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俺、ゾンビの能力で最強になります。  作者: 雨流 丁亜
第二章 俺、能力者と出会います。
23/30

第23話 お泊まり

「みんな……準備は出来たか」

「……もちろん」

「ウチもバッチリや」


  架純、有栖に確認を取り、俺は大きな門を開ける。


  そう、俺達を今から待っているのは____


「よく来たな、みんな。せめて私の家にいる間はゆっくりしてもらおう」


  実験などのゴタゴタから解放される、楽園であった。


「ふぅ〜! ウチのワクワクが止まらへん!」

「……私も」


  2人共ここ最近で1番の笑顔だ。かくいう俺も自然とニヤけてる気がする。


「とりあえず荷物を置いてくるといい。部屋はこっちだ。あ、紀行殿は先に荷物を持って道場に行ってくれ」

「え、俺だけ?」

「ああ、行けば分かる」

「わ、分かった……じゃあみんな、また後でな」


  何故俺だけ別行動なのか疑問に思ったが、特に気にすることなく3人に別れを告げ道場へと向かった。


 ◇


「たのも〜」


  重々しい道場の扉を開ける。もちろん、そこに待っていたのはいつ見ても元気そうなファンキーなおじいちゃん。


「待ってたYO! 紀行ボーイ!」


  道場全体に声が響き渡る。あの爺さんのどこにそんなパワーが秘められているのか聞いてみたい。


「あの……お爺さん、何故俺だけ道場に?俺も荷物を置いてきたいのですが……」

「それは問題無いYO! 紀行ボーイにはここで寝泊まりしてもらうYO」

「……えっ」


  思わず声が出た。確認のためもう一度聞いてみる。


「俺だけ……ここに寝泊まり?」

「YES! それが君達がここで合宿する条件だYO? 琴音に聞いてなかったのかい?」


  琴音は会長の下の名前だ。記憶を思い返してみても会長にそんな事言われた記憶は無い。


「もしかして琴音の紀行君に対するサプライズかもYO? FOOFOO、琴音もなかなか粋な事するねぇ!」


  いや、違う。会長はそんなサプライズとかする人では無い。これはあえて言わなかったのだろう。もしこの事を言われたら俺も少しこの計画を実行するか迷っただろう。だから直前までこのことを言わず、このような形をとったのだろう。


  実際、ここまで来て架純や有栖にこの計画をやめるなんて到底言い出せない。神原 琴音、あなどれない女だ。


「それでお爺さん……どうして俺だけここで寝泊まりするんですか?」

「それはもちろん、たくさん組手をする為だYO!紀行ボーイは寝る必要ないんじゃろ?だからここでワシが倒れるまで組手をするんだYO!」

「ちょ、ちょっと待ってください。俺だって無限に動けるわけでは」

「なんじゃと?」


  俺の能力、【ゾンビ】によって変わった身体は確かに寝る必要も無いどころか、疲れも感じず、怪我も瞬時に治る上に首を切られても復活する、一見最高の身体に見える。が、世の中そんな上手い話はない。このありえない状態がどうやって成り立っているか。


  それは大量のエネルギーの消費である。


  疲れない代わりにエネルギーを消費する。死なない代わりにエネルギーを消費する。普通に生きているだけでも常人の何倍のエネルギーを消費する。最初急激にお腹が減ったのはエネルギー不足に陥っていたからだろう。


  そして理由は不明なのだが俺は肉からしかエネルギーを補給出来ない。そして何か食物を口にしていれぱエネルギーの消費が抑えられる。どうして?と言う前に、こうなった理由は俺ではなく元々の能力の持ち主のデザイアに聞いて欲しい。


 そして俺はずっと空腹を満たす為に常に飴を舐め続けて、食事は大量に肉を摂取している。それでも動き続けるにはエネルギーが足りない。エネルギーが少なくなってくると重りを着けながら海底を散歩するがのごとく、身体が重くなり、動かなくなってしまうのだ。


