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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第四章:途方もない先を目指しての一歩は、やたらと重いし火傷しがち

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65.何かが、ハマってない

まず最初に、何故このダンジョンを選んだのか、という話から始めよう。


そして初っ端に結論を言えば、ご存知、カンナチョイスである。



 スケルトンは、これまで見て来たモンスターの中で、最も魔力に依存している連中だ。

 筋肉も血液も持たない彼らが、その身体を動かすには、内部を巡る魔力を使うしかない。不便にも思えるが、そこには利もある。魔力で繋がっていれば自在に操れる為、骨格を変化させたり、壊れた部分を修復したり、といった事が可能だという点だ。


 じゃあスケルトンとは、どうやったら「死ぬ」のか?その答えが、「弱点部位」と呼ばれる物である。

 俺達人間に魔力溜まりがあるように、スケルトンにも魔力を生成する場所がある。というかズバリ、モンスターコアの事だ。そしてそこが、彼らの生命としての本体でもあるのだ。

 まあ生命体なのかも微妙だから、ロボットの「動力」と考えてもいいかもしれない。

 そこを魔力の流れから切り離すと、一個体としてのまとまりを失うのだ。


 仕組みから言えば、その部分だけの状態からでも、復活できたりするらしいが、実際に生き延びる事は稀だ。過度に魔力が体外へと漏れた時点で、死が確定するらしいので。


 だがこの5cm四方くらいの弱点、個々で場所が異なるのだ。

 上級モンスターになってくると、そこだけ身体中を逃げ回ったりする。なんとこいつら、生死を賭けた“かくれんぼ”を挑んできやがるのだ。それも戦闘中に。見上げた往生際の悪さである。


 スケルトンと戦う場合、全身を一度にバラバラにするか、魔力の流れを感知して狙い撃つか、そのどちらかが出来なければ倒せない。それに、一番良く効くのは打撃攻撃だ。


 難しく聞こえるのは、俺規準だから。

 中堅のパーティーだと、結構簡単に狩れる。魔力だって、事細かに感じる必要はあまりなく、色が見えるレベルで充分。

 浅級の中では面倒な方だが、人数を揃えれば楽々だったりする。威力高めの魔法持ちが居れば、そいつ一人で事足りてしまうという話も。


 比較的モンスターが弱めな浅級の中で、俺の苦手分野である打撃を鍛えられて、更に戦闘中に並行しての魔力感知も伸ばせる、とはカンナ談。

 インファイトに集中しながら、少し離れた範囲の魔力感知をしたり、肉体強化以外の防御手段が無い状態で、味方との連携を考えて戦ったり。そういった訓練が出来る、という事だった。


 だがしかし。



「どうにも、思い通りにバトンが繋がらないね~」

「面目無い…」

「だいじょぶ!まだ初日だもん!これから良くなっていくから!伸びしろだよ!」

 

 うぐぅ、優しさが痛い。

 俺の感覚だと、俺がミスりまくってたんだが、


「ちょっと客観的に見ていた皆さんからも、意見を聞いてみよ!」


 傍から見てどうだったのか?

