おばけちゃん、がっこうに行く
ひだまり童話館さま『開館6周年記念祭』参加作品です。
おはなしにイラストがたっぷり出てきます。
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よろしくお願いします。
ふくろうもあくびをする夜ふけになると、ぱちっと窓のあかりがつきました。
立派なおばけになるためのおべんきょうをする『おばけ学校』です。
一年生のおばけクラスには、おばけ先生と五匹のかわいいおばけがいます。
まんまるおばけのまるすけ、ほそながおばけのほそやまさん、ふたごおばけのふーくんとたーくん、そして、ちいさなおばけのおばけちゃんです。
「おばけ先生、おそようございます!」
「みなさん、おそようどろん」
夜のあいさつをしたらさっそく立派なおばけになるためのおべんきょうがはじまります。
「今から、おばけらしくふわりふわり浮かぶどろん」
「はーい!」
「お月さまの光をあびながら、『うかべよ うかべ どろろんろん』とうたうどろん」
「はーい!」
まんまるおばけのまるすけがお月さまの光をあびると、ぺっかりと光りました。
「うかべよ うかべ どろろんろん」
まるすけがうたうと、ふわりふわりと浮かびました。
みんなもお月さまの光をあびようとしたら、くもさんとかくれんぼをはじめてしまいました。
これではお月さまの光をあびることができません。
「これはこまったどろん」
おばけ先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいものがあったどろん」
おばけ先生はひらめきました。
きらきら光る粉のはいったビンをもってきました。
「これは、ようせいさんにもらったふわふわ粉どろん。これを体にふりかけるとふわふわ浮かぶどろん」
おばけ先生がきらきらの粉をふーくんとたーくんにふりかけると、二匹はふわふわと浮かびました。
ほそやまさんとおばけちゃんも先生の前にならんだときです。
「ふ、ふっ、ふえっくしょん――!」
大きなくしゃみで、ふわふわ粉のビンがおばけ先生の上でさかさまになってしまいました。
おばけ先生は、ふわふわふわと夜空にとんでいってしまいました。
「おばけ先生がいなくなっちゃった!」
五匹のおばけたちがぽかんとしていると声がきこえました。
「おばけ先生はどうしたんだもんめ?」
「あっ、ろくろくび先生!」
ようかい『ろくろ首』の六代目のろくろくび先生は、立派なおばけを育てるおばけ学校に感動して、おばけ学校の先生をしています。
ほそやまさんは、ろくろくび先生におばけ先生がとんでいってしまったことを言いました。
これではふわふわ粉をふりかけることができません。
「これはこまったんだもんめ」
ろくろくび先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたんだもんめ」
ろくろくび先生はひらめきました。
まだ浮かんでいないほそやまさんとおばけちゃんを手まねきしました。
「おばけたちは、たましいが抜けるくらいびっくりするとふわわあと浮かぶんだもんめ」
ほそやまさんとおばけちゃんが、どきどきしながらろくろくび先生の前にならびます。
「そおーれ――――!」
ろくろくび先生の首がひゅるるるるとのびていきます。
「ひゃあーー!」
「きゃあーー!」
たましいが抜けるくらいびっくりしたほそやまさんは、ふわわあと浮かびました。
たましいが抜けるくらいびっくりしたおばけちゃんは、かちんこちんにこおってしまいました。
ろくろくび先生がおばけ先生を空の上でつかまえてもどってきたので、まるすけはおばけちゃんがこおってしまったことを言いました。
これでは、授業のつづきができません。
「これはこまったどろん」
「これはこまったんだもんめ」
おばけ先生とろくろくび先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたんだもんめ」
ろくろくび先生はひらめきました。
「かちんこちんおばけは、温泉であたたまったらとけるんだもんめ」
かちんこちんのおばけちゃんとみんなで、学校のうらのおばけ温泉にちゃぽぽんとつかります。
「はあ〜ばけらく、ばけらく」
ばけらくなおばけ温泉で、おばけちゃんはすっかりとけましたが、おばけちゃんだけ浮かぶことができません。
これではおばけらしくありません。
「これはこまったどろん」
「これはこまったんだもんめ」
おばけ先生とろくろくび先生がうでを組んでかんがえます。
「ああ、いいことをおもいついたどろん」
おばけ先生はひらめきました。
おばけ先生がおばけ巻物をしゅるりとひろげます。
「秘伝のおばけレシピがのっているどろん」
ろくろくび先生も横からのぞいて、ふんふんうなずいています。
「おばけまんじゅうを食べると心も体もふわわんと空にまいあがるどろん」
みんなでおばけまんじゅうを作ります。
ぐるぐる、こねこね、まるめるどろん。
ぐるぐる、こねこね、まるめるどろん。
大きなボールにたっぷり生地を入れるどろん。
お月さまの光をぺっかり浴びた月見草をきざんでどろん。
ちょっぴり残ったふわふわ粉もぱらりどろん。
ろくろくび先生は首をひゅるるるとのばして見せるんだもんめ。
最後にたっぷりふくらし粉をいれますどろん。
ぐるぐる、こねこね、まるめるどろん。
ぐるぐる、こねこね、まるめるどろん。
「あとはおばけ温泉で蒸すだけどろん」
おばけ温泉に蒸されたおばけまんじゅうから、ふわんふわん、ゆらんゆらん、いいにおいがただよってきます。
ふかふか、ほかほかのおばけまんじゅうをおばけちゃんがひと口ぱっくん。
「ふわわわ〜おいし〜い」
おばけまんじゅうを食べたおばけちゃんは、おいしくて夜空にふわわんとまいあがってしまいます。
「ふわわわ〜おいしいどろ〜ん」
「ふわわわ〜おいしいんだもんめ〜」
おばけ先生もろくろくび先生もまるすけ、ほそやまさん、それにふーくんとたーくんもおばけまんじゅうを食べるとふわわんと夜空にまいあがっていきました。
一年生のおばけたちは、みんなおばけらしく浮かぶことができました。
もう困ったことはありません。
みんなでかえりの会をはじめます。
「みなさん、朝ふかししないようにねるどろん」
「はーい! おばけ先生、ろくろくび先生、さようなら」
「さようならどろん」
「さようならだもんめ」
今日のおばけ学校はこれでおしまいです。
みなさん、朝ふかししないようにおやすみなさい――。
おしまいどろん