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番外編 拿捕(平原目線)

 冬は暗くなるのが早い。レポートの資料集めに図書館に行き暗くなる前にと戻ってくると、玄関に見覚えのない靴があった。今日は日曜日だが、父は休日出勤だと言っていた。母のお客だろうか。男物の靴が2つ。女物が2つ。笑い声がリビングから聞こえてくる。とりあえず挨拶をしてから自部屋に行くかとリビングのドアを開けた。  


 まず母の隣に蟹ちゃんの姿をみつけた。戸村、ヨシコさん、奏音がいる。 


 やばい。まずそう思った。このまま気づかなかった振りをして外に逃げようとドアを閉めようとした時、顔面に母のスリッパが当たった。


「逃げようとしてるわよ。捕まえなさい!」


「「ラジャー」」


母と戸村と蟹ちゃんの結束が何故かできており、俺はあっけなく捕まった。


「確かに逃げようとはしたけど、縛ることはなくない?」


俺は自宅のリビングにて両手、両足を手拭いで縛られ座らされていた。


「このぐらいしないと全く、この子は。さて、私はこれからご馳走を作るべく買い物に行ってくるから、誰かついてくる?」


「「「おともしまーす。」」」


「よし。何にしましょうかね。」



 そうして奏音と俺の2人が残された。

 

ずっと現実逃避をしていたからとても気まずい。彼女の方を見ることも出来ずに下を向いていると、


「あの、その、手拭いを解いてはいけないと言われておりまして、ごめんなさい。」


奏音が謝ってきた。


「謝るのは俺の方だよ。連絡返さなくてごめん。時間が欲しかったんだ。奏音に会うと正しい判断ができるか自信無かったし。」


「正しい判断とはどんな?」


そう奏音に聞かれてそこで言葉に詰まった。伊藤がピアノを弾けるようになって戻ってきたのであれば、伊藤と奏音がまたペアを組むかも知れず、それを俺は良かったねとは言えないという。奏音と付き合ったままでいられるのかという。だから別れるのかとも思いきれず答えも出せず逃げていた。


「また、頭の中でお喋りを。健さん、嫌な事は嫌って言って下さい。」


ハッとして顔を上げて奏音を見ると涙目になっていた。


「何も言わないで連絡断つとか辞めて下さい。」



「うん。ごめん。」


「優くんはずっと弟みたいなものでした。今回の連絡も、郵送でチケットとともに来たもので常日頃からやりとりしてるわけでは無いんです。」


「うん。別に疑ってるわけじゃなくて、どちらかというと俺が間男みたいに、2人が離れた隙に入り込んだ邪魔者のような。」


伊藤と奏音の物語の中に脇役の俺が入り込んでヒロインを奪っていた。そんな気がした。それを告げると奏音はびっくりしたように目を見開いた。


「どうして、そんなふうに、思ってしまったの?」




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