第六章登場人物、用語解説 ※読み返し用、飛ばしても問題ありません
〈登場人物〉
吾妻漆:特異窟関連持株会社“アヅマホールディングス”の会長の長女にして、同取締役。更にチャンピオンの一人。荒っぽい口調で三つ揃え、ブランド品で固めた女性。商機となりそうな次世代に興味津々。かつて明胤学園において、乗研と同期だったようだ。
ガネッシュ・チャールハート:シンド出身のチャンピオンにして、フィールドワーカー。常にパンパンになったバックパックを持ち歩いている。優秀で物腰も低い一方で、学者としての強い矜持と好奇心を持つが故に、他者を振り落としがちであると言われる事も。実は姓をもう一つ持っているが、本人が公開を望んでいない。
メナロ=ジョーンズ・ルカイオス:ルカイオス公爵家現当主の次男にして、ニークトの兄。隙あらば紅茶と嫌味を挿し込む男。ニークトに鋭い視線を見せており…?
ジョーナ・Z・ヴァーク:クリスティア所属のチャンピオンである女性。争い事には目が無い様子。同行しているSSはどちらかと言えばお目付け役。
央華の役人:央華人民国の軍事関連部門から派遣された男。大きな声で相手を威圧する一方、観察眼は中々のもの。
キリルの駐丹大使:スーツ姿に眼鏡の神経質そうな壮年。現在祖国が周囲への圧を強めている事もあって、肩身が狭め。
救世教会の極東方面担当司祭:黒い頭巾とケープ、純白のトゥニカ、円が描かれた顔布と、背格好も一糸違わぬ修道服姿の男女。教化を妨げられてきた歴史から、五十妹に良い感情は抱いていない。
五十妹の祭官とその従者:雨坐大神宮から遣わされた巫女服姿の気弱な女性と、そのタブレット越しにやり取りをする男性。彼は五十妹のトップであり、丹本の国防の要でもある。結構な自由人で関係者を困らせているらしい。
壱萬丈目蔵之助:明胤学園の学園長。非ディーパーでありながら、チャンピオンやその目として送り込まれた人員の応対をせねばならず、胃に穴が開く5秒前。
八志兼:高等部主任。今回の校内大会の目玉であるパラスケヴィ・エカトが一時的に所属する、八志教室の担当教師。ランク9のディーパーであり、教育者としての能力も高く評価されている。
山彪教室一同:校内大会初戦で進達と対戦した6人。中心となるのは御三家の一つである三都葉の家系図に連なる男子生徒。正面火力も防御力も搦め手も揃ったバランスの良い編成であったが、漏魔症罹患者所属の問題児クラスに敗れた事で、その評判は一時的に地に墜ちる事になる。特に三都葉が漏魔症罹患者に完全敗北した事実は、重く受け止められたようだ。
枢衍霜浯:明胤学園所属、枢衍教室の担当教師。痩せ型で音楽室の肖像画のような髪型。職務に忠実だが、真面目過ぎて手段を選ばない場合がある。学園内政治に強いが、ハッタリとフィジカルで企みを尽く潰されてしまった。教室では、「五大元素思想」と「五星獣」による、合わせ技を重視した集団連携主義の教育方針を取っている。
棗五黄:枢衍教室の中心的存在。ヘアバンドで前髪を上げ、背まで伸びる後ろ髪を一つに纏め、黒の中に黄色のメッシュ、はっきりと前を向く目と鼻梁を持つ女子生徒。枢衍の学園内政治の手駒にされる事も多いが、本人は社会勉強と思って積極的に利用されている。違法スレスレな手段も含めて全力で勝ちに来る一方で、勝敗に強い執着があるようにも見えない。
亢宿勻:枢衍教室随一のアタッカー。過去にトロワ相手に完全敗北を喫した後、心を入れ替え同じ条件で勝利するまでに鍛え直した、高潔な精神の持ち主。ただ思考が直線的過ぎて、デリカシーや腹の探り合いへの耐性に欠け、トロワを傷つけたり仲間から情報を隠されたりもしていた。
朱雀大路三七三:中等部2年であり、枢衍教室に助っ人としてスカウトされた男子。サーモンピンクで尖った頭頂部、人懐っこい態度。しかしその本性は小物チンピラそのもの。これでも同教室の先輩方は「マジリスペクトしてる」、らしい。
介冬武黒:枢衍教室所属。引っ込み思案な女子生徒。ただし棗への忠誠心は人一倍。訅和との強制1v1リングマッチに巻き込まれ、試合中ずっと痛めつけ合っていた。
ジュリー・ド・トロワの後輩一同:中等部時代からトロワに憧れ、囲み、取り巻き、同じ教室で戦いたいと希望していた女子生徒達。残念ながら彼女達が高等部に上がると同時に、トロワは特別指導クラス行きにされてしまった。
〈用語〉
地盤餐:浅級ダンジョン。食虫植物のような見た目のモンスター、“ベジト”が出現する。「捕食もまた愛故に」、モンスターも潜行者側も敵を喰えば喰うほど強くなる。ジメジメした温室のような湿気、植物園のような緑、ゴツゴツした洞窟のような壁を持つ内装だが、最下層は脈絡なく燃える学校に変わるらしい。
トクシ:詠訵命名、特別指導クラスの別称。“特別獅子奮迅なクラス”の略らしい。クラスの約半数からは「ダサい」と不評な模様。
救世教会:略称“救教”、又は“救世教”。俗称は“ダンジョン教”。救世主の死から始まったダンジョンを、神からの啓示と捉える世界最大宗派。同時に世界史上でも目立っているトラブルメイカーとして知られる。クリスティアや陽州、キリル連邦等、世界の主要な国や地域で主教の地位を得ているが、極東圏での勢力伸長が進んでいない。
異端宥和:救世教の一派。これまで異端とされていた諸派を受け入れ、全体として一つに統合しようという運動。勢力内部ですら意思統一が図れず、現在は下火に。
五十妹:丹本中に点在する神宮1024社を管轄する宗教法人。国と強く連帯している一方、政教分離の形を取って民間団体の顔をしている。ただし、実態は丹本の防衛機構。丹本防衛隊のほとんどが、書面上五十妹神道信者として登録されている。
三都葉家:丹本御三家の一つ。回土時代末期に成り上がった商人から始まった一族。貴族や武家に見られる「一族伝来の物語」が無く、それを得る為に血筋の乗っ取り等も行った。チャンピオン誕生の野望に近いと思われたのだが…?
