ピンクブロンドショック。(ピンクブロンドは一人だからいいのであって…頼むからいつもの君でいてくれっ。男子生徒全員の願い)
フローリア・テルアリス公爵令嬢は、金髪碧眼の美しい令嬢だ。
婚約者である宰相子息で、ラルフ・カルテード公爵令息に恋をしていた。
ラルフは王立学園でも人気者だった。
黒髪碧眼の背の高くてとてもイイ男のラルフ。
そんな彼と過ごせるフローリアはとても幸せだった。
男らしくて、優しくていつも、フローリアの事を気遣ってくれるラルフ。
とても幸せだったのに…
ラルフの様子がだんだんとおかしくなった。
ピンクブロンドの髪の胸が大きい可愛らしい少女と一緒に居る事が多くなったのだ。
マリー・アッテス男爵令嬢。
いや、ラルフだけではない。何故かこの国のリスト王太子殿下や、騎士団長子息までもマリーの周りにいつもいて、嬉しそうに彼女と話をしているのだ。
何故?婚約者であるわたくしを放っておいて何故?
マリーと三人の男性達が楽しそうに話をしている中庭をなんとも言えない気持ちで見ていると、背後から声をかけられた。
「わたくしはリスト王太子殿下の婚約者、カルディーナ・エレンブルク。エレンブルク公爵家の娘よ。このまま黙っている訳にはいかないわ。貴方も一緒にいらっしゃい。」
カルディーナの後ろには、もう一人令嬢がいた。
「わたくしは、騎士団長子息ミード様の婚約者のユリアーネ・セイドですわ。」
二人とも公爵令嬢である。三人は中庭に出れば、まずカルディーナがリスト王太子殿下の前に出て叫んだ。
「わたくし達という婚約者がありながら、どういう事かしら?」
リスト王太子はフンと鼻で笑って、
「お前達のような高飛車な公爵令嬢より。マリーは癒されるのだ。この可愛いピンクブロンドの髪、いつもニコニコしていて、私達に甘えてくれる。なんて癒されるのであろう。」
騎士団長子息ミードも、
「王太子殿下の言われる通りだ。マリーは私達の春風だ。」
宰相子息であるラルフも深く頷く。
「フローリア。君といると私は疲れるのだよ。それに比べてマリーといるととても癒されるのだ。」
フローリアはショックだった。
そんなにわたくしって、疲れる女だったの?
マリーはにこやかに、
「皆さんの心がとても疲れていると言われるので。マリー、一生懸命、癒して差し上げているのですうーー。皆さん喜んでくれてとても嬉しいのですう。」
カルディーナがリスト王太子殿下を睨みつけて、
「わたくし達は王家に恥じぬように、公爵家に恥じぬように。貴族の子女らしい振る舞いをしてきました。でも、貴方達が求めるのは、マリーのような女性だったのですね。わかりましたわ。」
そう言うと、カルディーナがくるりと背を向ける。
フローリアとユリアーネが慌てて、カルディーナの後を追いかける。
「どういたしますの?」
カルディーナがオホホと笑って、
「わたくしに考えがありますの。協力して頂きたいわ。」
フローリアとユリアーネ、そしてカルディーナの計画は、思う所があったのか連絡網のように広まり学園中の女生徒達が協力を申し出たのであった。
3日後の事である。
「おはようございますうう。」
カルディーナが髪をピンクブロンドに染めて、胸を強調する制服を着て、登校してきた。
フローリアも同じく髪をピンクブロンドに染めて、
「カルディーナ様ぁ。おはようございますう。」
学園中の女生徒達が髪をピンクブロンドに染めて。胸を強調する制服を着て、登校してきたのである。
驚いたのが男子生徒達だった。
リスト王太子はカルディーナに向かって、
「お前…カルディーナか????」
「そうでぇす。春風のカルディーナでぇす。」
ラルフも口をあんぐりと開けて、
「フ、フローリア???」
「ラルフ様ぁ。今日もとても素敵ですう。フローリア、目がハートになっちゃいますう。」
ユリアーネも負けてはいない。
「ミード様ぁ。お胸を強調する制服を着てきましたぁ。どーですう?」
ミードは目をパチパチさせて、
「いやその…まずいのでは???」
教室中の女子生徒達が皆、同じような話し方で、男子生徒に話しかけていた。
マリーが怒って、
「何で皆、私の真似をするのぉ???どーしてえ?」
カルディーナが、にっこりと春風のように微笑んで、
「王太子殿下が癒されるっていうからぁ。カルディーナがんばっちゃいましたぁ。」
リスト王太子殿下は、カルディーナの前に行くと、両手をついていきなり土下座した。
「頼む。やめてくれ。カルディーナ。私が悪かった。気味が悪すぎる。いつもの君に戻ってくれ。」
ラルフもミードも同じく土下座して、
「私が悪かった。フローリア。」
「ユリアーネ、許してくれ。」
男子生徒達が何故か皆、土下座して、やめてくれーーと気持ち悪いと、叫んでいる。
カルディーナが目をウリウリさせて、
「だってぇ、癒されるのでしょう。カルディーナ、頑張っているのにぃ褒めてくれないのお??」
リスト王太子は首を振って、
「何で、マリーの事を癒されると思ったんだ??こんな薄気味悪い女をっーー。」
ラルフも、ミードも涙目になって、
「本当だ。何故だーーー?
「おかしすぎるっ??」
マリーは自らの首飾りを握り締めて、
「魅了にかかっていたはずなのに、なんでぇ???解けちゃったのお??」
カルディーナが、マリーを指さして、
「やはり、魅了をかけていたのねぇ。カルディーナオコオコ。」
フローリアが慌てて、
「先生を呼んできますっ。」
マリーは教師によって、騎士団へ引き渡された。
その件があってから、リスト王太子も、ラルフも、ミードも、それぞれの婚約者をものすごーーく、大切にした。
ラルフ様の心が戻ってきたわ。
「ラルフ様、愛しておりますわ。」
「私もだ。だが…二度と、ピンクブロンドにだけはしないでくれ。」
「ラルフ様が浮気をしたら、またピンクブロンドにしようかしら。」
「勘弁してくれーーー。」
リスト王太子殿下の提案によって、この国でピンクブロンドに髪を染める事を禁止する法案が提出され、すぐに承認された。
ピンクブロンドの薄気味悪い令嬢達が国に溢れては困ると、王宮の会議でリスト王太子殿下が熱弁を振るったらしい。
ラルフは二度と浮気はせず、フローリア一筋に愛を捧げたと言う。