光射す部屋で ミーナ
使用お題:「光」「パズル」「きれいな物語」
あぁ、もう朝だ。
朝日を浴びるとメラトニンという幸せを感じるホルモンが分泌されるんだ。
うん、僕は幸せだよ。
朝日を浴びたから?
いやいや、君が、僕の夢を叶えてくれたから。
僕ははじめての体験だから、思ったより時間がかかったな。
本当だよ。本当にはじめてだって。
だから、痛かったんじゃないかなって心配だった。
シーツに付いた血は、君が僕に真心を捧げてくれた証。
美しいと思う。
まさか会ってすぐにこんなことになるなんて、ね。
君に出会うまで、僕は「SNSなんて偽りの幸せアピールの場で、きれいな物語なんて一つもない」と思っていた。
君に出会えたおかげで、SNSへの印象は大きく変化した。
はじめて見た時から、君のツイートは僕の心に深く刺さったよ。
気の弱い君は幼い頃からいじめられっ子で、若い女と再婚した父親は追い払うように君を東京の大学に進学させて。
大学でも周りに溶け込めなかった君は、一人暮らしの部屋で引きこもり同然の生活。
外とつながる唯一の手段、SNSで、君は声にならない叫びを上げ続けていた。
ハッシュタグ 『#消えたい』
嘘じゃないことは、君のミルフィーユのような手首が雄弁に語る。
まさか、こんなに理想の女の子に巡り会えるなんて思ってもみなかった。
君の長年の願望と僕の密かな欲望は、ぴたりと嵌まった。パズルのピースのように。
それにしても、君をバスルームに運ぶ時、華奢な君が意外と重くて驚いたよ。
意識のあるものは自分の体勢を保とうと無意識にバランスを取るから、あまり重さを感じないらしいけど、死体になると重いっていうのは本当なんだね。
一人じゃ寂しいよね。
すぐに仲間を見つけよう。
次はきっともっと手際よくできると思う。
僕は満ち足りた思いで、君の生首にはじめてのキスをした。