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キャラクリ、ステ振り、レベル上げ

初めまして。

暇つぶしにでもなれましたら幸いです。


※残酷な描写あり












「こんばんは、殿方におかれましてはますますお盛んな事で」

後宮の門の前に女が立っていた。

男達は何事か女が口を開いているのを気に留めず門に飛びつき、一人が女へ襲いかかる。

その男に、女は茶色と金の太い筒を向けた。

瞬間



------パアアアン!





けたたましい音が爆ぜる。開かない門にとりついていた男が振り向けば、見えたのは刃の軌跡だけ。

ごとんと頭が下に落ちて、体は少しばかりゆらゆらとした後フラリと後ろに倒れていった。

慌てて剣を出した次の1人は、肋骨の隙間にぞぶりと片刃の刀が刺さる。

真ん中よりの左側。くずおれてしばらく「ア、は、ア」と丸まって、それからことんと動かなくなった。


一人二人と倒れ伏し、暫くもたたぬ間に、門前に立つは女一人のみ。

辺には十程の身体が散らかっていた。

柄の長い巨大な刀を懐から出した紙でぬぐい、茶色い筒に掃除棒を押し込みながら、女は顔を顰めた。


「ったくヨォ。おハーブ生えますわ」




▲▲▲


生まれて飛び出てこのかた、中々利発に育った女の子。体も丈夫で秀麗な面立ちと授かりすぎでは?なスペックを持った幼女様。

まぁイケメンの父と美女の母からひり出された約束されし成功の顔面。

アコやアコやと呼ばれ続けて、スッカリ彼女は自分の名前をアコちゃんだと思っていた頃のこと。事件は起る。


彼女が四歳で、ちいちゃな女の子用に誂えられたコレまたちいちゃな薙刀をブンブン振っていたときのこと。

何をどうしたか石突が、女の子の鳩尾にキレイにドスンと入ってしまったのである。

潰れたカエルの声を上げ、女の子はゲロを吐いてぶっ倒れた。わあ自損事故。

侍医を呼ぶ声だとか女官の悲鳴とか俄に屋敷がざわつくけれど、しかし本人はそれどころじゃない。ゲロの海に沈んでるけどそれどころじゃねえ。


アイェエエエエ!?オレ、オンナノコ!?ホワイ!?


女官の悲鳴をバックミュージックにして、追いゲロと共に幼女様は昏倒あそばされたのだった。まさにスクリーム。とってもロック。





▲▲▲





ううん、と起れば一二単のトンデモ美女が寄り添っていた。イヤちげーよこの美女か〜ちゃんじゃんか!

幼女はぬるりと床から抜け出した。美女は子持ちとは思えぬ若い顔で「あら」と言って本を置く。

何やら読み物をしていたらしい。そんな仕草もとってもエレガント。

しかし、いやナニ、この美女からオッパイもらってたのか......幼女様は何ともいえない心持ちになった。

いえ何せ前世の自分とおんなじくらいの年頃のオンナノコが母親となると奇妙な心地がするもので。

娘の心情いざ知らず、かーちゃんは娘の起床に気づくとたおやかに微笑む。


「おはよう(しろ) どこか悪いところはあるかしら?」

手入れの行き届いた指が幼女様の真ん中分けのまあるいおでこをを撫でた。

幼女は(そうそう、(しろ)って名前になったんだわ)と知的な顔をしてやってからちょっと黙って、それから口を開いた。


「おはようございます、母上。石づきがはらに入り、戻してしまいましたが、どこもわるくないです」

まるっこくて可愛い声が自分から出て、(しろ)はウワ、違和感ヤベ……と思ったけれど「よかったわ」とコロコロ笑うかーちゃんはとってもキュートだから直ぐにご機嫌になった。

可愛い女の子は可愛いなぁ。

暫く横に並んでキャッキャとお話をしていたけれど、(しろ)はハッとかーちゃんを振り仰いだ。


「母上」

「なあに」

「良いのですか、わたくしのところになぞ。お身体に障ります」


そう、今、母は妊娠している。お腹は丸々と膨らみ立ち上がることすら憚られるのでは無かろうか。

白は母の悪阻が酷く、食事を受け付けていないのを知っていた。

男だった白からすると妊娠は解らないことばかり多過ぎて、ハラハラとした気持ちになる。


「優しい子ね。母はあなたに会いに来たのです。この子と一緒にね」

そうしてポンポンと腹を撫でるのを見て、ウムムと眉根を寄せた。

まあ嫡子だもんな我、かーちゃんもすっ飛んでくるわ……。(説明しよう!白はチートアイテム前世の記憶を手に入れた時に、自分の現状もドカンと理解したのだ。

なななんと嫡子なのである!え、オンナノコなのに!?そう、女の子だけど!昔の日本風だけど男子相続じゃないのだ!)


