76話 狂った歯車
あぁ、酒が美味い。
いつもなら何も感じねぇ番組も、今日はやたらと面白く感じる。
あぁ、あいつらが地獄に落ちる。
あぁ、どんな顔をするんだろうか。
あぁ、金はいつ来るんだろうか。
あぁ、心底楽しみだ。
っと、そういえば自称相島笑美の母親ってやつ、あいつ会いに行った時間じゃねぇか?
別にあいつの行動に関しては、金を毟り取れれば御の字。1番の目的は、実の母親が来たと言う更なる精神的ダメージだ。
相島笑美が傷付けば、必然的に付き合ってる君島も苦しむだろう。精神的にもかなりのストレスになるはずだ。
弱って苦しんでくれよ? 君島。大事な女が傷付くのを見て、盛大にな?
「くくっ」
「ねぇ、颯さん? 随分楽しそうね?」
「あぁ、蘭子。そりゃ楽しいだろ。もう少しで金も手に入って、あいつらも終わるんだ」
「いい気味だよね。ふふっ、あっ……トイレ行ってくる」
「おう」
風呂入ったら、一発景気づけにヤルか。
♪~♪♪
って、誰だ? おっ、丁度良い。大衆社の奴だ。
≪はい、もしも~し≫
≪黒滑さんですか? 大岩です≫
≪あぁ、大岩さん。丁度良かった、金はいつぐらいにもらえるんですかね?≫
≪その事も含めて、お電話しました≫
≪ほほう? んで?≫
≪その前に、実はですね? 相島笑美が明日、緊急で記者会見をすることになりました≫
あぁ? 会見?
≪それがどうかしたんですか?≫
≪実はその会見……結婚会見だそうです≫
≪はっ、はぁ?≫
≪私達がスクープとして出す予定の雑誌、発表は4日後です。そして会見が明日……言っている意味分かりますよね?≫
おっ、おい……待てよ。あの写真は相島笑美のスキャンダルだぞ? なのに明日けっ、結婚会見だと? つっ、つまり俺の情報が出る前に……くっ、クソがぁぁ!
≪まっ、待ってくださいよ? でっ、でも情報提供したじゃないですか?≫
≪もちろん謝礼は用意します。ただ金額は数万円でしょうね≫
≪数万!? 桁が3つは違うじゃねぇか!≫
≪まぁ、こちらもすでに記事を作成してましたが、ギリギリ印刷の前だったんで良かったです。ただ、こちらも旨味のない記事を載せる余裕はないんで、記事全体が没です。つまり、あなたの情報は何の役にも立たなくなってしまったんです。そう考えると、もらえるだけでもいいでしょ≫
≪んなっ! ちょっと……≫
≪それでは近日中にまた、ご連絡します。それでは……≫
くっ、クソが! 緊急会見? 数万円? ふっ、ふざけんな! おっ、俺の労力を返せよっ!
「ふっ、ふざけんな!」
♪~♪
って、今度は誰だぁ? あぁ、相島ぁ? 今はそれどころじゃねぇんだが……もしかすれば、こっちは金取れる可能性が?
≪もしもし? 相島さんですか?≫
≪あのクソ女、ぶっ潰してやる!≫
声でけぇんだよ! にしても、会った時と口調がだいぶ違うぞ?
≪おっ、落ち着いてくださいよ。それで? どうだったんですか?≫
≪どうもこうもあるか! あの女、母親に金出す気もねぇ。アタシの事知られてもどうって事ないってほざきやがった≫
はぁ? マジで母親だったのか? それにしても金出す気がねぇって……もしかして母親の事も明日の会見で話すつもりなのか? だったら、適当にあしらわれるはずだ。
…………くそが。全部ぶち壊しじゃねぇか。何もかもが全部……全部……
あぁ……ふざけんな。
≪……あのガキ! 怯えて言うこと聞いてたくせに! 一丁前に説教たれやがって≫
あぁ……うぜぇ……
≪絶対に目にもの見せてやる……絶対に……≫
あぁ……
≪やってやるからなぁぁ≫
うるせぇ。
≪ちょっとうるせぇよ≫
≪はっ、はぁ?≫
≪良いか相島。あいつら明日記者会見やるんだとよ? 結婚のな?≫
≪記者会見? けっこ……あぁ! だからかクソが! ふざけやがって≫
使えねぇ女だ。ただ、相島への怒り方が尋常じゃねぇ。こりゃ虐待やってる奴だわ。けど、上手い具合に誘導すれば……爪痕ぐらい残せるな。
≪だからうるせぇって。まぁ、脅すって事は無理だろうな。ただ、お望み通りやっちまう事は出来るだろうよ≫
≪あぁ?≫
≪なぁに、ちょっとぶん殴るだけなら、ちょっとサツのお世話になるだけで済むだろうよ≫
≪ほほぅ……それもそうだね。ホテルの前でずっと待ってやる≫
きた。
≪もちろん、あんたも話に乗るんだろ?≫
≪あぁ、もちろんだ≫
≪そうかい。明日が楽しみだ。また連絡するよ。待ってろよぉ? 笑ぇ美ぃ!!!≫
ツーツーツー
くくっ、バカかよ。やるのはてめえだけだ。怪しまれないように直前までは居てやるけど、その後はおさらばだ。
それにしても、あの女が何やろうとも……色々と腹の虫がおさまらねぇ。イラつくぞ? あぁ、イラつく。
「よいしょっと~」
ん? 蘭子? あぁ、こういう時は一発ヤルのが一番だ。
「なぁ、蘭子。収まんなくてよ? 良いだろ?」
「あんっ。颯さんったら。でもその前に1つ良い?」
「ん? なんだよ。早く入……」
「出来ちゃった」
「……でっ、出来た?」
「うん! ふふっ……はい!」
そう言いながら蘭子が目の前に差し出したのは……妊娠検査薬。そしてハッキリと映る1本の線。
「まっ、マジか……?」
「嬉しいなぁ。颯さんとの子どもだよ? まぁ、結婚の話もしてたし、あいつらを嘲笑うのには丁度良いタイミングだよね?」
……うっ嘘だろ? おいおいふざけんじゃねぇ……ふざけんじゃねぇよ……
「あっ……あぁ……」
「ふふっ。じゃあ、今日は優しくね?」
なんでこうなるんだよぉ!!!
次話も宜しくお願いします<(_ _)>




