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ハードモードな異世界を征け!  作者: ヒットエンドラGOン
第6章 タオカオ闘技大会
137/139

137 タオカオ闘技大会、予選

 試合開始の合図と共に、ステージ上の予選参加者50名が一斉に動き出した。


「くたばれや! くそったれ“霊拳流”がぁ!!」

「失せろ!! 野蛮な“火竜踏心流”め!!」


 パラドスと“霊拳流”の使い手が互いの拳と拳を繰り出した。素早いパンチの応酬にレベルの高さを感じた。


(ほぉ……! あの嫌味男、言うだけあるなぁ!)


 俺を“大族長”呼びしてきたパラドスも中々の闘気使いだが、嫌味男の方も全く引けを取らない武道家のようだ。


 嫌味男は“霊拳流”だけあって、闘気の流れが実に綺麗で無駄が少なかった。かつて俺を苦しめた、あの“帰心流”の中伝さんを彷彿とさせるような、そんな静かな闘気の扱い方だ。


 一方のパラドスは正反対の戦い方だ。荒々しい闘気の扱い方だが、巨体から繰り出された闘気込みのパンチは威力が凄まじく、かなりの破壊力を生み出していた。


 パラドスの防御を捨てた攻めの姿勢に嫌味男は対応に苦慮していた。パラドスの燃料切れが先か、それとも先に嫌味男が膝をつくか……実に見物である。



「余所見とは随分余裕だなぁ!!」


 背後から突如声が聞こえる。俺の死角から選手の一人が拳を繰り出してきたようだ。


 俺は後ろを見ないまま少し横へとステップして躱し、相手の拳がすり抜けるのを確認すると、素早く身体を捻って男の顔面を鷲掴みした。


「不意を突くのなら……黙ってやるんだな!」

「ぷぎゃっ!?」


 俺は男の顔面を掴んでそのまま、地面へと押し倒して頭を叩きつけた。


(ま、闘気丸出しで、声を出さなくても気付いていたけどね)


 相手も身体強化をしているみたいだし、これくらいで死ぬことは無いだろう。


 だが、当分は動けまい。これで一名脱落。



 今の俺の動きを遠巻きに見ていた他の選手たちが慄いた。


「こいつ……強い!?」

「あの大男から”大族長”なんて呼ばれるだけはあるなぁ……!」

「こいつから潰そうぜ!!」


 選手三人がその場で結託して俺へと襲い掛かってきた。


 これがバトルロワイアルの厄介な点である。目立つとこのように集中攻撃されるのだ。


「まぁ、お前ら三人程度なら問題ないけどな」


 俺が挑発すると男たちは顔を真っ赤にして怒りだした。


「なにを……!」

「生意気な小僧め!」

「後悔しやがれ……うっ!?」


 俺は一足飛びで三人の元へと迫ると、そのままの勢いでまずは真ん中の男を殴り飛ばした。


「はやっ!?」

「ち、畜生……っ!!」


 慌てて左右の男たちからパンチが繰り出される。俺はその場でしゃがみ、その攻撃をやり過ごす。


 両サイドから迫ってきたパンチは俺の頭上を通過して当たらず、そのまま二人の男たちへ互いにヒットした。


「いてぇ!?」

「テメエ……なにしやがる!?」


 その場しのぎの連携なんてこんなものだ。


 こちらを余所に口論していた間抜け二人を、俺は高速足払いでほぼ同時に態勢を崩させる。二人とも、僅かに地面から足が離れた瞬間を狙い、俺は両方の掌底で男たち二人を吹き飛ばした。


