漠然とした決意
楽しい、楽しい、音楽の授業が終わり。昼休みになり、学校の売店に行くと、色々なものがあり値札を見ると百瀬はゾッとした。パンが200円、飲み物が170円、、、なんだこれは、、やはり、生きていた時と何もかも違う。お金は小遣いがあるから普通に購入できた。
しかし、何かこう、モゾモゾする感覚と1000円札を渡した時、ゾッとした感覚が共存していた。金銭感覚に疲れる百瀬であった。
食べ物は美味しい、前世は戦争が終結し復興の真っ只中で、大して美味しいものは食べれなかった。現世の食べ物に感動する百瀬であった。
「砂糖や小麦やバターをふんだんに使うパン」「砂糖とミルクを沢山使うコーヒー 、、」「この様な裕福な世の中なのか 、、」 「トイレも水洗で 、、」
と感動しながら、パンを頬張る。
「百瀬君、音楽の授業の時の歌がとても凄かったよ」と男子生徒が近づいて来た。「一緒に食べても良い ?」
百瀬はコクリと頷いた。「名前は」百瀬は尋ねた。
「自分?あぁ、井上義人、よろしく」井上は答えた。
「宜しく」百瀬も答える。
「百瀬君の歌った曲は何?自分で作詞?作曲?」
「違うよ、、自分がそこまでは、、昔の歌」
「ふーん」と井上は言いつつ「この様な歌のネタはある?」続けた。
「沢山あるよ、譜読みをよくしていたし記憶力に自信があるから、楽譜にできる」
「凄い」「楽器も弾けるね」と言われ百瀬は「アコーディオンとギターなら」
「よっしゃ、なら放課後、音楽室に来て!」「自分は軽音部をやっているから、、是非!」興奮する井上に百瀬が「軽音部、、何ですか?何の団体?」と質問する。
「面白い人だな、、バンドで歌を歌うと言ったら簡単かな」井上は笑い。
「成る程、了解」百瀬は答えた。
昼休みが終わり、放課後になり、音楽室に百瀬は来た。
「百瀬君!来た来た!」と言って百瀬を迎え入れられた。現代社会の国力や化学力に酔っている百瀬はボーっとしていたが、軽音部の部員の楽器を見て百瀬はパァと明るくなり「凄い!エレキギター!」「この様なハイカラな楽器が!」「ドラムも凄い!」と興奮していたら井上たちは笑いながら「百瀬君は愉快だね」と言い部員もクスクスと笑っている。
百瀬はテレていた。
「百瀬くん、では、不思議なオリジナル曲を教えて」井上がそう言い百瀬は「了解」と言う。
「どの様な曲風が良い?」と百瀬は質問する。
「面白い曲」と井上は言う。
百瀬は少し悩みながら、アコーディオンを演奏を始め歌い始めた。「♪〜」
百瀬の前世に流行ったジャンルである中国大陸を題材にした歌謡曲を歌い始めた。「歌いながらこの曲はヒットしなかったから勿体ないと思いながら歌う」
メロディーは異国情緒が強くチャイナメロディーの効いた印象に残る歌謡曲である。
百瀬が歌い終わると周りが「シーン」としていて、焦っていると、井上と他の軽音部の部位が拍手をして「歌唱力とアコーディオンは完璧で曲が個性的!」「題名は?」
百瀬は「シナの娘さんです」
「百瀬君のオリジナル曲だよね、、聴いた事がないし」井上は言う。「スマホで調べても出てこないし、、」
「ス・マ・ホ、、なに?、その箱は?」と百瀬は困惑していた。「ボケなくて良いからと」皆んな笑う。
後に百瀬の生きた時代は無かったことになっている事を知るのであるが、今の百瀬はただ、困惑するだけであった。
百瀬もあまり、困惑や不安に流されるべきではないと思い、また、この世の中に適応しなければと考えた。忘れ去られた時代の音楽をこの世の中で問おうという気も強くなりつつ、闘志を燃やそうと「シナの娘さん」を紹介して思うようになる。
「「シナの娘さん」は女性が歌う方がもっと素敵になるから、貴女、歌ってみない」と部員の女性を誘うと「いいのですか?」「歌います」と答えた。
名前は神埼蘭子と言って百瀬からすれば、芸名みたいな名前だなと言う事が第一印象になっていた。
「シナの娘さん」を楽譜にして部員に渡した。
部員と言っても井上と神埼ともうひとり、男子高校生の東龍だ。
一応、芸能科なので、楽器の演奏はできる。
たどたどしく、神埼さんの歌声に合わせて練習が始まる。また、百瀬も声楽には少なからず自身があるので、神埼さんにアドバイスを入れつつ。兎に角、偉そうにせず、細心の注意を払いアドバイスをおこなう。
「神埼さん、難しいですよね。音程が難しくまた、この曲は癖があるから今日、マスターできないから。あと、ス・マ・ホで中国の歌を聴いて参考にすると楽になります。」「ぼちぼちで 、、」
「ありがとう。百瀬君」「家で練習してみます」
ニコッと神埼は笑う。
「19:00、帰りましょう」東がいいお開きになった。
「井上君、、僕の家に帰り方を教えて」
「うん、、分かった」と井上は苦笑いしている。
電車の中で「百瀬君は何でも感動する。愉快な人」と井上は笑いのツボにハマって笑っていた。
百瀬は恥ずかしく頭をかいた。
「お願いがある。1ヶ月後の軽音部の発表会のプログラムの構成と演奏、歌唱のお手伝いをしてくれないか?君の能力は素敵だし、この世の中に新しい風を、、ネっ」
百瀬は、快諾した。
「面白いものを作ろう。」
「あの時代の歌謡曲は忘れられた。また、私の知っている曲は無になってしまう。ならば、自分の記憶と能力を最大限に活用して、忘れえぬ歌謡曲としてこの世に問う。」と決意した百瀬瑠偉であった。
参考曲 「支那の娘さん」歌手 高山美枝子 昭和15年 ポリドールからリリース。