表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

「待ちな!」

そういって、近づこうとする恰幅の良い男とウェイトレスの間に

少年のような冒険者が剣の柄を握りしめた状態で割り込んだ。


安堵の顔をうかべるウェイトレスを冒険者は力強い頷きで答える。

そして、恰幅の良い男に向き合うと


「それ以上の狼藉は許さない。」

「ろ・・ろうぜきぃ?何のことですか?」

「もはや、問答無用!」

剣を抜き襲い掛かろうとする冒険者の柄にそっと左手を載せ、ドレトルは制した。

「おいおい、一寸落ち着けって。」

「っぐ・・ぬっ・・・っく・・」

「落ち着けって・・・・カップーク。」

「はいはい。どうぞ。」

カップークと呼ばれた恰幅の良い男は、ドレトルに持っていたナイフを渡して席に戻っていった。

ドレトルは、受け取ったナイフを、ウェイトレスと冒険者、そして店の主に見えるように持ち上げて言った。


「これは、店のナイフだろ?良く見ろよ。

 ただ、ナイフを落としたから、新しいのと交換してほしいだけだぜ?」

「え・・?へ・・・?」

「あ、ほんとうだ・・・あ~!ごめんなさい。すぐ持ってきます!」

そう言われて、マジマジと見るウェイトレスと冒険者。

そして、自分の勘違いに気付いたウェイトレスは、急いで厨房の方へと向かった。


取り残された冒険者は、ばつの悪い顔をしつつ、

「そ、そうか。悪かったな。」

「ま、気にするな。

 あ、気にするんだったら、俺たちと飲もうぜ。

 んで、注文頼めるか?

 ほら、俺らの面は怖いじゃねーか。

 だから、替りに頼んでくれると助かるんだよ。

 な?

 いいだろ?

 よし、決まり!」

「え?いやいやいや。いやいやいや。あ、エール?ありがとう。

 ・・・じゃなくて!えぇ?肉注文?あ、はい。え?はい?」


そのまま流れで拉致られたのだった。


その一騒動を見ていた店内の客達は、被害がなさそうだと判断したのか

また、騒々しい雰囲気へと戻っていった。


「ねえねえ。冒険者さん。」

「ん?あ、ウェイトレスさんに絡んでた人」

「絡んでないですよぉ。」

「でしたね・・ごめんなさい。ウェイトレスさんが迫られているように見えたので」

「いえいえ。わたくし、カップークといいます。

 一応、これでも妻帯者で奥さん一筋なんですよ。

 だから、他の女の人を襲うことはないですからね!」

 

「あー。そうなんで・・・・・え!」


(あー。昨日は飲みすぎたな)

どうやって部屋まで戻ってきたのかも思い出せない程、飲みすぎたドレトルは

辛うじて自分の部屋であることを確認し、安堵していた。


(んだよ。裸で寝ちまったのか。服はどこだ?服は)

下半身から腹のあたりまでシーツで隠れている自分の体を確認し、首だけを動かして服を探す。

何故か体は何かの重しが載っているのか動かせる気がしない。


そして、その重しからはすーすーと寝息が聞こえてきた。

(猫でも拾ってきちまったか?・・猫にしてはなんかでかいな・・)


何気なく、シーツの中をのぞいてみる。


そこにはシーツに包まり、肌を密着して寝ている『あの少年冒険者』がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