「ぐえっ!?」

「ふぎゃ!!」


 闘気込みの俺の怪力掌底は大の男たちを軽々と吹き飛ばし、ステージ場外へと落下させる。


 これで一名ダウン、二名が失格だ。


「うし! 順調!」


 素手での戦闘でも問題なさそうだと俺は手応えを感じる。


 すると、いよいよ俺の実力に警戒し始めたのか、今度は6人が一斉に襲い掛かってきた。


「あいつがヤバい……!」

「あの野郎を先に叩けぇー!!」


「……今度は倍の数か。ま、問題なさそうだ」


 ぱっと見、強そうな闘気使いの気配は感じられない。


 俺は闘気を全身に漲らせて、集団で襲い掛かって来る男たちを次々に殴り飛ばした。


「ぎゃあ!?」

「ぐへぇ……!」

「あべしっ!?」

「ほぎゃあーっ!!」


 まさしく鎧袖一触。


(全員がこのレベルだと有難いんだけど……)



 6人を一息の内に倒すと、今度は10人以上の選手が俺を囲い始めた。


「かなりの闘気使いとお見受けする!」

「是非、俺と戦ってくれ!」

「待て! 俺が先だ!!」

「いやいや、私の方が……!」


 どうやら今度は向上心の強い連中に目を付けられてしまったらしい。


 この闘技大会は実績や名声、賞品目当ての参加者が大半だが、中には強い猛者との勝負を求めて参加する武道家も一定数いるらしい。


(さすがに今までの雑魚とは違うが……)


 数はざっと数えて10名以上……さっきの更に倍である。


「……問題無い! 全員相手してやる! 殺し合いでもない勝負なんて、イージー、イージー!」


 こちとら武器持ち神術有りの全力で斬りかかってくる決闘馬鹿の弟子を抱えているのだ。彼女との決闘と比べたら素手での勝負なんて可愛いものだ。


 別に徒手戦闘を馬鹿にする訳ではない。素手でも闘気使いであれば凶器となるし、かつて戦ったあの熊さんレベルの達人が相手ならば逃げ出したいくらいだ。


 だが、俺は腕力と闘気には相当の自信がある。余程の手合いでない限り、素手で俺を止められる者は存在しないのだ。


「侮るな! ……がはっ!?」

「ぐぅ!?」

「こいつ……本当に全員を一度に……!?」

「つ、強い……!」


 今回の連中は闘気量も一定レベルまで備わっていた。素手での戦闘技術に関しては、下手したら俺より上の者もいたかもしれないが……そんなの関係無い!


(相手が攻撃するより早く、パワーで伸しちまえばいいだけだろ!)


 最短最速、パワーで圧倒する。


 まさしく脳筋戦法!


 だが、こういったシンプルな強さこそが厄介なのだ。徒手戦闘技術の無い俺が下手な拳法の真似事をしても、マイナス効果にしかならないのを俺は知っている。


「パワーイズパワー!」


「ぐは……っ!!」

「こ、こんな力押しだけで……ぶべあっ!?」

「なんと出鱈目な……あぐっ!」


 武道家たちを俺は力任せで排除していく。徐々にステージ上の選手たちが減ってきた。


 すると今度は、更に更に倍近くの人数が集団で迫ってきた。


「今だ! あいつをやれー!!」

「流石にもう息が切れた頃合いだろう!」

「我が“ゴードン流”の力……思い知れぇ!!」


 総勢20人近い男たちが足並みを揃えて襲い掛かってきた。実力は大したことないが、そこそこ連携が取れており、その分ちょっとだけうざったい。


(なんだ、こいつら? 全員グルなのか?)


 予選のグループ分けは抽選で、組み合わせは全部ランダムの筈だ。だが、それにしては徒党を組んでいる人数が多い。


 仮に不正を働いていなければ、その“ゴードン流”とやらが1グループ20名近くと考えると、全グループで総勢100名以上が予選に集団参加しているという計算になる。


「ゴードン流……聞いた事ないな。マイナー武術か?」

「ふん! この大会で実績を叩きだしてメジャーになるのだ! 邪魔はさせん!」


 なるほど、そういう魂胆だったか。だが……


「どうやらアンタら、徒手格闘系の流派じゃあないな。そんな腕で俺を倒せると思っているのか?」

「ぐっ!? ……強すぎる……!?」


 いや、アンタらが弱すぎるんだ。


 人数だけは大したものだが、個々の実力はこのグループ内で一番弱いんじゃないか?