ギャンバーの共通ルール:基本は模擬戦と同一。特有のルールとして、
各ロール一人ずつのフルメンバー
ロールに応じて開始地点は決まっている
誰がどのロールなのかは先に公開され、その後に一箇所だけ入れ替えても良い
音質の悪い無線の使用が全員に許可されている
残ポイントは敵味方関係なく本人にしか見えない
脱落者は味方側のみに通知
全滅せずともKポジションが脱落した時点で敗北
といった物がある。
校内大会の意義:校内大会は単に戦闘経験を積む為だけにとどまらず、日頃の教育の成果発表の場でもある。外部の目も入るので、試合の内容は明胤学園全体の威信にも関わる。その結果によっては選択授業を担当する教師、所謂「教室持ち」が失脚し、入れ換わる事すら有り得る為、一種の権力闘争にもなりがち。教育の質の維持の為に、教師側にも本気で取り組ませるシステムではあるが、「やり過ぎ」という批判も少なくない。
黄燐獲麟仁倫騏驎:棗が使用する魔法。簡易詠唱時には掌から味方を治し敵を斬る角を生やす。完全詠唱時には幻獣の姿に変身し、味方と意識を繋げつつ彼らが居る場所まで瞬間移動する能力を持つ。味方を攻撃した敵に対しては、角の威力が底上げされる。
白金咆虎徹義鉄塔:万が使用する魔法。鉄針を体毛として、ドレスのような毛皮を持った虎に変じる魔法。簡易詠唱時にも共通する能力として、動きを止めていると呪い関連攻撃への耐性を獲得する。
萌緑黄色満面東竜:亢宿が使用する魔法。簡易詠唱で種を撃ち出し、或いは生成した植物の根を操る。完全詠唱時には種から一斉に植物を急生長させる。索敵や分断、範囲攻撃として優秀。木の根は時に、アスファルトすら割り砕く。
熒惑にて経国成る:朱雀大路が使用する魔法。視界に入れると任意の幻覚を見せる炎を燃え広がらせる。条件を満たせば、より深い催眠や精神支配が可能。相手が心から望む、或いは恐れる夢に閉じ込める事まで出来る。
完全回蛇永遠雌雄:介冬が使用する魔法。冷気によって氷の鎧を見に纏い、敵に触れれば水分を凍らせ内側から破壊する。完全詠唱時には、付近一帯を氷漬けにする事まで出来るのだが、その隙を与える訅和では無かった。
徳が治むる王政を:枢衍教室最後の一人が使用する魔法。能力の範囲内では、万象を五大元素思想に基づいて運行させる事が出来る。
罪業と化ける財宝:乗研が使用する魔法。相手の望む物を映す黄金を生み出す。今回は朱雀大路の魔法が合わさり、より広範且つ強力になっているようだ。黄金板は攻撃を受けると、一定時間内に食らった衝撃を引き受け自壊し、反対側に通さないという機能も持つ為、鎧や打撃武器としても優秀。完全詠唱時には、手足を異形のそれに変じさせる。
堅き中に抱く本懐:トロワが使用する魔法。簡易詠唱時には、剣の先端に竜胆色を仕込み、そこで複数回同一の軌道で攻撃された箇所に、追加の破壊を起こす。完全詠唱時には帯状の剣身が生み出され、射程と攻撃パターンが大幅に上乗せされる。
目出度し目出度し:狩狼の家に伝わる“猟犬魔法”。高速貫通弾グレイハウンド、追尾操作弾ブラッドハウンド、焼夷拡散弾マスティフを使い分ける事で、近・中・遠に隙の無い能力となっている。
親愛なる食卓にて:六本木が使用する魔法。玩具の家と人形を生み出す。人形は通信機として利用可能な上、それぞれに固有の機能を持つ。
お父さんライオン:所持者の傷を治し解呪・耐呪も授ける。
お母さんミーアキャット:耐呪にもなる魔力の盾を生み出す。
画家のおばあちゃんアルパカ:遠視を中心とした五感の強化。
大学生のお兄ちゃんイヌ:所持者の傷を治す。
いたずらっ子の妹タヌキ:敵味方問わず注目を集めるビーコン機能。
赤ちゃんパンダ:所持者が致命的なダメージを受けると、他の人形を犠牲に無効化する。壊れる順番は、妹→祖父→祖母→父→母→兄。
簡易詠唱時には、六本木本人がタヌキ人形のビーコン機能を使う形になる。
五大元素思想:“木”は“火”を、“火”は“土”を、“土”は“金”を、“金”は“水”を生み出し、そしてまた“水”が“木”をといったように、物質は“相生”と呼ばれる関係性の中を循環している。それらが互いに起こす反応によって、この世の全ての現象は説明できる、という物。これを元に“五星獣”という概念が生み出された。




