【夢】8月1日、神獣郷へようこそ!
8月1日って言ったら選ばれし子供になるのが夢だったよな……ということで、番外編ssを書きました。
全て二人称(あなた表記)なので台詞なども自分の理想のパートナーを思い浮かべて読んでみてください。
これは神獣郷に行けるなら、を原作者が書く夢小説です。
これ以降、読者向けに「あなた」の冒険として書くものは全てタイトルに【夢】を付けます。
ふと、なにかがズレたような気がした。
そして、なにかが繋がったような気がした。
世界を変える『それ』が起きたそのときあなたは眠っていたけれど、その出来事は確実にあなたの世界を変える。
カタン、と。
あなたがとても大事にしているぬいぐるみが動いた。
神獣郷オンライン……その中のパートナーと同じ姿をしたそれが。そして、枕元に置かれているスマホが一人でに画面を光らせ、あなたの寝顔を明るく照らす。
――もうすぐあえるよ。
メッセージウィンドゥに浮かび上がった言葉は、そのまま画面が暗くなるのと同時に消えていった。内緒話でもするように。
朝、あなたは起きてまず最初に確認するスマホを手に取ります。
画面の中に映っているのはもうお馴染みになったパートナー。朝ごはんを求める彼らに電子化した朝ごはんを与え、出勤する前に、あるいは休日だからと短時間でできることをするため彼らに癒されてから棚に置かれたぬいぐるみを取り出す。スマホの中に入れたまま出かけるのも良いが、やはり触れ合いたいとスマホをぬいぐるみにかざして……しかし、うんともすんとも言わない。
チップを移動せずともデータをぬいぐるみに移してホログラム起動はできるようになっているはずだ。なのに今日は上手くいかない。あなたはその事実に驚き、もし故障だったらどうしよう! と慌てるでしょう。
そして万が一のために己のパートナーがバグやらで大変なことになっていないか確認するために、スマホ上ですいすいと操作していきますが、異常は特になさそうです。なら、故障はぬいぐるみのほうなのか? と考えたあなたはリアライズ用のぬいぐるみを手元に引き寄せようとして……スマホを誤って操作しました。
なにもないところに向かってリアライズ用の操作をしてしまったのです。
けれど、通常ならなにも起こらないはずの動作で異変が起こります。
あなたの目の前で光ったスマホから、あなたのはじまりの一匹であるパートナーがひょっこりと顔を出しました。
しばし手の中の端末から顔を出したパートナーの姿に呆然としたあなたは、驚愕します。そして、驚いているうちにパートナーは端末の中に沈んで、パートナーを象徴する属性の光が端末から溢れ出しました。
それは火の粉か、水滴か、電気か、粉雪か、あるいは風か、あたたかい光や柔らかな月光などでした。くるくると属性を表す色の粒子が渦を描いてあなたの部屋の扉や窓にポトンと落ちるように吸い込まれて行くと、そこに不思議な紋章が浮かび上がります。
いえ、それは不思議などではなく、見たことのある紋章でした。
それはあなたが愛してやまないゲームの中で自身の身体に刻まれた『共存者の証』と同じものです。
その紋章はあなたを導くように光ります。
あなたはその光に惹かれて、その扉を。あるいは窓に手を触れます。
もしかしたら!
そんな、普段ならありえないと一笑に伏すような希望と期待をその胸に抱いて。
紋章の光に触れると、あなたの身体は少しばかり熱を持ちました。
予感がしたのでしょう。あなたはゲーム内で紋章の刻まれた位置を確認します。すると……もちろん、そこには光る紋章がありました。寝ている間のイタズラにしてはできすぎです。
目の前の扉。あるいは窓はまだ光っています。
そして、端末の中の相棒はどこにもいません。スマホの中には、目の前にあるものと同じ扉、あるいは窓のようなものがデフォルメされて描かれていました。
ごくりとあなたは喉を鳴らすでしょう。
そして、ゆっくりとドアノブに手をかけ、あるいは窓を開くために指をかけます。
そして、開けばそこには愛してやまないパートナーの姿がありました。
お互いにどれほど見つめあったでしょうか。それは数秒か、あるいは数分だったのかは分かりません。しかし、あなたはしゃがんで腕を広げましたし、パートナーはその腕の中に喜んで飛び込んでくるでしょう。
本物の感触です。
あたたかい命の感触です。
本当にリアライズしたあなたの友達は端末の文字盤を利用してあなたに話しかけるでしょう。そう、かつて手紙で感謝を伝えてきたときのように。
――魔王さまが倒れて、いくつかの属性エネルギーが君の世界に渡って行っちゃったんだ!
テレビをつければ、日本のどこかでは異様に太陽が照りつけ、しかし別のところでは雪が降り、豪雨が振り、雷が常に鳴り響き、と異常気象が報道されています。
パートナーによれば、属性エネルギーの結晶となった宝石が日本のあちこちに落ちて、そのままその場所でエネルギーの暴走を起こしているのだそうです。
――だから、こっちの世界と行き来をして、君の世界に逃げた属性エネルギーを回収してほしい。そのために、太陽の神獣が、特別仲の良い共存者とそのパートナーに繋がりをつけてくれたんだ! やってくれるよね? 僕の友達!
あなたは頷くでしょう。それが最愛のパートナーの言葉だったからです。
自分が太陽の神獣にまで認められた仲の良さだという事実に気をよくしたのもあったでしょう。
――さあ、この手を取って。
ゲームだと思っていた世界との繋がりは、あなたに喜びを運びました。
パートナーの手を取ります。そして、あなたはまず自分の格好を『いつもの』ものに変えるため、扉を、あるいは窓をくぐってもうひとつの家に『帰る』ことになるでしょう。
そう、あなたの理想の神獣郷へ。
――ようこそ僕らの神獣郷へ!
8月1日。
あなたはその数字から連想するものとは別の、しかし念願のデジタルワールドへ一歩を踏み出した!