「ありがとうございます母上!」

「ええ」

「触っても良いですか」

「もちろんよ」

「……。……?あ〜蹴っ、た!?」

「まだまだ生まれてくるのは先だけれど、姉様がわかるのかしらね」

ちいちゃく悲鳴をあげて喜ぶ娘をかーちゃんはコロコロと笑っていた。




さてここで、(しろ)が二度目の人生4年間ちょいで得た知識を披露しよう。

ここは日ノ本ではなく大和の国、地理も日本とは少し違い、比較的大きなここ本島に帝がおわし、その東に細々と島が浮かんでいる。

文明レベルはまだまだで、弓矢と刀と長い槍で戦をしているようだ。

細工物の出来が良く、オイルマネーならぬゴールドマネーで外貨を得ている。

実際白の薙刀にも、金の透かし彫りが細工されていた。幼女にこんなん持たせんな。

政治は朝廷が行う中央集権だ。

海を挟んで西の大陸には内陸に封国、海辺に渤国、南方に暖国。これらは中華風味の国々で、直系皇族が宰相だとかについている事が多い。家族経営かな?

そして遥か西にはどうやらローマやヨーロッパっぽい国があるようだ。

よっぽどの事がない限り生きているうちに交流は持てないかもしれないけれど。まだまだ渤国への旅に命懸けだ。



前世の記憶を取り戻して以降、白(しろ)は勉学、更にいえば外つ国の話をよく教師にねだった。

彼は前世で銃が好きだった。

それもまだまだ黎明期のマスケットや、金色の装飾が施された短筒が大好物。

画像を眺めてドキドキ微笑みとろけるような溜息を溢す。金がなく食費を削りたければフリントロックの構造図を眺めればお腹いっぱい胸一杯。

ガンオタというには種類の幅(ストライクゾーン)が狭すぎる。それに攻城兵器や軍の制服まで興味があったのだからどちらかというとミリオタか。


どうやら彼は、こういった銃に人間の試行錯誤を見るのが好きなようで、作られた経緯を調べてはあれそれ想像を膨らませ、痺れるような快感を溜息に乗せていた。

よく「ヤロウの恍惚のヤンデレポーズはちょっと」「美少女になって出直して」「きもっ」と甘栗(むきぐりタイプ)を投げられるなどした大好評のポーズである。

彼が今世、銃刀法もないこの世界で、銃を持ちたいと思いたった。

別にそれで何かしたいわけではないのだ、持ちたい、握りたい、本物を!硝煙をフッてやりてぇ!


大和の軍記物は銃どころか火薬の記載すらなく、馬に乗り甲冑を着て弓を背負い刀を携え槍の長さを競っていた。

国内には未だ火薬の概念もないかもしれない。当たり前だが火薬がなければ銃はできない。

まあガワだけならできるけど。

とにかく国内を諦めた白は、海外に目を向けた。どうにも大陸の国は中華風味のようだし、ややもすると黒色火薬の開発ぐらいは済んでいるのかもしれないと。


しかし現実は非情だった。


「まー……軍事機密だしな……」


軍の装備についてというのは軍事機密に関わる。だからその軍がどういった装備を持っているかはそうそう国外に流出させない。

だから実際の戦の記録を見るしか大陸の装備を調べられなかったのだが、大和国は大陸と戦争をしたことが無かった。海って偉大だね……戦いまで防ぐのだもの……。

よって資料がない。つらい。いいことだけど白には辛かった。かわいそうだね。


白は落ち込んだ。ちょうど母上の出産が重なって屋敷は忙しくなり、白は手伝ってもこけるか邪魔をする始末で更に部屋に引きこもった。

しかし三日すれば飽きた。そしてモニョモニョ床に寝っ転がって、プクプクほっぺを敷物に押し付けながら決意した。何せ暇だったので。



ーーーーよし、銃が最高に似合うカッチョいい女考えよーーーーー



硯箱と手習の反故を引っ張り出すと、フンフン〜♪と鼻歌を流しながら肘をついてうつ伏せで理想像を書いてゆく。つまり“俺の考えた銃の似合う最強の女”である。


ーーーー髪は長い方がカッチョいいよな、やっぱおっぱいはデッカくして……銃がなくても強いのも夢があるな。あと、銃口から登る硝煙をフッってやるのは紅をつけて、……あとピアスつけて、あと、あと……