 仮に俺が疲労困憊な状況に陥っていたとしても、このレベルの集団相手には負けないだろう。



 僅か30秒ほどで“ゴードン流”御一行様を殲滅させると、俺はステージ上を見渡した。


「はぁ、はぁ……やるなぁ、“霊拳流”……!」

「ぜぇ、ぜぇ……貴様こそ、“火竜踏心流”の分際で粘るではないか……!」


 パラドスと嫌味男……二人はまだ戦っていた。


 どうやら両者の実力はかなり拮抗しているのか、勝負が長引いているらしい。


 面白い事に、最初はいがみ合っていた二人も拳と拳を重ねる事により、互いの事を認め合うライバル関係になりつつあるようだ。


 他の連中と比較するとレベルも非常に高く、かなり白熱した素晴らしい勝負だ。


 良い勝負、なのだが……


「すまん……許せ」


「あっ!?」

「うわっ!?」


 俺は容赦なく勝負に介入し、疲労して隙だらけだった二人をぽーん、ぽーんと、ステージ場外へと投げ飛ばした。


(見守っていたら、何時までも時間が掛かりそうだしね)


 傍から見たら鬼畜の所業だと非難されるかもしれないが、もうステージ上にはこの二人しか残っていなかったのだ。


 なら、やるしかないじゃない?


(俺一人でこの二人以外の全員を相手にしたんだ。それくらい許されるよねぇ?)


 場外で呆気に取られている二人を余所に審判がジャッジを下した。


「そこまで! 第3グループ予選、終了!」


 俺の本戦出場が決定した瞬間であった。








「あ、師匠! もう終わったんですか!?」

「随分と早かったですね」


「ああ。強い二人が勝手に潰し合ってくれて余裕だったな」


 俺はセイシュウに預けていた武装一式を受け取りながら答えた。


 あのパラドスって男と“霊拳流”の嫌味男は相当の腕前であった。俺を除けば、あのグループ内でトップの実力だっただけに……惜しかったな。


(ま、俺は楽できたから良いけどね~)


 どうやら今大会はイージーモードらしい!








「どうなっている!? 一体何故……“双鬼”が大会に参加しているのだ!?」


(今回の作戦はイージーだと思っていたのに……っ!)



 大陸で暗躍する“影”の諜報部“草影”


 その“草影の”幹部である私は、目下最大の障壁である“双鬼”ケルニクスが何故か大会参加している事を知って頭を抱えていた。


「……どうやらケルニクスは“ケリー”という偽名を使って参加しているようですね」


 部下の報告を聞いた私はジロリと彼を睨みつけた。


「あれ程……! あれ程、連中には注意しておけと言っておいたのに、大会当日まで参加が分からなかったとは……“草影”も落ちぶれたものだな」

「も、申し訳ございません! すぐに対応致します!! そうですね……”名を偽って参加した”とか、なにか尤もらしい理由を付けて、奴を大会から追い出す事も……!」

「むぅ…………」


 ちょっと苦しいが……大会の運営陣はこちらの手の中だ。なんとでも理由をこじつけてケルニクスの大会参加を拒否することは容易い。


 だが、しかし……


「……いや、その手は拙い。奴の大会参加拒否は可能でも、それだと明日の本番、例の仕掛けが発動したタイミングで外から介入される恐れがある。さすがに本日中に奴を街の外まで追い出すのは、正統な理由でも無い限り我々では不可能だ」

「っ!? そ、そうですね……そこまで考えが及びませんでした……」


 部下も相当焦っているのだろう。


 あれほどパラデイン勢力の介入には気を遣っていたというのに、それでもケルニクスは現れてしまった。


(まさか……こちらの計画が勘付かれているのか!?)



