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第七話 予兆

 ――ツキと新タが眠りについてから数刻、深い夜の闇、静寂と共に魔物たちの活動が活性化しだすそんな時間。

 囁きの大森林最奥にて、一つの大きな人影がゆらりと動く。


「……近辺も暑くなってきた頃合いだ、そろそろ出てきても良いんだがな……」


 そんな言葉をぐわっと開いた大きな口から吐き出したのはマントを羽織った角の生えた大男。


「……腹も減ってきたし、とっとと終わらしちまいたいモンだなァ……」


 のそりのそりと大きな体躯を揺らして歩く。


 何処からか、犬型魔獣の遠吠えが聞こえてくる。


 大男の周囲には魔物1匹すら見受けられない、いや、近寄らせない。


 野生の勘、獣の本能からその大男へと近づく愚かな行いを良しとしない。


 そんな本能が抜け落ち、感の鈍ったマヌケな魔獣は即座に――


「……ガルルッ」


「おっと、ちょいと邪魔だ、オオカミちゃん」


 一瞬の会合、飛び掛る魔獣、瞬きの間、喉から細く漏れ出た悲痛な最期の叫び、眼前の魔獣は大男の振りかぶった大剣の餌食となる。


 唐突に原型を失った目の前の獣、それに目もくれず、片手で軽々と大剣に付着した血を振り払う。


「……やっぱ少しクセぇなァ、この辺の魔物はもっと危機意識がたけぇ筈だ……まるで何かから逃げてきたみてぇな面ァしてやがった」


 大剣を背負い直し大男は再び歩を進める。


 そびえ立つ木々の合間を抜けて行く。


 培われた己の感に従い道を行く。


 遮られた視界、葉を掻き分け踏みしめる音が辺りに響く。


 やがて、視界に映るのは木々に囲まれた広く開けた空間。


 そんな空間に存在する驚きの光景を見て大男が呟く。


「……おいおいまじかよ、きなクセぇとは思ってたがこりゃまた……」


 見開かれた大男の鋭い瞳、その二つの青い双眼に映るのは、一見山かなにかにも見えた地に倒れ伏し鎧のように纏った肌がゴツゴツとした岩石で出来た魔獣、大きな翼の生えたジャイアントロックドラゴン。


 その視界を遮るほどの図体からは考えられない光景、そう、ジャイアントロックドラゴンの身体は、ちょうど中程で綺麗に真っ二つに切られていた。


 大男はその絶命した魔物に近寄り、肉々しい切断面を見る。


「随分と綺麗に殺ったモンだなァ、……それに焼け焦げた箇所もある。とてもそこらの一介の冒険者に出来る芸当じゃねえ……魔術か、剣か、それとも……」


 言って大男は足元の、血塗れた地面を指で撫でる。


「乾いてるみてえだ……こうなったのは数時間前か……ひょっとしたらもう近くには居ねぇか……」


 指先から視線を外し、もう居るはずのない何かを追うようにして空を見上げる。


「……そういや、コイツの遊び相手はどこに行ったんだ、逃げたのか?」


「……いや、でもそんな筈はねぇ……辺りの温度はまだ焼け焦げるような熱さだ……いやまてよ、そもそもアイツはこんな熱さだったか……」


 暫しの黙考、一旦考えを中断し、大男は周囲をぐるりと見渡す。


「……クハハハハハハ……だとしたら……ちぃとばかしは楽しめそうだ……」


 そんな言葉と共に大男は大きく口を開け嗤う、深い夜の静寂の中、森の中の魔物たちはその声を聞き、我先にと一目散に逃げている。


 この囁きの大森林は不運にも今、二つの危機、厄災に晒されている様だ――。









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