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8月24日 藤白ケイカ誕生祭2022『姉妹達の誕生パーティ計画!』

※ 内容的にはアカツキのリアライズ後くらいだけど、本編内の8月24日までにリアライズしていたかどうかはちょっと怪しいので、キャラクターの誕生日祝い特有の謎時空ということにしておいてください。


※ 視点移動多め。


「アカツキくん、姉さんには内緒……ですよ?」

「ク!」


 口元に人差し指をあて、少女はふっと微笑んだ。


 ◇


「おねえ! ねえ、お姉! おねが〜い! 一緒に行って!!」

「うっ、う〜ん……」


 今、私はとても困っていた。


 なんと四女の弓月(ゆづき)が一緒におでかけしてほしいと言うのだ。しかも映画を見に。


 うん、まだ小学生の弓月だけで行かせるわけにもいかないよね。

 両親は今日に限って予定があるとかなんとか言って朝から出かけているし……一番上のお姉ちゃんは私なので、当然私に妹はおねだりしてくる。


 今日は確かに予定がない。ないけど……。


「おねえ!」

「ん〜、どうせ行くなら飛鳥(あすか)清楓(さやか)も行く?」


 弓月が行きたいとおねだりしているのは、ずっと続いている女児アニメの劇場版。そう、あの『星空☆ドロップス』の映画だ。


 主人公のスリャーシャちゃんが目を覚ましたら突然月の国にいて、熱心に星織のドレスを作っている彼女に対して月の住民に歓迎されるけど帰してくれなくて……みたいな話らしい。


 攫われちゃったスリャーシャちゃんとビィナが離れ離れになりながらもお互いに再会するため、それぞれの視点で動き出すことになるのは確定だ。絶対泣くやつ。


『星ドロ』は私自身も好きだけれど、姉妹みんな好きだ。だから飛鳥と清楓も誘ってみたのだが……。


「姉さん、ごめんなさい。わたしはご遠慮しますね」

「そうね〜、お姉ちゃんが行くなら私もアカツキ君とお留守番していようかしら?」


 どっちにも断られた!? 

 若干ショックを受けつつ「アカツキと?」と、肩に陣取っているニワトリ姿のアカツキに視線を向ける。すると、彼はこくんと頷いて私を横目で見てきた。本人もお留守番するつもりらしい。


「ほら、アカツキ君はまだ高価なグッズでしょう? 映画館となると……薄暗くて少し心配じゃない。攫われちゃったら、とか。お姉ちゃんうっかりしてるんだもの……」


 うっ。

 グサリと清楓の言葉が頭に刺さった気がする。


「そうですよ姉さん。いつも注意しているといっても、そもそもそういう事態にならないようにリスクマネジメントしておかないと。ただでさえ短慮なんだから」


 ぐはっ。

 あのあの飛鳥ちゃん??? 辛辣(しんらつ)すぎない??? お姉ちゃんめっちゃ傷つくんだが??? 


「おねえ、あたしと二人で行こ!」

「泣いてない……泣いてなんかないからね……お姉ちゃんに任せて。一番いい席取ってみせるからね」

「やったー!!」


 妹二人の姉離れが著しい。とても悲しい。

 しかし、まあ……今日は神獣郷も夜にログインしようかなと思っていたから、昼間は出掛けていてもいい。今日は8月24日。予定がないわけではないけれど……夏休み中だし、映画館も混んでいたらいけない。早めにホロスマホで電子予約してしまわないと。


 素早く席の予約を済ませて、軽く出かける準備を整える。

 ポシェットにちゃんとハンカチやティッシュを入れたか。ホロスマホや、本人から離れると自動的に鳴り始める防犯ブザーはとりつけたか。そんな確認をしてから弓月と手を繋ぐ。


「そ、それじゃあ行ってくるね。アカツキ、飛鳥、清楓。お留守番よろしく!」

「任せてください!」

「一緒にアカツキ君と待ってるわ〜」


 そして、二人に手を振って私と弓月は映画館を目指して無人自動バスの停留所に向かった。


 ◇


「行きましたね」

「行ったわね〜」


 妹二人は揃ってほくそ笑む。

 それから次女である飛鳥がアカツキを抱き上げ、家に入っていった。


「姉さん、誕生日なのに。そのことに触れられなくてちょっとショック受けてましたね」

「そうね〜、お姉ちゃんのお誕生日を忘れるはずないのに。おかしな話だわ」

「ま、言い出さないってことは受け入れちゃってるんでしょうね。あんな顔するならちゃんと言い出してほしかったものですけど。なんでも受け入れるんだから、まったく」

「そこがお姉ちゃんのいいところだわ?」


 二人はそれぞれ自分の部屋から段ボール箱を取り出すと、リビングルームに運び込み中身を取り出していく。降ろしてもらったアカツキがてちてちと歩き、その中身を見て首を傾げる。平たい板のようなものは、彼にとって見たことがないものだった。


 板には『姉さん名場面集』という文字がテープで貼られている。

 ご丁寧にケイカ達の戦闘場面を写真に撮り、そのままプリントしたかのように板の表面は彩られている。


 それは、いわゆるレトロブームで再びホログラム式で楽しめるよう改良されたDVDと呼ばれるものだった。プレイヤー代わりにパソコンに読み込ませ、テーブルなどに映像投影をすれば、その領域内でホログラムの動画が見られるというものだ。


 つまり、この妹二人は。

 いや。弓月も含めた妹達三人は、ケイカの配信から切り抜いた動画を編集し、名場面集と称してお誕生日会で大公開しようとしているのである。


 将来黒歴史になるかもしれないあれやそれ。真剣にゲームを遊んでいるだけだが、一人だからこそ言えるようなクサいセリフや正義感溢れる行動。その全てを「お姉ちゃんの活躍は何度見ても素敵だから」という理由で家族全員で視聴しようという企みである。


