第28話 屋敷への侵入者
謎の襲撃があった後、なんとか隙を見て安全だと思う家の中に全員避難出来た。
その後、会長の提案で一旦会長の部屋に全員集まる事になった。
「もう……なんなん!?せっかく楽しんでいたのに台無しや!」
まず口を開いたのは有栖。明らかに怒りを含んだ声だ。
「その事を嘆くことより、今は何故相手は範私達の場所が分かって、その上私達の索敵範囲外の敵をどうするかを考えるべきだ。今の私達では遠距離の敵を倒す事は出来ない」
対照的に冷静に現状を分析しているのは会長。有栖をたしなめるように話を続ける。
「全員死ななかっただけでも幸運だったよ。まあ……紀行殿には大変な役回りをしてもらって本当にすまない」
会長が深々と頭を下げる。少しばかり、自分の力無さを悔いるようにも見えた。
「気にするなって、俺は死なないんだから!それより何か対策は無いのか?」
いたたまれなくなった俺はすぐに話題を変えようとした。が、この案はすぐに後悔する事になった。
「……すまない、私には思いつかなかった。外から姿を見せないようにするくらいしか……もっと賢い者なら他にも色々思いついたのだろうが……」
会長の顔が一段と暗くなり、それと比例して場の空気も重くなる。
「い、いや、会長は悪くないさ。仕方無いことだ」
しかし、そんな俺のちゃちな慰めで空気が変わる事は無く、沈黙が場を支配する。
数分して、その沈黙を破ったのは有栖だった。
「……!紀行君、能力者や!もうこの屋敷の1階まで来とる!」
「何?それは本当か?にわかに信じられないが……」
会長が何かを言う前に、部屋のドアが勢いよく開かれる。
「お嬢様!侵入者です!既に屋敷の1階まで侵入しています!」
入ってきたのはこの屋敷のメイドだった。ここまで走ってきたのであろう、かなり息が乱れている。
「警護はどうした!殺されたのか!」
会長は先程まで意気消沈していたとは思えない、冷静で堂々とした対応を見せる。これが支配者階級の家に生まれた者の持つスキルなのか、果たして会長が特別なのか。
「い、いえ、警護は無事です。ですが誰も侵入者を見ていないと無線で」
「全ての入り口に警備を配置している筈だ。それに襲撃があってからより一層警戒を強めた筈だぞ?」
「会長、もしかして屋敷の中に元々いたんじゃないか?それならもしかして」
俺は俺に考えられる方法を口に出す。しかし、俺の考えはすぐに否定された。
「紀行殿、その可能性はとても低いだろう。まず1つは、もし潜んでいるのならこんな場面を狙わず夜の寝静まった時間を狙う筈だ。2つ目に、たとえこの家がどんなに広くても小川の能力に引っかからないとは思えない」
「そうか……確かに有栖の能力ならこの家をほぼカバー出来るからな」
有栖の能力は半径30mが範囲で、その範囲内なら能力者の位置まで把握出来る。その為この家に能力者が隠れるのは困難だ。
「有栖、能力者の位置は?」
「……2階に上がってまっすぐこっち向かってきてる。まるでウチらの居場所がバレているみたいや」
会長の部屋は2階の1番奥にある。他の部屋に目もくれず、こちらにまっすぐ来ているなら既に場所がバレていると考えてもおかしくない。
「……分かった。とりあえず君は他の応援を呼んできてくれ。決して侵入者に会うんじゃないぞ」
「了解しました!」
会長がメイドに命令すると、すぐにそのまま走り去っていった。ここ来るまでは一本道では無いので多分能力者に会わずに行けるだろう。問題は俺達だ。
「それで……俺達は戦う他ないか」
「場所がバレているならそれしか無いだろうな。せめて相手の能力さえ分かればいいのだが」
会長は愛用の竹刀を持って軽く振る。感覚を確かめているのだろう。
「……私は問題無い。紀行殿は?」
「俺も大丈夫だ。めっちゃ不安だけどな。架純と有栖は隠れておけ」
「了解や!」
有栖が元気よく返事をすると、すぐにベッドの下に身を隠す。ゴキブリかよ、とツッコミたくなったのは仕方ない事だと思う。
「紀行……」
架純が俺の服の裾を掴む。
「大丈夫だ、絶対勝ってみせる」
「……紀行、耳貸して」
少し身を屈めて架純の背丈に合わせる。
「……何が起きても、私が紀行を守るから」
そう言うとニコッと笑って、そのままベッドの下へと潜っていった。
「……ありがとな、架純」
いつもあの笑顔を見ると、不安とかマイナスの感情がどこかへ吹き飛んでしまう。本当に架純に守られているようだ。
「よし、行くぞ会長!」
「ああ、悪は私の手で葬り去ってやる」
廊下から足音が聞こえてくる。焦っていて人数を聞くのを忘れていたが、どうやら1人のようだ。
「……来るぞ」
ドアが開かれる。と、同時に会長が動き出す。
「会長!?」
「先手必勝!何かされては遅いのだ!」
ドアが完全に開かれる前にその竹刀が振り下ろされる。会長の能力は【剣士】。その振り下ろされる竹刀に触れるだけでも死に至るのだが___
「あらあら、血気盛んね。『私に攻撃を当てるな』」
「なっ……!?」
間違いなく会長の剣は侵入者を斬った筈だった。しかし、当たる寸前に軌道を変え、竹刀は逸れていった。
「あなたみたいな子は嫌いじゃないわよ?でも、いきなり斬り掛かるなんて私に対する敬意が足りないわ。『跪きなさい』」
その言葉を理解する前に、身体が動く。いや、動いてしまう。
「なっ……!?なんだこれは!?」
「会長!くっ……動けない」
俺と会長は侵入者の言う通り、その場に跪き、そのまま動けなくなってしまう。
「それでいいのよ。しっかり私を讃えなさい」
侵入者はつかつかとこちらの方に歩いてくる。その容姿を簡潔に表すと……金髪ロリ巨乳ツインテールだ。声や挙動も幼く感じるが、まるで王のような覇気を感じる。
「あなたが【ゾンビ】の能力者ね。もう素性はバレているから答える必要も無いわ」
「どうして……お前はここを知って……」
その答えは間髪入れずに返ってくる。
「それは私が王だからよ。王は全てを見通すのよ」
「王……だと……」
俺達の居場所を突き止め、俺達の身体を強制的に動かしている。この少女の能力は一体なんなのか、正体が全く掴めない。
「ふふ、ナンバーズと聞いたから少しは警戒して来たのだけれど……なんだかあっさり終わって残念ね。少しは楽しませてくれるのかと思ったけど」
少女は俺の顔を覗き込み、笑顔を浮かべる。しかしその笑顔は架純と違って、悪魔のような笑顔だ。
「さよなら、ゾンビ君。『この場で死になさい』」
先週は本当に休んでしまい本当にすみませんでした……。そのお詫びと、みなさまの応援もあって1日早く更新します!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




