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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第四章:途方もない先を目指しての一歩は、やたらと重いし火傷しがち

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68.顔合わせ、したくねえー……… part1

 5月7日。

 ゴールデンウィーク明け。


 休みの間、何度も“梳削墓トゥスコーム・カタコーム”に潜って、単独でスケルトン共を相手にしていた。

 何をどう改善したらいいのか分からない以上、次のコラボの時まで、出来る事だけでもガムシャラにやるしかない、と思った結果である。

 その甲斐あって、このダンジョンには慣れた。

 けど、俺の中の変えなければいけない何かは、そのままな気もしてしまう。

 じゃあどうすればいいのか?それを探してる最中だって言ってんだろ。


 という暗中模索の連休が終わったので、

 今日から、午後授業が選択式になる。


 とは言っても、一番優先されるのが潜行やダンジョン関連なこの学園で、科目ごとに分けてしまうと、人気に大きな偏りが生まれるのが、想像に難くない。

 

 じゃ、どうするのかと言えば、大学のやり方に近い感じで、教師それぞれが教室を持ち、それを選択する方式となる。

 彼らは、潜行やダンジョンに関するエキスパート、という前提の上に、得意とする学問分野を積み重ねている。

 ダンジョンに対するアプローチも千差万別。その中で、自身の進路に最も役立つ知見を持つ人は誰か、それを判断し、選択する。そういうコンセプトだ。


 だから俺も、編入前から、何なら合格する前から、教師陣の情報を、可能な限り物色して、「誰にしようかな~」とかニマニマしてたんだ。


 だが、


 ………えー、もうパターン化してるから、分かってるだろうけど、


 目論見が外れました!

 “特別指導クラス”、縮めて“特指”に、強制入室である。


 一 択 って!!!


 担任にも掛け合ってみたが、けんもほろろに追い返されました。

 何でも、問題児が集められる、矯正用のクラスであるとか。


 いやイマドキそんなシステムがあるか!?

 どんな大手企業も実は持ってると言う、都市伝説上の地獄、「追い出し部屋」かよ!?実在したとはなあ!?

 「実力主義」が極まり過ぎだろ!?

 それに俺この前、まあズル有りとは言え、ランク7に勝ってるんだけど!?一定の強さを示せたと思うし、あれから騒動も起こしてないし、「問題児」扱いの要素が………ローマンしか思いつかないです。じゃあそれだ。ふざけ。

 

 


「ハァァァー………」


 もしかしたら、俺一人だけ、隔離されてるのかもしれない。その可能性に至った時、気分は更なるドン底へ。

 せめて道連れがいますように、でも出来るだけ接しやすい人でありますようにと、南西部、第15号棟を訪れながら祈る。

 なんか建物の外見も、古くも新しくもなく、へいせい初期くらいに建てられたみたいな、中途半端な印象だ。歴史も新しさもない、パッとしない感じ。


 やあバッタくん。まだまだ元気だね。

 きみ、俺と一緒に来ないかい?

 心細くて仕方ないよ。

 とか馬鹿言ってたら、


「あ」「えっ」


 指定された第一教室の扉の前で、詠訵とバッタリ出くわしてしまった。

 なんで?


「よ、よう……」

「う、うん……」


 き、気まずい………。

 あれからWIRE上でのやり取りくらいで、まともに話してない。

 教室は同じだから、顔は合わせるのだが、話しかけたりは出来なかった。

 クラスの連中は、「やっぱり見捨てられたのか」と、ほくそ笑んでいるようだったが。


「「あの」」

「「あ、どうぞ」」


 べ、ベター…な事をやってしまった。

 それはともかく、ここは俺から、


「あのさ、詠訵。本当にごめんな。俺、色々、合わせられるよう、頑張るから」

「こ、こちらこそ、ちょっと、私個人の問題で、変な感じにしちゃって……」


 ………

 沈黙。


「そ、そう言えば、詠訵は、何でここに?“特指”以外に、ここの棟使ってるクラスがあったのか?だったらこの教室は——」

「え、あ、違うよ。私、何故か特指になっちゃって」

「え?詠訵が?」


 おかしいな。

 俺はともかく、詠訵が問題児扱いされる理由が分からない。

 なんかの手違いか?


「カミザ君も、特指?」

「たぶん、そうらしいけど…」

「良かったあ…。こもりちゃんも居るらしいし、そこにカミザ君も一緒なら、怖くないね!」


 詠訵さあん?そういうのですよお?そういうのが俺を惑わせるんです。

 大丈夫、分かってる。

 オレ、ヨミチ、トモダチ、ナカマ。

 

「ま、まあ、改めて、よろしくな…!」

「うん!ウフフフ……」

「あははは……」

「お前らそこで何をむつみ合ってるんだ」

「「うわあっ!?」」

 

 びっくりした!