 本人にとっては完全なる公開処刑でも、祝う側が悪意なくしようとしていることなのだ。恐らくケイカもことの次第を知れば涙を流しながら喜ぶことだろう。彼女は内心どう思っていてもお姉ちゃんムーブを欠かさない。そういう人間である。


「なんでも受け入れちゃうのは短所でもありますよ。清楓、アカツキと一緒に飾りつけ準備をお願いします」

「く!」


 自分の名前が出たので翼を広げ、手を挙げるように返事をしたアカツキに二人の妹達は頬を緩め、会話を続ける。昨夜。充電中のアカツキにはこの企画を言って聞かせていたので、アカツキも仕掛け人側である。


「飛鳥お姉ちゃんは?」

「わたしはお菓子作り担当ですよ。いつも姉さんがやってくれてることを、全部サプライズでやってやろうじゃないですか」

「うふふ、喜んでくれるといいわね」

「ですね」

「あ、あと、どうせなら〜……ねえ、飛鳥お姉ちゃん。ここにタルトを頼まない?」

「……ふふ、いいですね。姉さんもきっと泣いて喜びますよこれは」


 うふふ、うふふと明るく笑いながら準備を進める二人の行動は、完全なる姉妹愛によるものだった。


 アカツキはそれに軽く引いていたが、二人とも気づかなかったようだ。

 アカツキが喋ることができたのなら、こう言ったに違いない。


「やっぱり姉妹なんだな」と。


 ◇


「ただいま〜」

「おねえ! 星ドロをね! あのね! 絶対おうちでも観られるようにして!!」

「もっちろ〜ん! 上映終了したあと、円盤出たら買わないとね」


 映画を楽しんで数時間。

 映画館で泣きまくった目元をハンカチを濡らして冷やしてから帰宅した。

 やばい。弓月より私のほうが泣いてたんだけど。いやでも、いわゆる大きなお友達のほうが泣いてる率高かったから別によくない??? あれは泣く。スリャーシャちゃんとビィナの再会した瞬間に涙腺が決壊したけど私は無事です。


「ん?」


 しかし、いつまで経っても「おかえり」の声がない。

 それに、なんだかすごく甘い香りがするような……? あ、お腹すいた。


「おねえ、こっちこっち!」

「え、え?」


 映画館では私が手を引いて歩いていた弓月が、今度は私の手を引いて、靴を素早く脱いでから家の中に入る。


 進むごとに甘い香りは強くなり、まさかと思って扉を開いた時だった。


 軽快なパーンッ! という音とともに色のついたテープが私の近くに舞う。

 そこには、用事があるとか言っていたのになぜか帰宅した両親と、妹二人がクラッカーを持って待っていた。


 奥のテーブルにはいろんな種類のケーキやタルト、それにクッキーにマカロンにと、お菓子に彩られている。軽食として用意されているものにも目をやれば、それは全て私の好物で……。


「姉さん!」

「お姉ちゃん!」

「ケイカちゃん」

「ケイカ」

「くー!!」


 私の目の前で。


「おねえ!」


 そして、真横から。


 いっせいに声をあげられた「お誕生日おめでとう!」の言葉。

 それになぜだか、涙が滲んだ。


「あ、やば……映画で涙腺緩んでるんだから勘弁してよ……」


 そう、きっとこれは映画でたくさん泣いたから、まだ涙腺がしっかりしてないだけ。私、こんなに涙もろくないはずなのに!! 


「お、お母さん、お父さん。二人とも用事があるんじゃなかったの?」

「サプライズの準備をしていただけよ」

「そうそう」

「そっか……」


 なんだ、忘れられてたわけじゃなかったんだ。

 勝手に私の誕生日なんて誰も覚えてないんだなって思って、ちょっとナイーブになってただけ。


 そっか。


「聞いてください姉さん! ほらこれ! このタルトは神獣郷コラボのケーキ屋さんで買ったやつですよ! リリィさんのお店の再現イチゴタルト!」


 そっかぁ。


「こっちのショートケーキは飛鳥お姉ちゃんが作ったのよ〜」

「くー!」

「そうそう、この辺りの飾り付けはアカツキ君がやったんだものね〜」

「く!」


 びしっと翼を上げてドヤ顔をするアカツキを抱き上げ、そのもふもふの中に顔を埋める。




 ……よかった。



 そして、満開の笑みを浮かべて顔を上げた。


「みんな、ありがとう!! 大好き!!」


 なお、このときの私は黒歴史の大公開ショー秒読みだったことは微塵も知らなかった。このあと無事SAN値直葬しました。


 なんで……???

#藤白ケイカ誕生祭2022


というタグにてTwitter投稿させていただきました作品です。他にも同タグによるファンアートなどもいただいております。


昨年の「#藤白ケイカ誕生祭2021」のほうでもたくさんのお祝いのお言葉。そしてファンアートをいただきました。


どれも可愛く、素敵で、愛に溢れていた素晴らしいものでしたので、ご興味がございましたら上記のタグをTwitter検索してみてくださいな!!


また、よければ同タグ使用によるお誕生日祝いのツイートなどをしていただけると嬉しいです。この小説の投稿以降は、ケイカちゃんのアカウントにて巡回&お返事をさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のは本人が居ない場所でファンが推しの誕生日を祝う時にやるべきって事かな? でもアカツキ達の誕生日となったらなったでこれと似たような事やりかねない信頼が何故かケイカちゃんには存在しているん…
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