 その事をしっかりとお爺さんに伝えた。


「……というわけだ。俺は長時間動き続ける事は出来ないんだ。だからお爺さんの期待には応えられない」

「OK、なら逆にエネルギーさえあれば動き続けられるんだね?」


 そう言ってお爺さんが指をパチンと鳴らすと、俺が入ってきた反対側の入口からぞろぞろと料理を乗せる台車のようなものに、大量の肉を乗った皿を載せて運んで来た。


「琴音から聞いているYO、紀行ボーイがかなりの肉食家ってね。その為にこの肉を用意したんだけどちょうど良かった、これで文句は無いじゃろう?」


 ありったけの肉、肉、美味そうな肉。今すぐに食べ尽くしたい衝動が身体を巡る。


「その前にまずはエネルギーが切れるまでワシと組手するんじゃYO?ほれ、帰った帰った」


 餌を前にした犬のような俺をよそ目に、爺さんの一声で肉を乗せた台車はどこかへ行ってしまった。


「あぁぁぁぁぁぁ! 肉ぅぅぅぅぅぅ」

「ほれ、そんな叫ぶエネルギーがあったらワシと戦うんだYO!」

「言われなくてもやったらあ! 肉の恨みを思い知らせてやる!」


 俺の悲痛な叫びが道場に響き渡った。


 ◇


「……なんで一発も当たらないんだ」

「HAHAHA、これが年季の違いって奴だYO」


 時刻は夜8時。ここに来たのが朝の10時だったからかれこれ10時間も経っている。そして今は3度目のもぐもぐタイム中だ。


「俺も無駄な動きはだいぶ減ったと思うんだけどなぁ」


 口いっぱいの肉を飲み込んでから独り言のように呟く。


「確かにそうじゃのう、最初に比べれば雲泥の差だYO。ワシももう少し本気……手を出そうかのう?HAHAHA」

「本気!?」

「ワシも好きじゃないんだよねぇ、マジな勝負って奴は。ワシのキャラじゃないしね。まあ、でも殴り合うなら本気でやろうか?その方が楽しいだろう?HAHAHA」


 今まではこっちが殴るだけで反撃が無かった為自由に攻撃が出来た。まあそれでも一発もマトモに当たった事は無いんだけれど。それすら出来なくなるとするとどうしようも無い。


「……なんて冗談だYO、まずはワシに一発当ててからその話はするとしYO。よし、ワシもそろそろ休憩するとしたいし紀行君、今のうちに風呂に行くといいYO」

「えっと、風呂ってどこですか?」

「ウチの使用人について行くといいYO、おーい」


 お爺さんが手を叩くと1人のメイド服を着た女性が入ってきた。メイド服なんて二次元か喫茶にしかない物だと思っていたが、まさかこんな所で見られるとは。


「紀行ボーイを風呂まで案内してあげてYO」

「かしこまりました。紀行様、準備が出来しだい案内させていただきます」


 深々と頭を下げる。一つ一つの動きに気品がありプロのメイドというものを実感する。


「わ、分かりました。すぐに準備してきます」


 若干メイドさんに見とれつつ、既に用意してあった服を持って、風呂場へと案内してもらった。


 ◇


「おおおおお……これが金持ちの風呂……」


 風呂場に足を踏み入れて真っ先に感嘆が出た。俺達庶民の風呂とは到底離れた、温泉のようなとてつもない風呂。大浴場からジェットバスに加え、冷水風呂、サウナも完備。外には露天風呂、足湯、寝湯、座り湯まで何でもある。まさに豪華よくばりセットだ。


「すげぇ……想像以上にすげえ……」


 ボキャブラリーの少ない俺はすげえ以外の言葉が出てこない。能力ではどうしようも無い、精神的な疲れを癒すべく飛び込みたい気持ちを抑え、まずは洗い場へ行きしっかり髪を洗う。


「このシャンプーも匂いがいいなぁ。流石金持ちのシャンプー」


 シャンプーに加え、いつもだったら使わないリンスまで使ってしまう。おかげでいつも以上に髪の毛がサラサラになった気がする。


「さて、次は身体か。シャンプーと同じくいい匂いなんだろうなぁ」

「うん、とってもいい匂いだった」

「そうか!それは良かった!」


 ボディソープを出し、スポンジでよく洗う。うん、確かにこれもいい匂い……あれ?


「ね?いい匂いでしょ、紀行」

「……えっ?架純?」


 タオル1枚を身体に巻き付けた少女は、至って自然のように俺の隣に座っていた。

次回はさらにハイテンション!

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