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俺、ゾンビの能力で最強になります。  作者: 雨流 丁亜
第二章 俺、能力者と出会います。
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第10話 【分析】を持つ女

「……なんやその顔。ウチに不満があるって顔やな」

「正直不安しか無いから。お前馬鹿そうだし」

「ウチは馬鹿じゃあらへん!」

「どう見ても馬鹿だろ。勘を信じきってる奴は大抵馬鹿」

「馬鹿馬鹿言うなー!」


 ギャーギャー騒いだ後、有栖は1つ咳払いをして落ち着きを取り戻す。


「もう、勘だけで組んだわけじゃなか。ちゃんと明確な理由もあるから」

「本当にあるのか?」

「……というか、よう考えてみ。ウチには選択肢ないんや」

「選択肢が無い……?」


 有栖は話を続ける。


「まず、屋上来るまではウチも能力分からんし、一種の賭けやったんよ。もし激強の能力だったら話し合う前に先手必勝。殺られたかもしれへん。そんな奴にチームなんていらへんもん。そういう点で紀行君は話し合ってくれる分、ウチは賭けに勝ったわけやな」


 確かに俺もそれを警戒していたからな。かなり身構えていたもんだ。


「でも俺が裏切る可能性と何の関連性が……」

「あるで。いったやろ?ウチは弱い能力や、もし次会った能力者がさっき言ったみたいな奴やったら?ウチはゲームオーバーや。だからウチは信じる信じられへん以前に誰かに縋って生きるしか方法が無いねん。裏切られたらそこで終いや」


 そうか。こいつも俺みたいなデザイアの被害者だったのか。


 能力といっても1000種類あるわけだ。その中で強い奴も弱い奴、戦闘向けやサポート向きやら色々あるだろう。有栖みたいなサポート向きの能力の奴は戦闘向けの奴と手を組まないと生きていく事が難しいってわけだ。


 ……俺は戦闘向きでもサポート向きでもどっちでも無いんだが。


「それでな! ウチ、能力の強さ見れる言うたろ?紀行君の能力はかなり強い方ってもうこの人とチーム組むしかないって思ったんや。でもゾンビって本当に強いんか……?」

「…………」


 ここまで言われて流石に申し訳無く、俺も現時点で分かっている俺の能力を話した。



 ◇


「…………それほんまか」

「…………本当だ」

「やっぱりか〜!ホンマに強い奴なら組んでくれへんと思ってたけどやっぱり戦闘向けの能力じゃなかったか〜!」


 先程まではしゃいでいた少女は非常に大きなため息をつき、明らかに落胆の色を見せた。


「……まあ、いざとなったら身代わりになってくれるからええか!良かった〜、これでウチも安泰や!」

「ちょっと待て、身代わり!?」

「せや、死なないんやろ?ならウチの為に身代わりになってや」

「嫌に決まってるだろ!ならチームを組まねえ」

「その代わりウチは能力者の位置とか情報教えたる。それでギブアンドテイクや。もしそれでどうしても避けられん戦いになった時身代わりになってくれればええんや」


 正直どう考えても俺の方が凄い重労働している気がする。というか何か忘れている気が……


「あっ、鍵!俺ら2人で鍵を使えばこの実験から抜けられるじゃないか!」


 どうやって生き残るとかその事ばかりで鍵の存在を忘れていた。これで万事解決……


「やめとき。それは本当に命がやばい時の自決手段や」

「は……?どういう事だ」

「結論から言おか。その鍵を使われた者は……精神が崩壊する可能性がある」


 じゃんじゃじゃーん。今明かされる衝撃の真実。


「ウチも自分ので試したんよ。そしたら……鍵を刺した瞬間、上手く言えへんけど心を掴まれた気がすんねん。それ以上は恐ろしくて出来へんかった。なんならウチが紀行君に試したろか?」

「……お断りだ」


 やっぱりデザイアは地獄から簡単に逃がしてはくれない。少しでもあいつを信じていた俺が馬鹿だった。やっぱりあいつは悪魔だ。


「という訳で、これからよろしゅうな。紀行君」

「ちょっと待て。お前が裏切る可能性もなくはないだろ? お互い何か信用出来る物が欲しい」

「そうだなぁ……ならこれあげる」


 と言ってポケットから普通の鍵を取り出す。


「これ、ウチの家の合鍵や。これじゃあ不満?」

「……本当に言ってるのか?」

「ええで。これで信頼を得られるなら安いもんや。信頼出来んくなったら襲いに来てもええ。一人暮らしだし襲われたらウチは対応出来へん」

「……分かった。だが俺はどうすれば」

「あ、それは大丈夫やで。裏切ったら能力で知った知られたくない秘密ばら蒔くから」

「なっ……!?」

「という事で改めてよろしゅうな、紀行……いえ、ゾンビ君」


 満面の笑みを浮かべながら手を差し出す。


「ここまで来たら仕方が無い。最後まで生き残るぞ、分析女」


 俺も少し笑って有栖の手を取った。

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