聖獣図鑑『ミズチ』
【ミズチ】
属性 雨
生息地 王蛇の水源
始まりの街アルカンシエルより東に位置する大森林。『王蛇の水源』に生息している水蛇型の聖獣。通常個体は平均として、全長約十メートル程度。大型個体の『王蛇』の称号を持つ聖獣は通常個体よりも大きく、特に最奥部に位置する『王蛇の滝壺』に生息する個体は十五メートルから二十メートル程度の体高を持つとされている。
水色の鱗と頭部についたヒレ耳、枝分かれした黄金のツノが特徴的で、『王蛇』個体の目元には赤色の隈取りのような模様が広がっている。
聖獣核である宝玉は透き通った水色で、額にはめ込むようにして存在する。ミズチにひとたび認められるようなことがあれば、お辞儀をするようにして宝玉を差し出すことだろう。
ミズチの鱗は常に湿り気を帯びており、その鱗ひとつひとつが僅かながらにも水を清らかなものにする性質を持つという。『ミズチが十年住んだ水場はどんなに汚染された場所でも清らかな水になる』という伝説はこの性質から推測されたものだと思われる。しかしミズチの持つ浄化作用は弱く、ミズチ自身に特に毒耐性などが見られないため、好んで不浄の地に住み着くことは稀であると言える。
ミズチの鱗は湿気を保つためのものであるが、急激な環境変化や毒には弱く、浄化しようにも次々と毒を受けるような環境に晒されてしまうとその浄化作用も上手く働かず、苦痛を伴って我を忘れてしまうという事態になりかねない。そのため、ミズチの住む清らかな地ではポイ捨て被害などがないよう、清掃活動に精を出す人間も存在する。
体内には水を溜め込む水嚢があり、ここに溜め込んだ水に霊力を染み渡らせ、水に混じった霊力によって水の動きの指向性を得ているとされている。そのため、ミズチの吐き出した水は体内から排出された後も直線的な動き以外にある程度の操作が可能である。
この水流操作が熟練した個体は水を自由自在に操り、曲芸師のように水を操り続けることが可能。
また、ミズチ種は全体的に他種族に友好的であり、友好の証に水流を利用したショーやパフォーマンスを行うなどといった行動に出たという報告もされている。
基本的に水を操り雨を好む種族だが、ときおり突然変異体が現れることもある。突然変異体は別属性の種族へと進化する可能性を秘めているとされており、出会うことは稀だ。
突然変異体の報告にあった限りでは『水嚢の代わりに油嚢』になったミズチ。『表面の鱗がゴム状』になったミズチなどである。
前者のミズチはどういうわけか、水から精製しているはずの水嚢から冷たい油を吐き出すという行動を取っている。水嚢で水が油に変異してしまうという極めて稀な特性を持っており、己の住んでいた地が山火事で焼失してしまうという事件も起こりうるため、発見次第保護が推奨されている。
恐らく水嚢に注がれる霊力がなんらかの変質をし、水を油に変化させているのだろう。要調査。(補遺1参照)
後者の鱗がゴム状になったミズチは強い雷属性耐性と、帯電性を得ており、雷雨の際には長い体を垂直に掲げ、そのツノを避雷針として落雷を積極的に受けようとする性質がある。どうやら水嚢が外から供給された電気をためる器官に変化しているようだ。また、このミズチは泳ぎにも長けており、積極的に川の上流や滝を登る試みを行う姿が目撃されている。
どちらの変異ミズチも進化先の属性がほぼ固定されており、それぞれの特質的な部分を伸ばすように育成していくと属性が雨から『晴』や『雷』に変化していく。(補遺2、補遺3参照)
補遺1
通常ミズチの幼生個体が突然油を吐き出すようになったという報告が上がり、調査をしたところ、育成段階で『サン・フラワー』を好んで食べていたことが判明。サン・フラワーの種からは確かに油が抽出されるが、それだけで変異する条件が満たされているかが不明なため、植物系を食糧に与える際には注意するようにと、未確定の情報としてレベル1の『注意喚起情報』を流布している。
補遺2
水嚢が油嚢に変化したミズチはそのまま育てていくと、進化で晴属性の『サラマンドラ』や『火災龍』へと進化していくようだ。己の体内にためた油を咥内の牙を打ち鳴らしながら吐き出すことで点火し、自在に操りだしたのがこの種の進化先である。また、ときおり点火の術が上手くいかず、油のまま吐き出してしまう個体も存在している。
補遺3
鱗がゴム状になり、帯電質になったミズチは何度も滝登りを行い、空中へと躍り出ることで、ある日突然空を飛ぶ雷を纏う龍『破月龍』や『激雷龍』『雷龍』へと進化する。これらは滝を登った蛇や鯉が龍になるという伝説があることから、古来より存在する進化方法であると言える。
また、この滝登りによる龍種への進化は通常のミズチでも見られる方法で、その場合ミズチは水の化身である『黒龍』や変わり種だと『ウンディーネ』などに進化していく。ミズチがこの方法で神獣へと至ればその名は『タカオカミノカミ』となり、多くの人々に恵みの雨をもたらすだろう。
Q.進化二段階目なのに幼生体ってなによ?
A.進化したての個体もしくはミズチ自身が繁殖をした際に卵から生まれる個体。この場合、野生のミズチの親が死別してしまった際に生態調査をする団体が子供を保護・育成をした際の報告内容である。
Q.えっ、聖獣に死ってあるの!?
A.野生の聖獣にはある。人と契約した聖獣はその共存者と寿命をともにするという……。
つまりプレイヤーと契約した聖獣は死なない(運営からの良心)
なお、共存者のほうから契約解除された場合は聖獣との寿命リンクも解除される。ユールセレーゼはこれ。