 それを知る為に俺達は、ラポルト近くの大きな墓石の陰で、反省会を開いていた。



『ススムが足を引っ張ってる』

『ススム、邪魔になってるぞ』

『貴様が先走り過ぎだ、ススム』

『のびのびとしたく~ちゃんの動きが削がれてる』

『ススムさんはく~ちゃんに相応しくありません。これで分かりましたよね?』

『く~ちゃん、これ大丈夫?思った以上に息がズレてるけど』

『これまでもそういうことあったけど、あくまで臨時パテメンだったからなあ』

『ススム君!頑張るのは良い事だけど、仲間を見なきゃ!』

『やっぱローマンはやめた方がいいんじゃ…』

『ヘラヘラしてんなよ、責任取って降りろ』

『く~ちゃんが盛り上げてんだから暗い声出すなよ素人』



 はい、10:0で俺が悪いようです。俺は間違っていなかった。

 そうだよなあ。どう見てもソロの時の詠訵の方が、手際良く攻略してたからなあ。


「申し訳ない…」

「まあまあ、大丈夫!大丈夫!パーティー一回目としてはこんなもんだよ!ご存知の方がいるか分からないんですけど、私も最初、陣形のセオリーとかあんまり理解してなくて、しかも慣れてないからワチャワチャしてたせいで、N(ナイト)ポジションの人の足踏んじゃったんですよ。で、『ああすいません』って言い合った後に二度見されて、『なんでB(ビショップ)が俺より前に居るの!?』って、怒られるより困惑されちゃって。しかも私、色々頭が一杯だったから、どうして怒られたのかも、なかなか理解できなくて」


『で、その背景で魔法でモンスターを殴り殺してる動画な』

『「ランク?3ですよ?」ドン引きする中堅』

『「あ、すいません!確実に一撃で仕留めないとですよね!」ドン引きする視聴者』

『お互い「?」って感じなのにモンスターは死んでくというシュールな絵面』

『才能に比して実戦経験が低かったから完全なランク詐欺だった頃』

『あれで初期バズに拍車かかったからな』

『草、初めて聞いたわ』

『ネットニュースで聞いたやつ!』

『当時界隈中に広まってたなアレ』


「そうそう、それです!それが切っ掛けで色んな方に知って頂いて——」


 うおっと、俺とした事が。戦闘中に加えて、反省会でも彼女に迷惑を掛けてしまっている。配信中配信中。ネガティブ禁止。明るく明るく。


「——みたいな感じで、パーティーなり始めの人がぶつかっちゃう事って、結構あるんですよ。だからカミザ君も、これから覚えて行こう!未熟な時も映してた方が、成長が分かりやすいから、むしろ得してるよ!」

「う、うん!頑張る!俺はやっぱり、視野の狭さが良くないのかな!く~ちゃんはその辺り、どうやって改善してた!?」

「私はそうだなあ……、一度私を抜いたパーティーで動いてる所を、後ろから見せて貰ったり、現役の人達に話を聞いたりしてたかな?」

「ふんふん、どんな話?」

「えっと例えば、『今前進して味方が付いてこれるか?』、っていう思考をゼロ秒で出す為に、何か行動するたんびに、毎回毎回しつこいくらいに頭の中で繰り返して刷り込んだ、とか——」



 等と、リスナーさん方も交えながら、喧々諤々やっていた時、詠訵があるコメントに目を留めた。


「そうだ、カミザ君!カミザ君ってジェネレーター持ってた筈だけど、さっきはなんでシールドが破れてたの?見えない所で攻撃を受けてた?」

「ん?ああ、違うぞ?単に俺のジェネレーターが安物だから、常時発動できるだけの燃費を維持できなくて、手動で切り替えてるだけ」



「………………」



 え、何この沈黙。

 雰囲気重くない?まとってる空気感がおかしいよ?

 何と言うか、そう、「何言ってんだこいつ」、みたいな。


「カミザく~ん?」

「ひゃい!?」


 声が裏返った。

 それだけ、にこやかな筈のその声が、怖かった。


「ここら辺、あと一時間くらい回ったら、新しいの買いに行こっか?」

「え、でも、今日は長めに配信するんじゃ?それにほら、連携問題を早く改善しないと、もっと危険なダンジョンにも」「行 こ っ か ?」「はいかしこまりました」


 あれ?何?何がそんなに地雷だった?

 使い古しをずっと身に着けてるなんて、みっともない、みたいな心理?

分からん!コメントのみんな!俺に女心を教えてくれ!


『行ってらっしゃい、ススム』

『説教されてこい、ススム』

『ススム、お前は本当にさあ…』

『くっさん頼む、ススムに首輪付けといてくれ』

『圧のあるお顔助かる』

『く~ちゃんのレア表情を引き出してくれてありがとう』


 

 あの、皆さん。

 俺に味方とか、アドバイスとかなさらない…?あ、なさらない。


 そうでしょうね!

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