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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第七章:「校内じゃ負け知らず」ってショボく聞こえるけど、この学園だとそうでもない

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170.沙汰を待つ…、介錯を頼む…

「——っていう感じで、まあ色々端折っちゃいましたけど、要は落第して放校になる瀬戸際、みたいな物だと考えて下さい。その結果が気になって気になって頭を離れなくて、夜も眠れ……いや夜はグッスリ寝たんですけど、つまり、ガクブルしてる、って事です」


〈ギャシィッ!〉


「どうです?皆さんが大企業とかの経営者だとして、問題ばかりで首切ろうとしてた社員が、『大会で結果を残りしてきました!』って言って、『16チームのトーナメント大会で準決勝敗退』、っていう結果を出して来たら、残します?」


〈ニニニィ!〉

〈ニギャッ!〉

〈クヌギェイ!〉


「僕的には、僕的にはなんですけど、結構活躍したと思うんです。ホントですよ?かなり派手に立ち回りましたし、部分部分抜き出したら、MVPハイライトに見えなくもないです。POTGですよPOTG、“プレイ・オブ・ザ・ゲーム”」


〈ギャヌ!〉

〈グィニ!〉

〈ニニニニニニニニニニ……〉


「いやまあそれを言ったら編集次第で幾らでも盛れちゃいますけど、アレです、配信業的な言い方をすれば、“撮れ高”が無かったわけじゃない、くらいの出来栄え、と言いますか……。普通は『良かったね』で終わる話なんですけど、立場が弱過ぎて、それだけじゃ安心材料にならないと言いますか……」


〈ぐ、ググ、グェェェ………〉


「皆さんは、どう思いますか?」


『うんうん』

『そうだね?』

『ところでススム、右手のそれは何だ?』


「え?何って、L型ベジトちゃんですよ?やだなあ、今やお馴染みのモンスターじゃないですか。6層ならちょくちょく出てくるでしょ?あ、初見さんかな?だとしたら大歓迎です!いらっしゃいませ!ご覧ください!こちらの人間の手みたいなのが生えてる草が、“地盤餐マザー・バザー”のL型です!」


『だよな?』

『良かった、俺がおかしいんじゃなかった』

『ススム、怖い』

『悩みを吐露しながら殺戮の限りを尽くすのやめて?』

『ススム君!元気出してよ!』


「えー?でも、折角の三連休なのに、最終日しか配信出来ないなんて、損した気分じゃないですか。本当なら皆さんと一緒に、みっちりダンジョン攻略やってた筈なのに、スケジュール的にそれが無理だったわけで……。なので、時間を無駄遣いしたくないんですよ」


 ススナーの皆と会話しながら、右手でL型の栄養袋みたいな部分を握り潰す。


「というわけで、マルチタスクで行きます!」


『モンスターを破壊しながらでなきゃ、素直に感動できたかもしれないのにな』

『史上最も猟奇的なマルチタスクやめろ、ススム』

『掴まれてるのがモンスター?掴んでるのがモンスター?』

『ススム特有のR18G初見バイバイ』

『俺の中で今最も男女比が疑わしいチャンネル』

『3割の女性って何を見に来てるんだ・・・?』

『庇護欲とかじゃない?』

『素手でモンスターを潰すイカレ野郎に「庇護欲」?妙な感じだ…』


「いや人の事を狂人みたいに言わないで下さいよ!」


『違うの?』

『ススム、間違ってないだろ』

『ススム、諦めろ』

『お前は今のままでいいんだぞススム、おもろいから』


「違いますって!」


 だって、


「素手じゃなくて、ちゃんとグローブ越しに触ってますから!そんな危険行為してません!偏向報道やめてくださーい。遺憾です。そんな事しちゃイカンです」


『は?』

『は?』

『なんて?』

『二度と言うなよ?』

『そっかあ…』

『うん、そうだね…』

『何も言うまい』

『ススム、お前に「普通」は一生無理だ』

『芸人路線も無理だ、ススム』

『殴りたい、このドヤ顔』


 何でそんなヒドイ事言うの?

