66.は?ナイナイ(笑) part1
いらっしゃいませこんにちは!日魅在進です!
僕は今、丁都内の東究百貨店に来ています!
見て下さい!一階からゴリッゴリの化粧品売り場!顔の良いモデルさんのドアップ写真が並び、ファッション弱者を威圧してきます!
お目当ての魔力シールドジェネレーターを販売している、「潜行関連商品専門」である“アヅマダイブ”は、最近人気という事もあって3Fと行きやすい低階層にあるものの、この危険地帯を抜けなければならないとなると「カミザ君?行くよ」う、有無を言わせてくれない……。
「な、なあ詠訵?わざわざ神宿まで来なくても、ネット通販で良かったんじゃあ…」
「ダメだよ!ディーパーの道具は、自分の命を預ける相棒なんだから、自分の目と手で直接確認して、信用できるものでないと!」
「で、でもさあ」
「ジェネレーターの事といい、カミザ君は軽々し過ぎるよ!もっと命を大事にしなさい!」
「ぐぅ。な、ならせめて学園から近場の、もっと規模が小さい所とか…、ほら、詠訵ぐらい凄腕なら、『世間には知られてないけど、良い物売ってる店』とか知ってたりとかは…」
「そういうのは、まず一般的に流通してる物の中で、自分に何が合ってるか、傾向を掴んでから!最初からトンガった個人製作魔具を使うなんて、危ないし遠回りだよ?」
「そ、そういうものですか……」
「それに服とかオシャレグッズとかは、こっちの方が種類があるし、可愛いのも多いからね」
「へ、へ~………」
………
ん?
「ん?」
「うん?」
「服なんて買うつもりないけど?」
「私は買うよ?」
「そっか」
ならいっか。
「………」
良くねえええええええええええ!?!!!?
「あれ、ん?んんンンンン?」
「どうしたの?」
「いいいいいいや、なんなんなななんなんなんでも」
「プッ、フッ、フフフフフ、な、なにそれ?どういう反応なのかなあ…?」
「いやー!?俺の中で持ってた常識ってゆーかあ!?言葉の定義があ!?間違ってたみたいでえ!?」
「ふーん、そうなんだ?」
(((あれ、ススムくん?)))
「ングッ!?」
「え、大丈夫?」
「う、ううん、なんでもないぜ?」
目の前に降ってきた、上下逆さまの灰色の芸術。
俺の肩に手を置いて、上から覗き込んでいる、だらしない姿。
だけどそれはそれで、だ。
下に広がる長髪と、影が掛かって妖美さを増す貌、いつもは見えづらい喉元と耳。
それらがまた違った神秘性を備え、急に視界に入って来たので、危うくエスカレーターを転げ落ちるところだった。
というか落ち着いたら、近さと密閉感への意識が湧き始め、白昼堂々イケナイことしてる気分になってくる。カンナがいつも以上に、ウィスパーボイスを強調するから、余計に。
(ちょ、なに!?ほんとにそういうのやめて!?)
(((私が得た知識では、こういった休日に、男女連れ立ってするお買い物は、“逢引”、または、“デー(ないないないないない!!ぜぇんぜんっ、そんな事ナイ!)ですが(俺にも詠訵にもその気が無いから違う!はいこの話終わりぃい!)ふむ、それでしたら、そういう事にしておきましょう)))
「そろそろ角度が良くありませんし」、といつも通りによく分からない事を呟いた彼女は、俺の視界から消えて行った。だが去り際の笑顔を見るに、あれは全然分かってない。
く、悔しい…。
俺はカンナに恩を返したいし、その為にカッコよく決めて、見ている彼女を楽しませたい、のだが、基本は弄られて面白がられてるだけ。
だがいつか、
いつか実力で、お前を驚かせてやるからな!
「カミザ君?」
「え?」
詠訵に呼ばれた俺は、そこでエスカレーターの終わり際に足を引っかけ、つんのめって前倒れ「カミザ君!?」たが前転を一発挟むことで体勢を立て直し、何事も無かったかのように立ち上がり、歩き出す。
「どうした?詠訵?」
「……フフッ、いや、私は良いんだけどね?」
「うん?」
「すっごい見られてたよ?」
俺は周囲に軽く気を配る。
みんな驚くか笑いをこらえている。
うん、
「ご迷惑オカケシマシタ……」
逃げよう。
足早に次の階へのエスカレーターへ。
「……も、ほんと、だめだって、カミザ君、全部ツボ…フ、フフ、」
(((ふふっ、飽きさせませんね…くふふ、私は宿主に、ふ、恵まれました…ふふふふ……)))
あああああああああああああ!!
なんで俺はいつもこうなるんだああああ!!