 いつの間にか、見覚えしかない()()()()の2年生が、真横に居た。


「うっわ」

「なんだその顔は!オレサマがうんざりするのは当然だが、お前がそうなるのはおかしいだろ!オレサマの顔を見れた事に、むしろ無上の喜びを抱け!」

「ワースゴーイ」

「心が籠ってなあい!」


 マジか。

 ニークトだ。

 こいつも問題児扱いされたのか。


「ああ…」

「おい、どうして今、納得したような顔をした?不思議に思うべきだろう?『どうして貴方程の御方が特指に?』と」

「心当たりしかないですが?この一ヶ月、俺以上に悪評が流れて来たの、先輩くらいですよ?」

「オレサマは当然の振る舞いをしているだけだ!何故目の敵にされるか理解に苦しむ!」

「そういうところじゃないですかね」


 どうやら昨年度までは、普通に選択クラスの一つに居たと言う。嫌われてたのは変わらないらしいが。

 じゃあその時の素行が酷過ぎたんじゃない?


 食堂を占拠して大量の注文をテーブルに並べてるとか、上級生も下級生も問わずに怒鳴り散らかすとか、授業の実習に非協力的で、頻繫にトラブルを起こして決闘騒ぎに発展し、しかも格下狩りしかやらないとか、耳に入るだけでこれである。


 俺が言えた事じゃないのかもしれないが、もう少し身の振り方を改善した方が……


 と、その背中、いや腹かな?その後ろから、ひょいと小さな顔が出た。

 確か、そう、八守君だ。


「や、やあ、こんにちは」

「………」


 そっぽを向かれてしまった。互いに第一印象最悪だし、そりゃそうとしか言えない。


「き、君の親分とは険悪だけど「おい『親分』とはオレサマの事か?」出来れば仲良くしたいなー、なんて。ほら、俺と一緒に、三高から『高身長』を除外する運動、“非高民権運動”に参加しないか?」

「自分の理想はウワゼイがメチャクチャにあって、大柄で頼りになる人ッス!ムリな相談ッスね!」


 うっ、深入りしたら宗教的対立になりかねない。引き下がるか。


「だいたいお前がニークト様に恥をかかせたの、忘れてないッス!許しがたいッス!“バンジーにアンタイ”ッス!」

「“万死に値”だ八守」

「それッス!身の程を知れッス!」


 はい、そうですよね。

 敵認定ですよね。

 と言うか俺も、どうして僅かでも行けると思ったんだ。

 こうなるのは火を見るよりも明らかだし、仲良くする理由も無いし、そうしたいわけでもないだろうに。どうにも最近、俺自身が俺を分かってない。


「あれあれぇ?皆さんお揃いでぇ?」


 と、そこに新たなる参戦者が到着した。


「あ、こもりちゃん!」

「やーやーヨミっちゃん、お待たー!おねーさんが来たからにはもう安心…おやぁ?君は……」

「は、初めまして…」


 眼鏡に二つ結びのおさげという、委員長タイプな見た目から繰り出される、間延びした言動。

 多分、詠訵が言っていた「親友」こと、訅和どうわ交里こもりさんだろう。

 彼女は詠訵に抱き付いた後に、俺を視認。上から下まで品定めでもするみたいに、眼鏡越しの視線で撫でてくる。

 俺も自然と緊張し、気をつけの姿勢を取ってしまう。


「こうして見ると、やっぱりちっちゃいねえ」

「ちょっと、こもりちゃん!」

「あ、ごめん、気にしてるんだった。無神経をお許しあれ」

「あ、いや、まあ、大丈夫、です、あはは」


 あれ、詠訵には俺の低身長コンプレックス、言った事なかった筈だけど。配信とかで口滑らせてたっけ?

(((と言うより、見てれば分かりますよ)))

 えマジ?どの辺が?

(((全身が)))

 全身が!?


「へー、女の子に言われるのは良いんだ…」

 

 なんか詠訵の目がちょっととんがった気がする。あれ?仲直りムードだったよな?


「うちのヨミっちゃんはチミにはやらんぞ!」

「ぶはっ!?」

「こもりちゃん!?」


 藪から棒に何を言い出すこのメガネっぉ!?


「ご、ごめんね、カミザ君?見ての通り、急に変な事言い出す子だから、気にしないで?」

「あ、ああ、分かってるって」

「おー?大親友にその言い方はないんじゃあ、ないかなあ?」

「こもりちゃんは少しだけ静かに——」



「埒が明かん!ウダウダ言ってないで行くぞ!そこをどけ!」


 

 なんかキレたニークトが横を通過して両開きの扉を二枚とも押し開けた!

 ああ!どんなのが居るか分からないから出来るだけ後回しにしてたのに!

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