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好きな子に告白した後…

作者: gra天

「好きです、付き合ってください。」

そう170センチある自分よりも一回り小さい身長のクラスメイト、星見玲菜さんに向けて俺は告白する。


彼女はクラスの中で一番可愛いマドンナ的存在というわけでもなく、学年のなかで彼女にしたい子ランキングとかに載るような程の容姿を持つわけではないが、取る授業がほとんど同じでそこで、彼女のふとした笑顔や精一杯努力をする行動力を目の当たりにして、気づけば目で追っていた。

そう意識するようになっても告白はしなかったのだが、昨日の昼休みにクラスの友達と話といる時に聞いてしまったのだ。「星見ってかわいいよなー。ちょっと狙おうかなー。」と言っていた。その時俺はどきっとしてすごく動揺したが、あまり声が震えないようにいいんじゃね?と返した。実はものすごく顔にでていたのかもしれないが、友達は気づいていないようだったためそのままその会話は終わった。


そんなちょっとしたきっかけ等を思い出しながら、星見さんの返事を待っているとようやく星見さんが口を開く。

「…もしかして知らない?」

「……何が?」

「私に彼氏いるの」

頭を鈍器で殴られたような衝撃が襲った。自分の顔は多分驚愕に満ちていたのだろう。すこし申し訳なさそうな顔をして、

「…隣のクラスの遠藤君と付き合ってるの、遠藤君と仲良いから知ってると思ってたんだけど。」

「そっかぁ」

体が脱力して今にもベッドに入って布団を被ってしまいたい羞恥心と、情けないところを見せたくない自分の見栄っ張りなとこが激しく戦い合っているような感情になってそのままの立っている状態で固まっていると、

「だから返事はごめんなさい」

そう言って彼女は長い後ろ髪をたなびかせて教室を出ていった。

ぱたぱたという靴音が聞こえなくなって、静かになった教室内を眺めてみると自分しか残っていないことに気づいた。自分が使っている席にドサッと座って天井を眺めてみる。

振られた、その事実しかなく、告白する前に考えた振られた後の授業気まずくなるなーとか恋人になったら最近できたイオンに行きたいなーとかそんな妄想はすべて遥か彼方に飛んでいき、振られたことにしか意識がいかなかった。

そう天井をみながら放心していると、

「…―い、最終下刻時間だぞー」

扉に肘を付きながらこちらに向けて声を掛けていると思われる。恰幅のいい先生が居た。うちのクラスの担任の先生だなと理解した後、時計に目を向けると針は6時30分を指していた。

もう家に帰らないと行けないなと思い、自分の席から立ち上がりリュックサックを背負い教室を出るために先生の居る扉に向かうと、先生が話しかけてくる。

「今度からは予鈴で帰れよー」

そんなこちらの事情なんて知らない軽い声音で言うと、教室の鍵を締めて教室から離れて職員室がある方へ帰っていく。

「帰るか…」

トコトコと歩き出し、下駄箱で靴を履き替えて自転車置場に向かい、自転車に乗る。高校の正門がある方に自転車を向けてペダルを漕いで自分の家に向かう。そこから家について、母親が作った晩ご飯を食べて自分の部屋に入り、椅子に座る。明日の予習を始めた。

「look forward to は楽しみにしているっていう熟語だから、っと」

スラスラとノートに英文を訳した日本語訳の文をノートに書き終わると、パタンとノートを閉じる。

「寝るか」

学習中に聞いていたカフェに流れているような心地良い音楽を止めて、動画サイトを閉じてスマートフォンの電源を切りベッドに向かう。

顔から布団に覆いかぶさり、ベッドに乗った後に足が乗るように調節する。

そうやって寝る準備ができ目を閉じた瞬間に振られた時のことを強く思い出してしまう。

もしや自分が授業中に見ていたことがバレていてあまりいい感情を持っていなかったんじゃないかとか、遠藤がなんで自分に彼女の存在を明かさなかったんだろうとか考えていると思考の波に飲み込まれたようになっていると、気づいたら眠っていた。


パッと目が覚めた。目覚ましが鳴らなかったことに疑問を持ちながら目覚まし時計に目を向けてみると、7時を指していた。このまま寝ても遅刻するだけだと思いベッドから降りて立ち上がり、部屋から出てリビングに向かう。リビングには既に起きていた母がキッチンに立っていた。リビングに入って来た俺に気づいたのか、

「あら、おはようってどうしたのその目の下。なんか白くなってるわよ。」

そう言われ、目の下を指ですくってみると、白い乾燥している小さな塊が指の腹に乗っていた。

「…昨日見たアニメが感動的なシーンでさぁ」

と何故か泣いていた理由を誤魔化してリビングにある椅子に座る。昨日寝ている時に泣いていたんだなぁと感慨にふけっていると声がかかる。

「お茶かコーヒーどっちがいいー?」

「コーヒーで」

「はいはい」

それ以上の追求をされなかったことに感謝しつつ、コポコポと鳴り出したコーヒーメーカーの耳心地の良い音を聞きつつ物思いにふける。

「はい、コーヒーできたよ。牛乳はいる?」

「いや、今日はブラックでいいや。」

そう言って、コップの取っ手を掴み口に運ぶ。

「苦っ」

思ったより苦くて少し顔をしかめてしまう。やっぱりブラックで飲むんじゃなくてカフェ・オ・レにしないとなと心に刻みながら、残りのコーヒーをすべて飲み干して、学校に行く準備のために部屋に戻った。


1限目の10分前程に登校して時間割を見て移動教室じゃないことを確認していると、前の席にいる友達が話しかけてきた。

「なぁなぁ、星見さん実は彼氏いたらしいぜ。知らんかったなー。」

「…へえー、本人に聞いた?」

「いや、帰り道にコンビニ寄ったら男と二人でいてさ。」

「なる」

昨日の今日でそんな話題を出されて少し焦ったものの、意外と冷静な対応ができたことに驚いた。しかし、あまりこの話を続けたくないなと思って話を変える。

「そういや、中間テストの範囲って配られたっけ」

「んーまだじゃない?今日ぐらいに配りそう」

「確かにあるな」

話題が反れたことにホッとしつつ、この教科は全く勉強していないだの、予習やってきてないから見して等、他愛のない世間話に切り替えて1限目が始まるのを待っていた。

1限目が始まるチャイムがなった時に携帯のバイブレーションが足を揺らす。焦りながら先生にばれないように電源をつけバイブレーションを切った後、メッセージアプリの通知を見て、すぐに電源を落として鞄に入れて、授業に集中するために椅子に座り直した。


「放課後図書室で勉強しない?」


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