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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第七章:「校内じゃ負け知らず」ってショボく聞こえるけど、この学園だとそうでもない

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151.静けさの中で忍び寄る

「なんか、面子メンツも含めて、昨日と全く同じ光景過ぎて、落ち着いて来た……“企図きと”ってこの字であってたっけ?」

「“人”だよ!?全然落ち着けてないよ!?」

「お前はそろそろ場慣れしろよ!何で毎回難しくなるんだ!?」

「あなたの場合、表を出歩くだけで常時緊張状態でしょう!?今更よ!」

あつもりで行きゃー、いーっしょ!勢いでぶっ飛ばしていけー?」

「ウェーイ……!」




 はい、というわけで、一日ぶりに戻って来ました。

 そこ、デジャヴとか言わない。

 このフォーメーション、俺が魔力探知を手間取ると、それだけ行軍が遅れるから、ミスらないか気が気じゃないんだよなあ…。


 「日魅在進がしっかり成果を出さないと、シャン先生が追い出される」、っていう話だって、また濃厚になって来てるだろうし。


 何故って、一つ前の試合に出れてなくて、その理由が、「油断して盤外戦術で嵌められた」、なのだから。

 評価がプラスになる要素が無い。昨日の戦果の貯金で足りるか、怖くなってくる所。


 で、次の対戦相手に、“理事長室バックランク”の一人が居て、しかも彼女は、俺を追い出そうとする急先鋒。

 ここでタコ殴りにされると、


「ほらコイツ弱いじゃん!戦ったアタシが言うんだから文句無いでしょ!」


 となり、


「日魅在進が嫌いなみんなー!ここぞとばかりに責められる非を用意したよー!」


 となり、


「じゃ、除籍だ。出て行ってくれ。あとお前もだパンチャ・シャン」


 ってなるかもしれない。

 ………このコンボがマジで起こりかねないのが怖いよ!

 何せこちとら、「人から」!「魔法で」!「違法に」!「攻撃された」んですからね!しかも明胤学園の中で!これからどんなイチャモンが飛んでも、「あなた達なら、そう言うよなー」、とか思っちゃいそうなんだよ!

 乗研先輩にはカッコつけて「後悔が無いように」とか言ったけど、折角友達も出来たんだから、ここから居なくなりたくなんてないからな!?巻き添えのシャン先生にも申し訳なさ過ぎるし!


 あとアレな負け方したらカンナが怖い!

 ほら!今そこで、去年のクリスマスの夜みたいな顔してる!

 「記念日に誰かと食べるケーキは、とてもとても美味だと言っていましたけれど、本当ですか?」、ってじいちゃんのナポリタン食ってる時にもう、デザートを楽しみにしてた時の顔だよあれ!

 これで適当な事したら、どんな失望と罰が待っているか……。




「大丈夫!ススム君なら平気だよ!」

「実際、引くくらい鋭いし。あ、一応更衣室には近寄んなよ?」

「魔力を使って覗きとか出来ないししないから!?しかもああいう所の壁って、対策バッチリだろ!?」

「詠訵さん?リードはしっかり握っておくのよ?」

「先輩はまた、人を飼い犬みたいに……」

「はい!」

「ミヨちゃん?肯定しないで?」

 

 カンナといい、俺にペット属性を付けるのをやめて欲しい。

 どう見てもそういうキャラじゃないだろ。


(((ん?)))

(え?)

(((……?)))

(え?)

 

 え?


「あ、時間だね!」


 ミヨちゃんがゲートの開放に気付き、俺はカンナの「心底疑問」という顔をスルーする事にした。彼女の戯れに付き合ってたら、一生続ける事になるからだ。


「じゃ、やりますか!」

「ねえ、これ恥ずかしいのだけれど、何とかならない?教室でもやったでしょう?」

「諦めろ!」

「いーじゃん、別に」

「エモのエモー……」


 というわけで、円陣タイムです。


「“特別獅子奮迅クラス”!略して“トクシ”!ふぁいとー!」


 手を押し込んで、


「「「「「オー!」」」」」

「オー……!」


 狩狼さんはやっぱりズレたが、まあこれもこれで“らしい”から、良いと思う。







 って事で、奮い立って肩を怒らせながら、階段を上った先には、なんか懐かしい雰囲気の場所が用意されていた。


「学校……?」


 端末で指定されたルートで、開始地点に向かう間に、ざっと見た感想は、そんな感じだ。

 体育館的な物と、プールと、広いグラウンド。

 中央には長めの建物が二つあり、渡り廊下2本で繋がっている。

 その片方に入り、2階の一室、「2-B」という案内板が示す部屋へ。

 室内の様子を見ても、典型的な「教室」といった感じだ。

 机と椅子が並び、前後に黒板があり、隅には掃除用具入れ。

 壁には知らない学校名が書かれた、掃除当番表やら告知プリントやらが貼ってある。


「これって対称になるよう調整されてる筈だから、グラウンドとか体育館とかプールとか、全部あっちにももう一個あるんだよな……」


 俯瞰して見ると、ちょっと不思議な形になっている事だろう。

 

