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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第六章:身内ノリの腕試し大会、ってだけじゃなかったりする

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123.マジで言ってる? part1

「猿め、軽過ぎて、どこぞに吹き飛んだか?」


 毒づく彼は、探しているのだろう。

 死体を確認するまで、勝利を確定としない。

 能力の高さから来る慢心はあっても、敵への攻撃の徹底に怠りはない。それを表していた。


「仕方ない。奴は後だ」

 

 見つからないとなったら、優先順位の高いタスクへ、意識を切り替える判断力もある。


「トロワを囲んで撃滅し、Bを警戒しながら格下狩りを叩き、前衛の居ない敵陣を破る。よし、問題無く遂行可能だ」


 それをやられたら、確かに辛いだろう。

 それが彼らの最善手だ。

 

「格下狩りが着くまでに急がねば」煙を裂いて詰め、抉るような拳撃を打ってみる。「何!?」拳目掛けて微小で紅白の魔法弾が殺到し、俺は魔力噴射で跳び離れて逃れる。

 やっぱり、自動的に防御された。魔力を使い果たさない間は、この三本角は顕現し続け、こちらの攻撃を撃ち落とす盾にもなる。


 聞いてた通りだけど、

 しかし想像とは違った。


「其の方、まだ生きていたか!ならば!」

「あー、えーと、一つだけ聞きたいんですけど」


 俺は「待った」の形で、右掌を前に出す。


「なんだ?この期に及んで情けを乞うと?否、時間稼ぎか?そんなもの——」

「先輩は、『誇り』とか、通用する方ですか?」

「——え、何?」


 威厳の無い声がちょっと漏れてますよ?

 言葉足らずだったかな。


「つまり、こっちの隠し札一つ開示したら、そっちも質問に答えてくれますか?」

「……『隠し札』とは?」


 俺は胸に吊るした、ベージュに光るイヌの人形を示して、


「これ、俺達のPポジの能力です。細かい傷を治してくれます」

「……成程、合点がいった。粒子を細分化し過ぎたか。しかし、其奴そやつなかなかやるな。遠隔で我が能力を上回る程の、治療スピードを誇るとは」

「先輩の能力って、今見えてる、微細な攻撃魔法弾の半自律セミオート制御、それで合ってます?」

「如何にも。ここに顕れし行疫神ぎょうやくじんも、攻撃魔法が群れを成す事で、像を結んでおる」

「へー……」

「そして、私が何故これを明かしたかと言えば」


 牛頭の大きさが、一回り小さくなった。

 だが逆に、その気配が、密度が、大きくなった。


「其の方を容易に殺し切る方法が、たった今、其の方のお蔭で、分かったからだ」


 「私から情報を引き出そうとして、愚かにも策に溺れたな?」、言いながら器用に魔法を組み替える。

 彼は今、攻撃魔法一発あたりの、魔力量を増大させた。

 全体としての量は変わらず、だから数は少なくなったが、一つ当たるだけで負けだろう。


「其の方の認識が深まり、我が魔法の効きが、より強まったぞ?」


 彼の攻撃魔法は、浸食効果がある。

 敵に着弾すると、内側に侵入し、敵の魔力を吸って増大していくのだ。

 俺の魔力侵入と違い、相手が体内に残している魔力量によって、威力がはっきり決まるので、追加ダメージポイントが、明確に決められている。そして大抵、相手の魔力を吸い尽くしたと判定される頃には、ポイントの方が先に無くなっている。


 一撃必殺の小型ミサイル弾、それが彼の攻撃魔法。


 ローマンの俺は、大した魔力量を持たず、だから当たっても、思いのほか追加ポイントが微妙だった。しかも回復能力持ちが支援していて、ポイントを押し戻した。そう考えているのだと思う。

 そこで今度は、少ない魔力量でも大ダメージになるまで攻撃力を上げ、治療の余地など残さず汚染し尽くす。という対策に出たのだろう。

 何をすべきか分かりやすくなって、彼は喜んでいるようだった。


「泣きめ!」


 三本角の中心から、再びの粒子エネルギー光線!

 それを構成する攻撃魔法は、付近に撒かれてから一斉に俺を殺しに来る!

 光線に当たれば当然即死。避けたら避けたで、重汚染大気の中。


「今度ばかりは討ち取った!」


 凱歌のように宣言する彼には、

 申し訳ないのだが、


「ぬんっ!?」

 

 感覚的に分かる筈だ。

 彼を守る牛頭、その中で小さな何かが翔けている。

 攻撃魔法達はそれを浸食し撃ち落とそうとして、その並びを流動させて、


「どうも」「な!?」


 開いた隙間に身を捩じ入れて回転刃付きナイフを刺す!

 

「ぬおぉぉぉ!!」

 

 やる。

 意識の外から行ったと思ったけど、腕で防がれた。

 だけど、


「こいつを病み尽かせろおおおお!」


 それは、やっちゃあ、いけないでしょう?


 彼は俺に向かって、魔力弾を結集させ、包囲攻撃を仕掛けた。

 俺はその中で、一番薄い場所を見つけ、突っ込む。


「馬鹿め!貴様の体表に触れた時点で——」


 俺は自分の目前に、直進する魔力の膜を生み出した。

 彼の魔法弾はその魔力を吸って大きくなり、

 

 しかしその切先が、若干ズレてしまっていた。


「あえ?」


 敢え無く敗れる、絶対封殺陣。

 彼の魔法が、俺の魔力を利用して生長するなら、魔力の細かい配置によって、エネルギーの流れを操作できる。

 半分は自動的な魔力制御、それを相手にしているからこその解答。


 俺は広くなった穴へと水泳選手みたいに飛び込んで前転、衝撃を殺しながら立ったと同時に相手に向かって直進する、というフェイントを入れてすれ違い、左の逆手で持った回転刃ナイフを頸椎に叩き刺した。

 攻撃魔法一個一個を大きくし、攻めも守りも大雑把にした上で、身体の前にほとんど回してしまっていた彼は、俺からの致命打を止める札を残していなかった。


 魔法弾が俺を追って来るまでの1、2秒の間に右手でナイフの柄を殴って刃を進ませると、彼の体が一度大きく震えたのでそこで離れる。

 うつ伏せで倒れた、その首輪のライトは、たぶん赤点滅。

 身動きが取れないのだろう。

 俺はトロワ先輩に助太刀しようと傾斜の先を見上げ、そこで高音が3回鳴った。


 端末を確認すると、試合終了と書いてあった。


 相手チームの全ロールがポイントゼロ。

 こっちでポイントが減ってるのは、回復手段を持たないトロワ先輩くらい。


「か、」


 どうやら、


「勝っっったー………!」


 安心していいみたいだった。

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