70.初めまして、よろしくね(半ギレ) part3
「つっても、形になるわけ?こんなんで?マジムリゲ。ワンチャンもナシ」
「じゃあ、試しにロールを割り振ってみませんか?今ここには、八守君を除いて7人なので、どこかが被っちゃうんですけど、参考にはなると思うんです」
「ああ、それは………」
「……何?どうしてこっちを見るの?」
「発言しても……」
「ああもう良いわよ。好きにしなさい。単位が欲しいのは私も同じだから、今は詠訵さんのやり方に合わせてあげる」
ありがたき幸せ。
「僕は詠訵の提案に賛成です。これからこのメンバーでどうやって戦っていくのか、それを現実的なラインで見る事ができると思います。先生に頼んで申請して貰えば、それでダンジョンに行けたりするんですよね?明日にでも、足を運んでみるのもいいかもしれません」
最悪模擬戦用アリーナの一つを借りて、互いの実力を確認するのもアリだ。
「で、手始めにですが、例えば全体の司令塔、Kポジション。これは、今場を回してる詠訵にやって貰えばいいと思うんですが、どうでしょう?」
「え、私!?」
「どーかん。かんぜんどーい。良い事言うねえ、彼くん」
「こもりちゃん!!!」
「うわあびっくりしたあ。冗談だって」
訅和さんの扱い方が、分かって来た。まともにやり合っていたら、心臓が幾つあっても足りない。ここは受け流すのだ。
「見世物女がトップだと?認められるか!」
「そうッス!そんなの……なんかとにかくダメッス!」
まあそこからイチャモンが出るのは分かってました。狙い通り。
「パーティーを組むかどうか」から、「パーティーを組む時どのポジションになるか」、論点をズラさせて貰った。この場では絶対に一匹、釣られる奴が居るから、移行は簡単に済んでしまったよ。
偉大なるニークト先輩のお蔭で、自然な流れで、話し合いのテーブルに持ち込めた。
それでは先輩、分かり切った対案をどうぞ。
「ニークト先輩は、どなたを推薦するんですか?」
「それは——」
「それは勿論——」
「頭空っぽ女だ」「ニークト様自身ッス!」
「は?」 「え?」
ふっつー、に、「当たり前だろ」という顔で、六本木さんを指すニークト。
指名された本人と、ニークトを推薦する気バリバリだった八守君は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。ってか、全員が驚いてる。
俺も多分アホヅラだ。
(((ススムくん。佳い顔をしていますね)))
俺も確定でアホヅラだ。
「なんだお前ら?能力と経験から言って、この場にこいつ以上の適役がいるか?ああ、見世物女にベタベタしてるストーカー女か?その女は魔法の特性的に悪くはないが、しかしオツムが足りてないだろ」
「何をぅ?」
「いや、何て言うか……。てっきり、誰かの下には付かない主義かと……」
「こればかりはローマン君に同意するわ。あなたなら絶対に、自分自身を推すと思っていたのだけれど」
「マジウケるー……」
「オレサマはKには向かん。今後一切、就く気も無い。NかR、100歩譲ってQのどれかだ。が、あのモジャ頭がどこかに行ってしまった以上、オレサマをRに置くのが最適だ。少しは頭を使え低脳共」
そ、そうなんだ……。
ま、まあ、ニークト先輩がそれでいいなら、いいんだけど。
「じゃあ、えっと、六本木さん?Kポジション、やってみる?」
詠訵がなんとか、議題を戻した。
「…は?え?は、ハアッ!?ハア~ッ!?」
すっごい狼狽えてる。今日一番パニクってるぞこの人。
「な、なんであーしなんだよ豚ァ!?」
「誰が『豚』だ誰が!ここに居るヤツの中で、一番お前がマシなんだ!お前の性格最悪で小癪な悪知恵には、目を見張る物があるだろうが!空っぽでも詰め込めば幾分か有用にはなる!」
「結局消去法かよ!知らねーし!あーしはKなんてめんどいロール、ゴメンだから!ってかお前!あーしと戦った事無いだろ!」
「模擬戦に参加した事はあるだろうが!映像記録だって残ってるぞ!そんな基本的な事まで忘れたかバカ女!」
「まあまあまあまあ……」
「えっと!ごめんなさい!確認なんだけど、六本木さんは、どうしてもやりたくないんですか?」
「………つーか、やりたくなる理由って、ある?」
「えっと、こもりちゃんは?」
「私はヨミっちゃん推しだから」
「じゃあ……他に無ければ、私がKに入るって事で、良いですか?ニークト先輩?」
「…チッ、役立たず共め。致し方あるまい」
「許してやるッス!」
「人を思い通りに動くモノみてーに見下しやがって。超MMんだけど…!」
よ、詠訵ごめん。
詠訵VSニークト先輩なら、片方大人だから穏やかに進むと思ったんだけど、対立軸が予想外の方向に飛んでいっちゃった。
(((数刻前の、策士気取りの顔、お笑い種でしたよ?)))
(むぐぐぐぐぐ………)