ふと、白は前世の妹がカッコいいと騒いでいたキャラクターを思い出した。なんでも明るく馬鹿みたいに見えるのに実は頭が良くて暗い過去も見せないひたむきさがあり、何より一番の特徴はーーーーー


「漢気と、ふとした時のべらんめぇ口調っと」

白はチマチマ文字を書いて矢印をつけた。


ウンウンと満足そうにうなづいて、白は墨を乾かすためにピラピラと反故を泳がせた。


「よし。俺はこれになる!」



▲▲▲


部屋に引き籠る娘に何を思ったか、父(あまり会わない)は何でか長巻を白に贈ってきた。

寄越された手紙には、軍記物に興味がある様だからと書いてあった。娘に何をしたらいいか分からなくてとりあえず物を与える親かな?白の顔はクシャッとなった。同情するなら鍛治士をくれ。

有難く受け取ったは良いが、長巻は大太刀の柄を長くして使いやすくした刀。つまり、とても長い。今の幼女様では到底持てないのだった。しょうもな。これには白も「どうしろって……?」と壁を見詰めるなどした。特に何も思い浮かばなかった。

しかしこの贈り物に奮起した人間がいた。白のかーちゃんである。

彼女は夫からの白へのプレゼントを大層喜んで、白に武道の師をつけたのだ。

そして弟を出産して身軽になってからは、乳飲み子の弟を連れて白の稽古を見学してくるのだ。

白は素振り千回とかそういうバカみたいな脳筋訓練をこなさねばならなくなった。漢はオンナコドモのまえで弱っちいところは見せてはいけない……らしい、白によると。


訓練の後は汗の乾かぬうちに、ヒイヒイ言いながら井戸から水を引っ張って冷や水を被って体を拭く。白曰く、イイオンナは臭くっちゃイカンとのこと。


通常の女人は香を焚き染めているのだけど、白はどうにもこれが苦手でならなかった。ダウニーの柔軟剤を嫌がる父親の気持ち……。

それでも礼儀として自分に香りが上がってこない袴にはやっておいたので白的には頑張っているらしい。


あとは長くて美しい髪と、エッチな紅い唇を手に入れたいと、白は屋敷一番の美女におねだりした。

そう、かーちゃんである。

白のかーちゃんは射干玉の黒髪に艶々と濡れたような光沢を引き、肌は白く紅とのコントラストが美しいひとだった。

白はかーちゃんにストレートに言ってみた。

「わたくしも、母上のような美しい人になりたいです」


かーちゃんはニッコリと笑った。


そして次の日から、礼儀指導が始まった。違う、違う、そうじゃない。

しかしやっぱり漢はカッコつけてナンボ精神が働き、白は粛粛と授業を受けるしか無かった。英才教育ェ


その代わり、ご褒美にとつげ櫛と米糠の袋を貰えたので母と共に髪を梳る日々が到来した。

俺、今、近づいてる!!理想に!!その気持ちだけが白を保たせていた。よくやるよ。


そうやってお屋敷の中で磨かれる事数年、更に宮仕えを始めて数年。併せて12年の年月が流れーーーーーーーーー



▲▲▲


16歳になった白は、数年前から宮様(帝の親族)支えに抜擢されていた。御名前を翠という。


白は今、船上にいた。

潮を含んだ風とカモメの声、中々揺れのある船の甲板は陽の光を白っぽく照り返す。長閑な空気が長旅を終える船を労わるように流れていた。


白は日傘を開いて、甲板に出たいと外に出たご主人様を入れてやる。

「宮様、今回の航海も無事に済んで何よりでございました」

「ええ、本当に。船員達には後で万頭を差し入れましょう。八つにしてもらいたいわ」

「それはようございます」


甲板に出ていた船員や、ほかの従者が2人を盗み見てホウと息をついた。

射干玉の黒髪を艶々と光らせ、肌こそ護衛らしく焼けているけれど、落ち着いた赤の紅との色合いは秀麗に面立ちを際立たせていた。

まさに宮様のお隣に立つに相応しいと誰もが羨むその美貌。


そして本人は


鍛冶屋に作らせた、弾の入っていない短筒を袴の中に忍ばせて

(待ってな愛しの黒色火薬!硝石でもいい!あーかわいこちゃんたち、早く引き金を引かせてくれ!!!!)

火薬への熱いラブコールを胸の内に踊らせ、熱っぽい視線を霞む大陸に向けていたーーーー






もしかして白はちょっと変態かも

誤字脱字はサイレント修正するのでおいといて下さい。

読んでくれてありがとうございます。

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