 気になった私は即刻部下に命じ、最大限の注意を払わせながらケルニクス周辺を探らせた。




 大会予選が終わる夕方の頃合いには、大体の情報が集まった。


「どうやら連中、本当に何も知らず、大会に参加している節があります。ダミーの賞品にでも釣られたのか、優勝賞品の神器の剣の方にばかり興味を示しておりました」


 ……神器の剣が狙いということか?


「ほう……それは確かか?」

「はい。恐らく間違いありません。それ以外に動機が見られません。ただ、連中の傍には幹部クラスのシノビが控えておりますので、あまり深くまでは調べられませんでしたが……パラデイン勢力から来ている主要メンバーはほぼ全員把握できました!」


 この街には我ら“草影”の手勢が多数潜伏している。流石のシノビ衆といえども、アウェイの中ではこの短期間で我ら全ての人員を把握することなど不可能だ。


「主力は“双鬼”ケルニクス、双剣風使いのソーカ、アマノ家当主のセイシュウと妹イブキ、シノビ衆副頭目のクロガモ……あとは、それなりの騎士とシノビに従者が数名……以上です」

「ふむ……腕の立つ神術使いは不在なのだな?」


 パラデイン勢力で神術使いだと、”疾風の渡り鳥”のニグルド、”青き盾”の”氷壁”レア、”豊穣の聖者”ゴロー辺りが厄介だ。


 あとは大した神術使いは居ない。


「はい。ソーカとイブキが多少扱えますが、あの娘たちは基本、闘気をメインにして戦う戦士タイプです。一点だけ気になるのは、元勇者のゴローがパラデイン王国から陸路で出国したという情報を得ておりますが……奴は乗り物全般が苦手な筈です。仮に馬車でこちらに向かっていると考えても、大会には絶対に間に合わないでしょう」

「なるほど……」


 今回我らが用意した仕掛けは対闘気使い用の大規模な罠である。その罠を闘技大会会場で使い、我らに与さない邪魔な闘気使いと各国の首脳を一網打尽にする計画であった。


 今回の作戦には数年単位で計画された非常に重要なものだ。その大事な計画を妨害されないよう、邪魔なパラデイン勢力や優秀な火の神術使いである“業火(インフェルノ)”カロライナ公女を遠ざけておいたのだ。


 だというのに……


「……分かった。ならば今回の作戦、ケルニクスとその一味も標的に加える」

「……宜しいのですか?」

「ああ。元々、私は奴をこの罠で仕留めるつもりでいたのだ。ただ上層部に反対されたから連中を計画から遠ざけていたにすぎん」


 正直言って今回の計画にはかなりの自信がある。いくら凄腕の闘気使いといえど、この罠には抗いようがあるまい。


 私は今回のこの罠でケルニクスを抹殺するよう何度も上に打診したのだが、パラデイン勢力に散々痛い目に遭わされた弱腰上層部が許可しなかったのだ。


「これ以上の不備は情報の漏れは無いな?」

「はい…………あっ! そ、それと……ケルニクスは例の魔剣を所持しております。大会中に神器の持ち込みは事前申請さえあれば可能ですが……如何致します?」


 そうだった。そういえば、肝心な事を失念していた。


「“魂魄剣”か……。あんな物騒な物、奴の手元に置いておかせる訳にはいかん! もし仮に大会に持ち込むよう武器の申請を出したならば、開始直前に手勢の職員にでも回収するよう命じておくのだ。そうすれば、計画もより完璧なものとなる!」

「“魂魄剣”がこちらの手にさえ渡れば、もう死角はあり得ませんからね。了解致しました!」


 今回の計画に穴があるとしたら、それは神器の存在だ。


 本当は今回の大会で神器の持ち込み事態を禁止にしたかったのだが、神器クラスの貴重品になると国賓から事前に奪い取る訳にも行かず、不測の事態が起こり得る。


 ならばいっそ、事前に手続きさせて持ち込ませ、こちらで情報を把握しておく。作戦終了後は神器も回収でき、一石二鳥の案である。


 だが……あの神器だけは危険だ。こちらでも目を光らせておく必要がある。


(くくく……“魂魄剣”さえ無ければ、貴様なんぞ丸裸も同然だぞ、ケルニクス!)