 と、言いつつ、強さや行動の突飛さに引かれると言うのは、ここ1、2年で慣れっこに……ごめん嘘。慣れてない。今でも嬉しくなっちゃう。調子乗っちゃう。


 だってさあ!

 漏魔症になってからずっと、何ならそれ以前から、自分の弱さに打ちひしがれてった人生だったんだよ!?自分の戦闘能力に人がザワつくの見てたら、そりゃ気持ち良くなっちゃうよ!しょうがないじゃん!


(((ススムくん、つよ~い…!)))


 カンナはやめろぉ!

 

(((あれ?どうぞご存分に、気持ち良ぉく、なって頂いて、良いのですよ?)))


 お前の場合その後に、「じゃあもっと修行をキツくしても大丈夫ですよね?」、って続くだろうが!


(((大丈夫じゃ、ないんですか?)))


 それみろ!

 ドレミファソレミロ!


(((それは減点です。「芸人路線」、さてはだ、諦めてませんね?)))


『笑いを取りたいなら「流星返し」を』「もういい加減にそれ味しないだろ!」


 ペッしなさい!

 嚙み終わったガムはペッ!


「『結構有名になったし、明胤ブランドが無くてもなんとかなるんじゃないか』、ですか?そうですね……」


 正直、暮らして行くくらいの稼ぎはある。

 配信業も普通に続けられるだろう。

 アンチからはまたヤンヤヤンヤ言われるだろうが、まあそれはいつもだ。

 ダメージは軽微に見えるけど、


「でも、その、折角友達になれた人達が居て、その、疎遠になっちゃったら、寂しいな、って言うか……」


 結局、俺があの場所で手に入れた一番の物は、それなんだと思う。


『ああー……』

『ススム、お前裏切ったな!ボッチ仲間だと思ってたのに!』

『この前のコンロ先輩とかか』

『ススムきゅんの不安顔ソソる~…』

『そう言えば斬月先輩の再登場まだか?ススム』

『ススム君ー!!そんな事で縁は切れないよー!!!!大丈夫だからねー!!!!!!!!』

『ススム、本当に友達なら、相手も明胤生じゃないからって、お前から離れたりしないさ』

『放課後とかにまた集まればいいだろ、ススム』

『パーティー組んで潜行とかしろ、く~ちゃんと斬月先輩を出せ、ススム』

『まるで友達がいたかのように訳知り顔なコメント欄』


「そう、ですかね?」


 トクシのみんなの顔を、思い浮かべる。

 俺が退学なり除籍なりになっても、変わらず接してくれるだろうか。



 いや、


——信じろ


 そう決めたばかりだろ。

 あの人達なら、きっと、大丈夫だ。

 俺の自慢の、友達だ。



 と、潜行用端末にインストした、業務用WIREにメッセージが!

 いつもは配信中だと通知は切るのだが、今日は特別だ。


「み、皆さん!結果が来ました!」


 シャン先生に頼んで、俺の処遇が決まったら、こっちのアカウントにも連絡を頼んでいたからだ。

 え?俺が明胤に在留できるか危ういって、シャン先生と星宿先生の話を立ち聞きしてしまったのを、本人に打ち明けたのかって?


 あの、何と言うか、

 シャン先生、あの時点で俺の気配を察知してました。

 なんか、「お前は危機感があった方が、120%を出せたりするからな」、との事です。

 あの人、偶にすっごい意地悪になります。

 あとそれだったら、鍵閉めないで下さいよ!まだカバンが中だったんですから!

 って言ったら、


「お前、忘れ物で戻って来てたのか?何か只ならぬ気配を察したのでなく?しかもカバンを?私物全部じゃねえか?お前逆に何持って出たんだ?」


 と、マジレスの嵐で返された。

 ちくしょう!


「え、えっと、」


 ってそんな事はどうでも良いんだよ!

 結果は?

 

 俺はまだ、

 

 みんなと、

 

 一緒に居れるのか?

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