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壱希のクラス、2年A組の人数は25人。

成績優秀者のクラスだと聞いている。

そのうち、女子は壱希を入れて2人。

なぜ女子が少ないかというと、近くに山吹学園と同レベルの、由緒ある全寮制の女子校があるためだ。


御令嬢達の親からすれば、共学の全寮制の学園で、大切な娘が万が一にも男子生徒と過ちを犯す危険を回避でき、なおかつ令嬢教育に強い女子校の方が魅力的なのだろう。


なので、山吹学園はほとんど男子校のような状態だが、それは令息達の親からしても、同じような理由で都合がいいところではあるようだ。


そして山吹学園は、中等部からのエスカレーター式となっている。

クラス分けはシビアに成績分けになっていることから、ほとんどメンバーが変わることなく6年間を過ごすことになる。


そんな中、高等部のこんな時期外れの編入生。

しかも女子。

興味を引かない理由はなく、クラスメイトの好奇心に満ちた視線が壱希に突き刺さる。



(慣れてるつもりだったけど…こう大勢に一気に注目されるのは初めてだな)



明らかにキラキラとした視線を受け、戸惑う。

この類の関心を向けられるのは初めてだった。

好奇の目であることには違いないが、そこに嫌なものはほとんど含まれていない気がする。

想像していない反応だった。



けれど。



(ーーーーーっ!?)



ざわり、と。

肌が泡立った。


好意的な中に混じる、鋭い視線。

探るような、測るような、暴く者の目だ。


(これは……あいつ?)



視線の主はすぐにわかった。

教室の窓側、一番後ろの席。

ゆるやかな癖のある黒髪。長目の前髪、黒縁眼鏡の男子生徒。


壱希が「気づいた」ことに気づいたのか、ふ、と鋭い空気が消える。



(何だったんだ…?)



嘘みたいに軽くなる空気。

件の男子生徒はもう壱希から興味を失ったのか、窓の外を眺めていた。


「神屋の席はあそこだ。花枝」

「はい」



青木の言葉に、花枝と呼ばれた生徒が手を挙げる。

このクラスのもう一人の女子生徒だった。

その後ろの席……そしてあの男子生徒の隣の席が空いていた。そこが壱希の席らしい。

何という偶然か。


促され、ゆっくりと席につく。



「いろいろとわからないこともあるだろうから、みんなでなるべく教えてやってくれ。ホームルームは以上」



あっさりした青木の締めと鐘の音が重なる。

こうして、壱希の学園生活がスタートしたのだった。



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