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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第七章:「校内じゃ負け知らず」ってショボく聞こえるけど、この学園だとそうでもない

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150.ローテーション決定……あーもーどうにでもなれ!

「それでは握手を!勝敗がどのようであれ、互いの力を、能力・知力・努力・忍耐力を、敬い、讃え合いましょう!ええ、磨き合う若者達は、くも輝かしい!」


 ニークト先輩と、相手方、八志教室のデッカい男子生徒、「SSS級」と呼び声高い、らしい辺泥べてさんが、右手を出し合う。


 ロール宣言が終わり、これよりそれを踏まえた上での、作戦会議が始まるのだ。

 

 交換権を使おうか?でも正直、今の配置が安定過ぎて、変える意味無いよな~……

 とか考えていたら、


「言っとくけどさー!」


 問題の中の問題、

 現明胤最強が、置いてあった机の上にドンと乗って、


「アタシ達、ヨワッちいヤツら相手に、ロールを替えるなんて、セコいマネはするつもりないんでー!」


 そう言って俺達を、と言うか俺を指差して、

 

「アンタに見込みなんてナイって、ブッ潰して証明するから」


 ひっっっっくい声で、俺の処遇を腹まで響かせる。


「楽しみにしててね~?ローマンのブンザイー!」

「プロトちゃん?行くわヨ!」

「ハーイ、センパイ!分かってますって!」


 「じゃね?」、飛び降りた彼女は、スキップしながら退室した。


「……嵐のような奴だな」

「テメエが言うなよ」

「さっきも似たようなやり取りしたわね」

「うん?ススム君?」

「あ、うんごめん」


 肩貸してくれません?

 腰が抜けました。

 

(((流石ススムくん。“滑稽”の何たるかを、分かっていますね)))


 いやウケ狙いじゃなくて。




—————————————————————————————————————




「さあて、双方共に、どう来ますかなあ!」

「八志様の教室の実力を!是非とも拝見出来る事を!望んでおります!」

「光栄です」


 地下第一模擬戦闘用アリーナの特設観戦室。

 チャンピオン達の目が、血が、沸き立っている音がする。


 八志教室と、特別指導クラスのギャンバーゲーム。

 

 パラスケヴィ・エカトの底が見れるか。

 そして、カミザススムとはどれ程の投資価値が、或いは警戒の必要があるか。


 その二人を除いた他10人も、粒揃いであると分かっている。

 故に、この二つの教室がぶつかる時、互いに死力を尽くすだろうと予想され、ディーパー養成機関明胤学園のレベルが、ダンジョン大国丹本の潜行者のレベルが、この一戦で測れる、そういう目算もあった。


 彼らの最初の関心事は、当然「ん、出たぜ?」

 

「はい、今回の宣言編成オープンロールは、このようになりました」


 壱萬丈目の言葉と共に、部屋にあるモニターの一つに、それが映し出される。



 

             波瀬寤寐  P  六本木天辺


           雲日根睦九埜  N  日魅在進


             和邇八尋  B  狩狼六実


アナ・クラウディア・シエテ・シエラ  R  ニークト=悟迅・ルカイオス


          辺泥・リム・旭  Q  ジュリー・ド・トロワ


       パラスケヴィ・エカト  K  詠訵三四




「カミザススム!この漢字『カミザススム』で合っていますよね!?また彼が見れるとは!幸いですなあ!」

『見たところ、特別指導クラスは、一戦目と同じピックだね』

「反対に八志教室は、ここに来て新顔が多いな……。その名を聞かない生徒も混じっている」

「八志のバアさん?こいつはなんてフォーメーションだ?」

「我々の間で、“海シフト”、と名付けられたものです。モンスター相手こそ、その真価を発揮する並びですが——」


 八志はそこで、昨日・今日と二日通して、初めての笑顔を見せた。


「本気ですね。相手に手番を返す気が無い」


 この空間に居ながらにして、生徒の判断を楽しめる彼女を羨ましく思いながら、壱萬丈目は続く情報を読み上げる。


「地形は…えー……、“学校”、となっておりますね……」


 広い平地と横に大きい建造物、その両方を持つ設定である。

 

「この辺りですと……、確か、“地盤餐マザー・バザー”の最下層が、燃える校舎でしたなあ!そこからの生成で?」

「も、申し訳ございません。ガネッシュ様といえどもそこまで明かすわけには……」

「はっはっは!冗談ですぞ!いやいやお許しを!学者ですからな!聞けるところまで根掘り葉掘り聞くのが、私達の仕事ですからして!」

「は、ハハハハハ……」


 「嘘つけ、あわよくばこっちがポロっと漏らすのを期待してただろ」、などと気安く返せはしない。


「カミザススム……」

「ススム・カミザ……」

「赦されざる者……」

「外れモノが……」


 そして救教会二人に関して言えば、ご機嫌な顔で帰って貰うなど不可能だと見切った壱萬丈目は、ほどほどに相手をする事にした。


『八志の生徒は、枢衍の所と同じで、良いチームワークを見せてくれるよね。しかも君の場合、個人技の強さをより重視して、その結果を繋げるという順番だ。見てて面白い』

「人同士でも、モンスター相手でも、最後に自身を助けるのは、他ならぬ己自身、そう考えております故に」

「いいね?僕も常々思っているんだ。宇宙は万物の、万物に対する闘争で回っている。It has ever been!いつの世も、ね」

「護衛を伴う貴女が、それを仰いますか?」

「何だい、ルカイオス君?やりたくなっちゃったかな?」

「さてね。目的語を省かれてしまわれると、何をお望みかはかりかねますゆえ」

「言葉無くとも察するのが“紳士”だろう?」

「貴女が“紳士的な”事を仰るのなら、幾らでも察して差し上げますよ」


 片方は享楽として、

 もう一方は趣味と立場の両立として、

 発火点スレスレを攻めようとするこの二人についても、言っても聞かないので慣れるしかない。

 

 という対応では不正解。


 この場の漏れなく全員に慣れる、それ以外に彼の胃を生かす道が無い。


 これが正解。




「そ、それでは、試合開始までにはまだ時間が御座いますので、しばしの間ご歓談を……」


 「『歓談』だからな!?『開戦』と間違えるなよ!?」、

 言いたくても言えない念押しを秘めたまま、

 彼は揉み手の力を強めた。


 桑原くわばら、桑原、と。

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