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全滅した部隊の戦闘記録
巌のような腕を振るわれ、蛇のような大顎が噛み砕く。
よく訓練された自慢の兵士が、たったそれだけで死んでいく。
炙り燃やしてもどこ吹く風。
削岩しても巻き戻される。
毒素も呪いも浸蝕出来ず、
こちとら強めにドつかれりゃ終わり。
成程、これが“門番”。
これが深級のD型か。
格が違う。
これまで戦ってきたモンスター、ここに来るまで倒して来たトカゲ共。
それとは明らかに、様子が違う。
読み違えた、のだろう。
見通しが、ゲロ甘だった、それだけだ。
凡百のダンジョンなら素通り出来る戦力だが、
深級はそんな事お構いなしって態度だ。
魔法なんて奇跡が使えても、死ぬ時が劇的とは限らない。
メイドが雇い主を勇気づけているが、死の覚悟を説いた方が建設的だ。
「美人薄命」とか言っとけば、少しは慰めになってくれるだろうか。
蛇がこちらを向く。
地獄の一丁目が見えて来た。
産声上げてから40年と少し、続いた旅路の果てがここ。
随分草臥れちまったが、
まあこれで最後だ。
あともうひと踏ん張り。