表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/60

コバルトとヨウ素9 心の声が漏れたら

 教室の掃除当番が回ってきた。小学校、中学校、高校と上がる度に掃除が雑になっていく気がする。さっと掃き掃除をして机を戻してお終いだ。蔵森さんは掃除当番ではない月で支度して帰る姿を確認した。寒くなったからコートを着て白いマフラーをグルグルに巻き付けていた。あれから話す機会がさっぱり無い。授業で指された時に発する声を聞き、昼食の時マスクを外した顔を盗み見る。そんな毎日だ。

と、帰ったはずの蔵森さんが教室に戻ってきた。もう、今日は見納めだと思ってたからつい心の声が漏れた。


「どうした?」 


彼女はびっくりした目で俺を見上げてから机の中から電子辞書を取り出し逃げるように帰っていった。話しかけちゃいけなかっただろうか。話しかけるつもりは無かったんだ。つい声が漏れただけで。距離が遠くなったのを実感して落ち込んだ。


 その日の帰りのバスの中で彼女のSNSの更新通知を開く。


『きょうだい全員中耳炎。』プロフィールが更新されていた。


 中耳炎だから俺の事を無視した訳じゃないということかと勝手に解釈してみるけど、こっち見たんだよな〜明らかに聞こえてたよな〜ともう1人の俺が囁いたりして。ぐちゃぐちゃな気分で夕飯を済ませ自分の部屋で課題を片付けているとSNSの通知音が響いた。


『文集に関係無い話ですみません』


蔵森さんからだった。思わず既読をつけてしまったけどなんて返信したら良いか分からない。固まってると


『あの、私の彼氏だと噂が流れてしまうかもしれません。ごめんなさい。』


彼氏。。。なにがどうしていったいどこから。驚きのあまり息をするのも返信するのも出来ずに固まっていると、


『迷惑かけてしまってごめんなさい。なんとかします。SNSでは説明難しいです。今度話させてください』


とごめんなさい感たっぷりの彼女のSNSが再び入った。


『分かった。科学部の部室で放課後話そう。』


そう返すのが精一杯で。


『はい。助かります』


の彼女の返信に既読をつけてお仕舞いにしてしまった。

そして俺はまた彼女に近寄っていってしまったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