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君の呼び方

いつも通り平原目線です。

「あのですね、たけるさん?」


最近蔵森さんは俺の事を名前で呼ぶようになった。なんだかまだ慣れなくて呼ばれる度に動揺してしまう。今も危うくコーヒーを吹き出しそうになった。


「コーヒー熱っ」


カップをそっと置く。しかもコーヒーが熱い。メガネが曇ったではないか。


 ここは俺の大学近くの駅構内のコーヒーチェーン店だ。蔵森さんの大学の方が1駅先なので、よくここで待ち合わせている。


「大丈夫ですか?健さん意外と猫舌なんですね。いや、それより、この間、気づいちゃったんですけど、戸村さん、健さんのことタケちゃんって呼んでませんか?」


はい?高1からそう呼ばれてたのに何だろう?転校のせいでその辺薄れたんだろうか?


「あ、今、また頭の中だけで、返答しましたね。そういうところよくあるって戸村さんが言ってました。もう、元カノからの引き継ぎかと思いましたよ。その説明。想像するに『蔵森さんもそう呼びたかったの?びっくり』ですかね。」


うっ違うけど、これなんて返せば良いの?


「タケちゃん。タケちゃん。なんかしっくりこないんです。でも、健さん呼びだとなんか元カノ戸村さんに負けてるみたいで。」


あのね、ここだけ聞いたら俺の元カノ、戸村になっちゃうよ。


「いや、別に戸村は元カノではないわけだから勝ち負けの問題はないかと。」


と思うのだ。


「じゃあ、私のこと、蔵森さん呼びやめて下さい。」


ひっじゃあ、なんと呼べと。俺にはのんちゃん呼びは無理だ。動揺を隠すために眼鏡をあげコーヒーを飲む。


奏音かのんって呼んでください。」


「いきなりの呼び捨てはハードルが高すぎです。ご勘弁願います。」


あまりのことに手を振りながら全身で拒否すると、


「何も敬語にならなくても。」


蔵森さんが悲しそうだ。


「奏音さんとか奏音ちゃんとか頑張ってもそれが精一杯かと。」


蔵森さんを悲しませるのは本意ではない。俺が努力すれば済む話だ。準備期間を設けようかと提案を。


「奏音一択です。奏音さんはよそよそしいし、奏音ちゃんは友達みたい。彼氏らしく奏音呼びで。だって健さん、戸村さんは苗字呼び捨てじゃないですか。奏音呼びなら勝った気がします。」


彼氏。その言葉に酔っているとまた変な対抗心をみせている。なら、思いっきりよく、清水の舞台から飛び降ります。


「じゃあ、善処します。かのん。」


言ってみて蔵森さんを見ると真っ赤な顔をして口を押さえて俺を凝視している。


「かのん?大丈夫?」


何か悪かっただろうか。イントネーションの問題か?首をかしげて、彼女の前で手を振ってみる。


「おーい。もしもし?かのん?」


すると蔵森さんはがばっとテーブルに突っ伏して、


「いきなりの連呼。破壊力半端ない。」


と弱々しく呟いた。なんだ、お互い様だ。


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