイ進んで、敵の真下に来たら、お得意の脚力でジャンプ、石頭で出口を開けながら攻撃して来るのだ。

 

 デカいし硬いしで、殺すのに時間掛かるのだが……


「く~ちゃん、上層にも来た」

「F?W?」

「W2体目」

「そっちも何とかしないとだね」

「どっちがいい?」

「私が下を担当するよ」

「分かった。何十秒くらい抑えられそう?」

「1分で全滅させとくね?」

 

 頼もしい限りで。


 俺は魔力を足場に上へ、擦りガラスを突き破って曇り空の下へ飛び出し前転着地。目の前にはW型。

 リボンは解かれた。

 く~ちゃんは全力で敵を迎えるつもりだ。

 今、この高度に、他の敵はいない。

 昇って来るのも、彼女が許さない。

 1対1である。


「よっ、カンフーマン。やるか?」

〈シィィィィ…!〉


 

俺はいつも通り右手を引き、           W型は右前脚で拳を作り、

左手を前のポーズで向かい合う。        左前脚は開いて立てる構え。


          天蓋のメインフレームの上で、

 

 静謐。

 下で何らかの破壊音。

 それがGONG!

 

 W型と俺は同時に踏み込み、

 俺は外からの蹴りを潜って軸足を刈り払おうと下段回転蹴り!

 敵は上に跳んでから前後開脚ストンピング!

 俺は倒立後転によって両足で相手の踵から生える爪を迎撃!

 正対し、からのボディ目掛けた弾丸のような鋭角跳び蹴り!

 W型は地に着いた反動で後ろ脚2本を開いたままビヨンと再直上跳躍!

 足裏同士がぶつかり両者距離が離れ、

 またも息を合わせたように詰め合う!

 滑るようなローキックを踏み台に、鼻っつらへ届く左ジャブ!

 硬質な右前脚によって上側へ跳ね除けられ、

 開いたボディに爪を立てた右の手刀が突き刺さんと繰り出される!

 正中線軸に反時計回りで躱しながら敵の左側頭部を狙った旋風脚!

 折り畳んだ左の前脚でそれを受け止められた、だけでなく掴まれた!

 握力で骨を砕きながらも、俺の攻撃の余勢よせいを使って一回転してから叩きつけられる、というのが見えていた為、既に足首からの魔力噴射を行い、握り締められる事に抗していた。

 W型が身体の向きを反転させ、腕を振る、その直前に噴射を解除。

               慣性でその場に留まり、

               足は容易く抜ける。

               敵の背後が見えている。

               俺の背に魔力炸裂をぶつけ、

           凸凹デコボコしたそこに取り付く。


 高速回転魔力刃を展開したナイフを表皮の窪みに突き刺し登山で言うハーケンのように使って掴まる!

 金属が研磨されるような不快連音!

 しかし柔軟な肩関節を持つW型は背後に両の前脚を楽々回して俺を引き裂こうとしてくる!

 跳び離れて回避。

 そいつは腕を前に戻しながら振り向こうとして、


〈ジ…!?〉


 詰まる。

 頸に何かが巻き付いている。

 それは前脚に絡み、2本の親指を枷のように縛る紐と繋がり、肘を伸ばす動作で首を絞めるように結ばれていた。更に力が加わるタイミングに合わせ、巻き取り機構は起動している。

 自前の筋力プラスαで、自分の頭への脈を一瞬抑え、混乱して、


 その「一瞬」があれば十分だった。

 俺は敵の両膝の裏に1発ずつ、計2連蹴りを叩き込み、それと合わせてダンジョンケーブルを、そいつの首を取った「紐」の正体を強化筋力で引っ張り、

 背面に引き倒す!

 

〈ジャッ!?〉

 

 驚き開かれたそいつの口に、足先で抓んだ回転刃付きナイフを蹴り刺す!

 ブヨブヨとした喉を破壊する感触!

 一応体内魔力侵入で脳に対応する器官を破壊!

 

「く~ちゃん!こっちは終わった!今そっちに——」


 ガラスを蹴り破って下に戻ると、

 彼女のリボンがカエル擬きの口を、更に深々と裂き込んでいる所だった。


「あ、ススム君!」

 

 口の繋ぎ目の部分にリボンを融合され、そこだけ固定された状態で無理矢理ジャンプして逃げようとしたのだろう。

 その傷口から頭骨の奥にリボンが侵入し、何かしらの重要な部位が破壊され、蝦蟇ガマはズズンと地で腹を打ち、事切れた。


「今終わった所だよー!」

「そうみたいですね………」

 

 見ると、C型以外の下級モンスター十数体分が、ダンジョンに吸収されて行く所だった。


 うわーお。さっすがー。

 中級ダンジョンくらいだったら、一人で何とかしてしまう。


 この人、やっぱり、



(最高だわ……!)

(((あ、そうなるんですね)))



 多分彼女なら、ソロでもここを攻略できる。

 く~ちゃんは推しがいがあるなあ。

 あったまる~。


(((定期減点のお報せです)))

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