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徒然戸棚草子  作者: 木村薫
2/26

 1段目  十二国記シリーズ  小野不由美 著

 



 まずは何にしようかと迷いましたが、せっかくだから昨年後半から小説界隈一番の話題から。せっかくだから、このビッグウェーブに乗っかろうというね、下衆い大人になろうかという、ね。……。


 ネタバレはしないようにします。

 が、登場人物と簡単な設定は出ます。ご容赦。


 多分、ここで読んでる方は中を読んでなくてもご存知でしょう。エピソード0に当たる『魔性の子』から始まる、中華風大河ファンタジーです。詳しくは割愛。色々と紹介文があるので、そちらでどうぞ。

 で、個人的に特に大きな特徴としては、おもな3つのシリーズの主人公は日本から舞台である異世界に飛ばされる、という事。

 今なら、よくある設定。だけど、このシリーズ1992年に出されてるんです。これ、本当に大きな特徴だと思う。

まず最初に出版された時、10代少女対象の文庫だったのから異質でした。同じ文庫からは理想の王子キャラと出会う…とか男の子複数に囲まれる…とか(今で言う逆ハーレムかな?)、夢見る少女の願望を貪欲に小説にしたような話が大半でしたから。だから、異世界に飛ばされて苦労して泥だらけに這いずり回るような主人公の話なんて、本当に異質だったんです。今でこそ、異世界トリップはゴマンとありますがね、その最初です。しかも、忠実に異世界ですから。最近の異世界は必ず主人公を守る役とかいるし、現代の知識で異世界に革命を起こすとかありますけどね、そんな優しい約束なんて、ありゃしませんから。何故か。書き手に優しい話ですからね。主人公の周りが優しいという事は、大きな人間関係の軋轢がない。文化に革命を起こすなら、自分の知っている知識で話書けますから。これは自分の体験から言える事。まあ、それは置いといて。

 とにかく、書き手が容赦なく真正面に異世界に取り組んでいるからの、重量感。だからこそ、読んでて心がガツンガツン殴られる。だからこその、読み終わった途端の幸福感。それはすごいです。 


 キャラもよい!

 十二の国に王様がいて、王様の半身である霊獣麒麟が側に寄り添う。もうその光景だけで萌える。どの主人公も強く、真っ直ぐ、美しい。

だからこその魅力。名セリフも多いしね。非常にキャラが活き活きと躍動する。それは綿密な設定と作者の視点の鋭さ、センスの良さ。すごい。この作品に二次創作が多いのも、そういう事だと思う。


 あとは、そうだな……漢字ばっかり、とか。

 苦手意識がある人はもちろん、大抵の人はびっくりするほど、文章に対しての圧倒的な漢字の割合高すぎる。日本語じゃなくて漢文か?と思うほどの量。だから本を開いて瞬間で閉じる人もいると思う。けど、そこは「こういう世界」と勇気を持って読み進むのだ!進むしかない。その先に何があるかって?素晴らしい世界ですよ(笑)

 冗談はさておき。漢字が苦手でも、絵や記号として読む手もある。自分な脳内で問題無く世界が再現されて楽しめたらいいんだから。気楽に読み進めて欲しい。十二国記が読めると、本格中国小説が楽に読めるはず。学生なら、三国志とか水滸伝は読んでおこうかという人もいると思う。その最初の作品に充分なりうると思う。個人的には、封神演義ありと思う。

 十二国記から、読書の幅が広がるのは間違いないです。(偉そうになってしまった……すみません)

 それでも苦手なら、『東亰異聞』という作品で小野不由美先生の作風を知って欲しい。ミステリーかと思いきや、予想外の斜め上の結末になります。ゾワリとして、「自分は何を今まで読んでたんだろう」と読み返すはずです。それはエピソード0に当たる『魔性の子』の感覚に近いと思う。お試しあれ。


 まぁとにかく、良いのである(笑)。

あと、いずれ将来は電子媒体での出版がメインになると思いますが、やっぱりこれは紙媒体で読みたい作品だと思う。

 両方試すと分かるのですが、紙で読むと「残りのページ数」を無意識に察して読み手はワクワクしている面があると思う。「あぁ、そろそろ最後の局面に入りそう」とか、「もうすぐ終わっちゃう〜! あと少し楽しみたい〜」とか。ないかな?

 十二国記は、その点裏切る作品。

いい意味で、起承転結の転が怒涛の嵐。読み手に「これでもか!」と揺さぶりをかけます。電子だと残りのページがわからないから(簡単に残りの分量が分かる機能はありますが、読書中にわざわざ見ないんだな、これが)不安しかないのです。良くも、悪くも、これが最良のスパイスだと思うんですよ、私は。


 最後に言いたいのは、長く休載が続いた作品を見事にまとめ上げた作者の小野不由美先生は凄い!と言う事。最初に読んだ時は学生だった自分が母親になってて、自分の子供達と「新刊出るーー!」と騒いで楽しめたのは、本当に凄い。楽しい体験をさせてもらいました。この場をお借りして、いいます!ありがとうございます! 楽しかったです!

 まだ読んでない方、迷ってる方。安心してください。2020年に新刊の短編集が出るそうですよ。まだ楽しめます!このビッグウェーブに乗っかれますから!

 

 

 

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