「お、来た来た」


 どうやら魔素が注入され始めたみたいだ。

 何せ感覚以外で見つけられない物質(?)、この広さを満たす程の量を調達するのに、どれだけのコアと技術と費用を要したのか、考えたくもない。


 魔力を体内で廻しながら、他のメンバーの位置を探る。


 えーと、まず六本木さんは……、たぶん上階の、俺より更に敵陣に近い気配がそうだな。うん、数秒で会える。

 ニークト先輩は、渡り廊下の向こう側、もう一つの建物の、隅っこの方に感じる、あれだろう。

 トロワ先輩は何処かな?移動しやすいグラウンドのど真ん中とか?

 狩狼さんにとって、このマップってどうなんだろうな。狙撃しやすい所とそうじゃない所が、極端に違うように見えるけど。


 端末がカウントを開始、

 5秒前…、

 3、

 2、

 1、


 試合開始のブザーと共に俺は窓ガラスをぶち破ってジェット噴射と共に壁を走り六本木さんが居ると思われる教室に外から突入!


「お待たせしました!カミザデリバリーです!」

「早!?怖!?」

「へへへ」

「何故そこでドヤるし……」


 ちょっと得意顔の俺の前で、六本木さんは左拳を下に伸ばし、右手で作った上下逆さのピースサインの先をくっ付けて、


「“親愛なる食卓にてシルバー・ニアー・ファミリアー”」


 そこに三角屋根の一軒家、そのミニチュアが現れる。

 見た目的には、西洋の民家っぽい感じ。


「うーし、とってけー」

「はーい」


 その壁が正面から開き、断面図みたいになっている部屋割りの中から、

 俺が使う微回復役、イヌのお兄さん、

 ニークト先輩用の強力回復手段、ライオンのお父さんと、発信機になるタヌキの妹ちゃん、

 トロワ先輩に渡す、壁張り係、ミーアキャットのお母さん、

 計4体の人形を受け取る。


 これは豆知識だが、この魔法を初めて見た時、「め、メルヘン……」と呟いたら、人を殺せる目つきで睨まれた。みんなは言葉に気を付けようね?


(((あなたの口が、軽過ぎるだけでしょう?)))

 

 知ってますしー。


「よし、じゃあ先輩達に届けて——」


 ぞわり、

 体感した事のない、足下をピヤピヤと流れて行く風。


「い、今のは……?」


 何処かで……、あ、一階だ。何か発動してる。

 今の時点で、一番周りを見通せるのは、たぶんトロワ先輩だ。聞いてみようか?


「とにかくあーし、ヨミチと合流するから」

「あ、うん、そうだな。何か分かったら……待って!」


 廊下に出ようとしていた六本木さんを止め、そっと外を見る。

 照明は晴天の昼間設定で焚かれている。

 校舎内の電気は点いていないが、それでも日は普通に内部へ射している。

 なのに、

 心なしか、

 雨の日のように、

 廊下が昏く、

 ジメついて見えて、

                

                               白い何かが、


「え?」

「何か…あれ、人影かな……?」


 廊下の奥。

 視力を強化しても、不思議と薄ぼんやりして見える。

 魔力も、掴み所が無い。

 俺は一度顔を引っ込め、                  白

 六本木さんと顔を合わせる。


「変、そう、ヘンだ…、気を付けた方がいいと思う」

「どんな感じ?」

「ほら、あそこの」


 彼女に指し示すべく、

 また廊下に身を乗り出して、


「どこ?」

「あれ?いや、確かにさっき、」


 姿も魔力の気配も消えて、


「!?」


 違う。

 居る。

 彼女を振り返った俺の視界内、教室の中に立っている!

 大きな白布で包まれた、人間らしき物体!

 

「変だ…!」


 魔力的な存在だと感覚が訴えるが、見るまでそこに居るって感じなかった!

 攻撃もせずにただそこに在るだけのそいつに、


「六本木さん!ここはヤバい!」


 俺は予感に従って二人で離れようとして、




 フロア全体が水没した。

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