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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第六章:身内ノリの腕試し大会、ってだけじゃなかったりする

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147.やっていい事とダメな事がある part3

「しかし先生、これで良かったんですか?彼らを厳罰に処すべきでは?」

「バーカ言ってんじゃねえよ」

「何ですって?あなた、こんな卑劣なやり方を繰り返させる気?」

「こいつらがイヤに卑劣で陰湿な性格してるからこそ、この方が良いって言ってんだ」


 決定に異を唱えているのはトロワくらいで、発言した乗研を含め、他のメンバーは納得しているようだった。


「こいつらと全面戦争したら、それこそ何やって来るか分かんねえぜ?勝つとしても、いや、勝った後も、気が抜けるモンじゃねえ」

「そういうのは本人が不在の際に言う事じゃないのかね?」

「それに、そこのバカがサボりにサボった上で、好きな生徒掴み取りとかやったせいで、恨みを買ったのもその通りだろうが」

「そういうのは本人が居ねえ所で言えよな?」

「ノリド?サボってたのはあんたもじゃね?」

「うるせえな、さっきからよ。俺は教えてやってるんだろうが。(しゅく)に聞いてろよ」

 

 掟破りは、シャンの側から始まった、と言えなくもない。


「けれど、この学園に居場所を残すなんて…!」

「俺がここから中々追い出されねえのと同じように、そいつらをホイホイ投げ出せないだろうが。割かし優秀なディーパーが、国の恨み共々外に出ちまったら、反政府勢力に喜々として引き抜かれんぞ?」

「なんなら自分達で新しく作るだろう。枢衍先生のバイタリティならやり兼ねない」

「棗?お前はどっちの味方だ?」

「すいませんつい」


 どう転んでも、彼ら枢衍教室側が、特別指導クラスへ危害を加える可能性が出てしまう。


「で、逆に言えば、こいつらだって、逃げたくとも逃げれねえんだ。強いディーパーってのは、制御下に居なきゃ脅威でしかねえ。テロ組織と同じような扱いをされ続ける、平穏なんてえ生活が待っている」


 ここは自由な牢獄だ。

 出るには看守の、そして国の許可が要る。

 

「だから、こいつらはこのまま、閉じ込めとくんだ。んで、今回の実行犯の朱雀大路と、主犯の枢衍は、この学園内でのヒエラルキーに、明確な瑕疵かしを負う。『やらかした奴等』と烙印を押され、それを知らない人間が居る場所へ、逃げる事も出来ない」


 枢衍教室からの反撃を防ぎ、

 特別指導クラスの側は、シャン以外の人間が、責任を問われない。


「ここいらが落としどころだ。まあ、日魅在の奴が起きたら、同意を得る必要があるがな」

「朱雀大路が虐められないように、ケアしておけよ?」


 ニークトが枢衍に対して付け足す。


「そいつは一度の失敗で、孤立しかねないぞ!性格的に、嫌われているだろうからな!」


「お前が言うなよな」

「テメエが言うな」

「先輩が言わないでください~」

「あなたが言わないで?」

「あんたが言うな」

「ウケる~…」

「お前が言うな」


「他の奴等はいつもの事だとしてドヤ顔キリン女ァ!どさくさに紛れてるんじゃあないぞ!」

「バレたか」


「ま、そういう流れで行くとする」


 「が」、シャンは再び枢衍と肩を組み、


「俺の生徒に二度ときたねえ手を出すな。やるにしても、お前の生徒に手を汚させてんじゃねえ」


 そう低く言った後、


「オラ、もう一度ミツに謝って来い」


 そう言って背を力いっぱいに叩いた。

 枢衍は咳き込んだものの、何も言わずに二人の教え子を伴い、退室しようとして、


「ねえねえ?朱雀大路、くん?」


 落ち着きを取り戻し始めた彼を、

 “アニメ声”と評されるように媚び色で、

 けれど鼻につかず、聞き心地の良い旋律が呼ぶ。

 

「私の魔法ね?解呪も出来るし、触れた物と融合して、直したり、作り変えたり、できるんだよね」


 釣られた彼が振り向くと、

 膝枕に少年の頭を載せた、秀美しゅうびを持つ少女が笑っていて。


「でね?これまで自分でしかやった事ないけど、模擬戦形式で、傷ついた端から修復する、っていうのを何度も反復する、そういう練習方法もあるんだ~。すっごく痛いんだけど、良い訓練になるんだよ?」


「……そ、そうすか………」


 彼女は、目蓋の隙間を、


「もし、もしね?無いと思うんだけど、もし君が」


 益々細めて、


「ルール違反で、またススム君を傷つけたり、彼の物を盗ったりしたら——」

 


——私、君と二人っきりで、

——“訓練”、したくなっちゃうかもね?



 内容の深読みを拒みさえすれば、

 デートに誘われたのかと、心が躍るような、空気と韻律で、


 彼女は彼に、呪いを掛けた。


「あ」

「それだけ♪じゃあね?」

「あ」


 別れを告げられ、

 彼の足はこれ幸いと、

 早回しの如く、シャカシャカとそこから離れて行った。


「もうヤダ……」


 教師や先輩の前であるのもはばからず、


「もうヤダあのクラス……」


 彼は半べそでこぼしてしまう。


「もうヤダあのカップル………」


 「あの感じは、まだ付き合う前の、一番面白い時期じゃないか?」、

 と思った棗は、あまり関係が無い上にどっちでも良い事なので、

 特に何も言わなかった。

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