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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第四章:途方もない先を目指しての一歩は、やたらと重いし火傷しがち

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70.初めまして、よろしくね(半ギレ) part2

「で、どーすんの、これ?これでやってくって、リアルガチ?ムリじゃね?フツーに」


 六本木さんが、誰もが思ってるけど、「言うのはやめとくか」となっていた事を、ズバズバ口に出してしまう。


「そ、そんな事ないと思いますよ?これからお互いを知って、一緒に潜行したりすれば、息を合わせたりとか出来ますって。やってみたら、意外とすんなりだったりしますよ!」

「そう?ここに居る全員に、協調性という物が、欠如しているように見えるけれど」

「今は互いの信頼がゼロなんだから、当然だと思います。でも、まずはやってみましょう?それで、具体的にどこがどう困るのかとか、分かりますし。逆にそれぞれ、何が得意なのか、そういう良い所だって、これから一杯見えてきますよ」

「ヨミっちゃんにさんせー。難しそうだからやらない、って、ダサくない?」

「ぼ、僕も詠訵には賛成し」「あなた?」


 そこでトロワ先輩が、信じられない物を相手にしたような、呆れた半目で俺を見た。


「弱い人がしゃべらないでくれる?時間の無駄だから」


 ……はい、ごめんなさい。

 俺はここでもこういう扱いですか。

 

「トロワ先輩それは——」

「ハッハッハッ!弱い奴等同士が『弱い』『弱い』とピーチク鳴き合うのは、随分滑稽だな!」

「何ですって?」

「このオレサマの前には、お前達全員、等しく下民だ!無きに等しい差を声高に叫ぶより、オレサマを讃えた方が、遥かに有意義で真理に近い!」

「詠訵さん?自分が最弱に足元を掬われた事実すら忘れた、格下狩りしか出来ない裸の王様が、こういう事を言うのよ?『協調』なんて、本当に可能だと思う?」

「ニークト先輩~……。火種を撒かないでください…」

「先輩、俺をかばってくれたのはありがたいんですが、もうちょっとこちらに歩調を合わせて頂けると」

「誰もお前を庇ってなどいない!」


 でも本当にありがとうございました。先輩のその傲岸不遜が、清涼剤になりつつあります。まあ喧嘩のバーゲンセールはやめて欲しいんですが。


「さっきから団結がどうだとか協調がこうだとか、ほざいているようだがな!オレサマが一発で解決する最高の教えを授けてやる!」


 うーん、あんま期待できないけど、一応聞こうか。


「正式にオレサマの下に付け!全員でオレサマを崇め奉れば、オレサマの下で立派な仲間となる!どうだ簡単だろう!」

「イヨッ!ニークト様天才ッス!“作詞”ッス!」

「イントネーション的に間違ってるぞ八守ィ!“策士”だ!」

「それッス!断然エースッス!」


 ドーン!

 腕を組みながらそのデカ腹を突き出す様に、なんかそういう擬音が聞こえてしまった。


 せんぱーい…。考えて物を言ってください。

 それが出来る面子メンツだったら、そもそも協調性は振り切れてます…。


「冗談キツいぜ。俺は降りる。やってらんねえ」


 あ、乗研さんが痺れを切らし始めた。

 パッと見の印象通り、一番早く辛抱たまらなくなったか。


「『降りる』?少なくとも貴方には、その自由は無い筈だけれど」

「知らねえな。俺がここを追い出されようと、俺の勝手だ」

「転校するでもなく、本気で退学処分を受ける気?強力な潜行者であるのに、国家への反抗的な態度を見せる要注意人物として、公安あたりにマークされるかもしれないわね?あなたが癇癪を起して暴れれば、速やかに捕縛されるの。何らかの職についても、周囲からは爆弾みたいな扱いを受ける。実質的な自由なんて無くなるけれど、そういう生活がお望みなら、私は止めないわ」

「俺なんかに張りつく暇人が居るかよ。ビビられてるのも今と変わらねえ。くだらねえな。アバヨ。あの先公には、俺は『気分が悪いから早退した』って言っとけ」

「あ、ちょっと!乗研先輩!」


 今日は誰一人、詠訵の静止を聞いてくれない。

 背を向けながら、手だけ振った彼は、それ以上は黙って出て行ってしまった。


「トロワ先輩も、あまりお好みには合わないタイプの相手なのは分かりますけど、逆撫でするような事言わないようにして頂けると、助かります」

「事実を言ったまでね。彼が勝手に腹を立てただけでしょう?」

「正しい事でも、言わない方が良い事だってあります。恐縮なんですけど、今はみんなで、ゆっくりと分かり合う事から始めませんか?どんなに辛抱強い人でも、何でもかんでも口に出されちゃったら、どうしても好い気はしないと思います。

 それに、今まで触れてこなかった人から意見を聞くのも、新しい角度の進歩になると思うんです。トロワ先輩にとっても、悪い事だけじゃない筈です」

「考えておくわ」

「お願いします…。乗研先輩が行っちゃったのは仕方ないので、今残ってるみんなで、暫定として話を進めましょう。バラバラな状態よりも、乗研先輩の事を、力を合わせて引き戻しやすくなります」


 う、うーむ。

 所属したパーティーの数が、恐らく圧倒的に最多な詠訵が、色々と強すぎる。というか逆に、集団行動に向いてない人ばっかりなのか。詠訵と訅和さん以外、誰が問題児枠でも納得出来てしまう。


 ………カンナ、その目をやめてくれ。あーあー、言いたい事は分かってる。鏡は要らん。あと机の上で仰向けにゴロゴロするのやめろ。ツッコミどころでしかないし、行儀悪いし、なんか可愛く見えてしまうから、俺は今大変困ってる。

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