 イージーな作戦の筈が、少しだけ難易度が上がってしまったが……まぁ、問題あるまい。闘気使いでは絶対に勝てないのだから……








「もぐもぐ……。うん、イージー、イージー!」

「師匠……さっきからそればっかり口にしてますね」


 大会予選も全て終わり、俺だけでなくソーカにセイシュウも無事に予選を突破し、本戦へと勝ち上がった。


 俺たちは宿の食堂で夕飯がてら、ささやかな祝勝会と激励会を行っていた。


「もぐもぐ……予選はそんなに楽勝だったんですの?」


 ステアの質問に俺は口の中に入れていた食べ物を飲み込んでから答えた。


「んぐっ、ごくん。まあな。二人だけ骨のある奴はいたが……他はヨワヨワだったな。ソーカとセイシュウの方はどうだった?」

「たいして強敵はいませんでしたね。なんか“ゴードン流”って連中が一斉に襲い掛かって来ましたが……ヨワヨワでした」

「ああ。こちらにもいましたね、ゴードン流。弱かったですが……」


 哀れ、ゴードン流……


(名を高めるどころか、逆に株を落としてやいないか?)


 同じ流派の開祖としてゴードンさん? には同情を禁じ得ない。


「明日の朝には本戦の組み合わせが決まるのだろう?」


 エータの問いに俺は頷いた。


「ああ。抽選らしいけど、流石に一回戦から身内とは当たりたくないなぁ」

「私は寧ろ、万全の状態で師匠と初戦で当たりたいです!!」


(開幕からソーカとか……嫌過ぎるんですけーど!?)


 だって明日の一日だけで本戦全てを終える超過密スケジュールなのだ。体力はなるべく温存しておきたい。


 決勝まで勝ち上がるには実力だけでなく、くじ運もなければ相当厳しいようだ。


 なんでも去年までの本戦は二日に渡って日程が組まれていたのだが……カウダン商業国の都合上、何故か今年だけはこんなハードスケジュールとなったらしい。



「明日はわたくしたちも観戦できますの! 皆さん、頑張ってですの!」


 神器の指輪【盛衰(せいすい)虚像(きょぞう)】で幼女の身体に変装しているステアが可愛らしく両こぶしを握って激励してくれた。


「おう! そっちも気を付けてな。今のところ、ステアの正体はバレてないのかな?」


 俺の問いに答えたのはステアの護衛として付いてきたクロガモだ。


「ええ、アリステア様の素性は今のところ露見されていないでしょう。ただ……」

「ん? ただ……なんだ?」


 珍しくクロガモが言葉を詰まらせていた。


「何名か不審な動きをする者、こちらを監視している者がおります。各国から国賓を招いている大きな大会ですから、その警護を兼ねているカウダンの手の者の可能性もありますが……それにしては少し妙です」

「え? それって……大丈夫なのか?」


 まさか俺たちの正体を見抜かれたんじゃあ……


「ケルニクス殿や我々護衛の正体を見抜かれた可能性は十分にありますね。ただ、連中の目は幼い陛下の方には一切向いておりません。アリステア様の正体が露見した可能性は低いでしょう。それよりも、こちらの戦力を気にしているような……そんな動きに感じます」


 ふむ……パラデイン女王を探しているのではなく、あくまで腕の立つ達人として、こちらを警戒しているってだけなのか……?


「それでは、やはり警護目的の商業国の監視なのでは?」


 俺と同じ考えなのか、セイシュウが尋ねるもクロガモは即答できなかった。


「……判断しかねます。どちらにせよ、観戦中も気を抜かない方がいいでしょう」

「ああ、分かった。忠告、痛み入る。クロガモ殿」


 護衛役であるエータは気合を入れ直していた。この様子だと、エータも元々気を抜くつもりはないらしい。



 そして、いよいよ大会本戦当日を迎えた。

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