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第十七話 アニキの行く末




 ――ガタンゴトン……ショッピングモールからの帰り道、日が経ち暖かなオレンジに染まった車両内。黄昏時。


 意外と手触りの良い卵の頭を撫でながら微笑みを浮かべる男。


 周囲に人が少ないので不気味な微笑みを浮かべようが気持ち悪がる人は居ない。と、思ったら真正面のおばあちゃんが暖かな眼差しでこちらを見ていた。


 ……きゃっ、恥ずかしい……というか今日お金使い過ぎたかな……俺の愛しの樋口ちゃんは、一枚のおじさんと金銀の硬貨へと変貌している。


 ……結構本買ったな……俺の筋肉を持ってしてもちょっと重い……まぁ、これも咲月ちゃんの為だ、後悔は無い。

 ……アイドルとか推しに貢ぐってこんな感じ何だろうか……咲月ちゃん待っていてね! 総重量的にちょっと重いかも知れないけど、俺の想いを受け取って!


 ――愛のこもった数十冊のラブレターとキュートな人形二つを両手に電車を降りて、駆け足で梓川宅へまっしぐら、途中、携帯のブザーが鳴ったので開いてメールの内容を確認すると、黒名瀬から一通のメール、簡潔に『後は任せたわ、頑張って』と書いてある、そんな黒名瀬らしいメール文を見ているとふと脳裏に過ぎるアイデア。

 そのアイデアを実行するために黒名瀬へと『黒名瀬、今自分の家だろ? ちょっと待ってろ、いいモノをやろう……』と打って送信ボタンを押す。


 てな事で、卵の行く末が無事決まったので、黒名瀬宅へと突入、今の時間帯は黒名瀬の両親は居ない筈なので、黒名瀬単品で出てくる筈だ。


 黒名瀬宅、玄関の前、体力作りも兼ねて走ってきたので「ゼェ、ハァ、ゼェハァ」と息を気らしている。

 ちょいと休憩という事で扉に手を付きながら一呼吸整え、若干まだ息を漏らしながらもピンポーンと玄関チャイムを鳴らす前に……途端にガチャっとドアが内側に開く。


「うぉっ!」


 当たり前だが、そのまま倒れ込み目の前に立つ黒名瀬に土下座する形に。


 ……そういえば内開きだった。


「……あら、随分と綺麗なジャパニーズどぅっげーざーね、まるで浮気していたことが嫁に発覚して角の幻覚が見える鬼嫁に真摯に赦しをこう憐れな夫のようよ、ざまぁ無いわ」


「……ハァッ、アッ、ハァハァ、黒名瀬……これをお前に……ハァハァ……」


 立ち上がり、にじり寄りつつ袋へと手を伸ばす。


 傍から見たら息を荒らげる変質者とそれに襲われそうになっている女の子の図に見えない事もない犯罪的な光景。


「……黒名瀬ちゃ〜ん……ハァハァ……」


 もうわざとの域である。


「きゃー、たすけてー、変態よー、変態が居るわ、か弱き少女はこんな所でその純真な血を穢され散らして行くのね」


「……ふぅ……助けを呼ぶならもっと腹から声を出さんかい、抑揚も無いじゃないか、それにお前はそこらの男よりよっぽど強いだろ、……って、そんなことはどうでも良いんだ、ほら、今日はお前にコレを渡したくて馳せ参じた、有難く受け取るんだな」


 言って俺は、レジ袋の中に手をツッコミ丸い卵形の人形を取り出し黒名瀬に押し付ける。


 ……絶対嫌がるだろうけどな。……だってよ、夜コイツが枕元にいるんだぜ、じっと見てんだ、眠りにつく頃、静まる夜、暗がりの中、眠る主人をいつ殺ってしまおうかと、虎視眈々とその命を狙っている、ミカズキの様な裂けた口を携えた笑顔で。


「な……にかしらこの奇妙な卵おじさんは……気味が悪いわね……」


「そいつの真名はパンプティ・ダンプティ、意気揚々とUFOキャッチャーをしていたら吾輩も連れて行けと勇者御一行へと迫ったので仕方なく連れていくことにした、でも俺のパーティはもう定員オーバー、どうしようかと迷っていた所で、俺の元へと一通のメール、その後、紆余曲折あり、しょうがないから黒名瀬へとプレゼントフォーユーと言うことだ、抱き枕にでも使ってやれ」


「……え……」


 まぁ、引くよな、ソレ。


 ちょっとした意地悪のつもりだっけど、ダメだったかな?


「……黒名瀬、そんなに引かないでくれ、ごめん、ソイツは俺が受け持つ、よく見たら意外と可愛いしな、キモカワイイって奴だ」


 言って丸いアイツへと手を伸ばす⎯⎯


 だが、直前まで迫った所で黒名瀬の身体が後方へとズレる。


「……どうした、黒名瀬、立ちくらみか?」


「い、いえ……仕方ないからこの子は私が引き取ってあげるわ」


「……え、マジ……? ……どうぞ……? ご自由に……」



 嫌がるだろだろうと高を括って黒名瀬へと押しつけた訳だが、何故だか黒名瀬は、卵のアニキをギュッと抱きしめ、顔を俯かせながらも、どこか嬉しそうに微笑んでいるような気がした。












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