2話:少女との出会い……
今日は朝から外で、授業で戦闘などの訓練をするようだ。
この世界での基本的な戦い方は三種類の内から一つを選び戦う。一つ目は剣や槍などの武器を扱う、二つ目は体術等、そして三つ目は魔法を扱う。
他にも、四つ目として三種類の戦い方を全て駆使する戦い方もある。しかし、この戦い方は魔法によって多くの魔力を消費する為、魔力が多くなければ身体の動きが鈍ってしまうので近接戦では上手く戦えない。
さらに、無詠唱でなければ戦闘中に舌を噛み切る恐れがある。なので普通なら戦闘中には圧倒的に不利となる。
これらにより、普通なら三種類のうちの一つを選び戦うこととなる。
まあ、俺は四つ目が普通に出来るが……
「よし、三種類に別れてそれぞれグループを作れ!」
今回は、三種類の戦い方がそれぞれの場所に移動して訓練するらしい。ちなみに俺は武器の方に行く。
武器は片手剣、両手剣、槍、弓矢、短剣、刀のどれかを学ぶらしい。担任の先生は銃を持っていたが、これは軍に入らなければ学べないし所有も出来ない。
他にも魔剣や聖剣等もあるのだが、世界に数える程しかない。それに、剣が扱えなければ手に入れたところで意味はない。
俺は片手剣や刀を主に使う。片手剣は盾を反対に持つことが出来るので有名だが、俺は盾が邪魔にしかならないので絶対に持たないことにしている。
「さあ、同じグループの奴とペアでも組んでさっさと始めるように!」
どうやらペアを組まないといけないらしい。まあ、皆どんどんペアを組んで訓練を始めているのだが「最後まで残るであろう俺には関係ないか」と考え素振りでもしようかと思っていると後ろから声を掛けられた。
振り返り、声を掛けてきた相手を見たが……正直、とても驚いた。
「お前も残ったのか?」
なんと、ユウだった。何故、ユウのような奴が残るのか考えた。理由はすぐに分かった。
おそらくだが、自分より体格の大きいユウに他の人はビビっている。まあそうだよな、自分より身体がずっと大きな相手に挑む勇気はないだろうな。 などと考えているとユウに再び声を掛けられた。
「で、どうする。一緒に組むか?」
「ああ……俺はそれで構わない」
そして、返事をして一緒に訓練し始めた。
ユウは両手剣を使うらしい。普通なら両手剣に片手剣で挑むのはある意味では無謀とも言える。
だが、それはスピードのない者の話だ。相手よりも素早く動ける、または技術があれば特に問題はない。俺の場合は両方可能だが、今回は後者を選ぶ。
そして、ユウが斬りかかってきた。その瞬間に、上手く受け流しバランスを崩したところで斬るという単純な方法だがこの程度で問題ない筈だ。
それに、これは相手の体格が大きいほうが使いやすいのでユウ相手には有効だ。
「うわっ!?」
その結果、ユウはバランスを崩してたのもあり勢いよく転倒した。
あっ、派手にやり過ぎた。周囲を確認すると、同じグループのほとんど人が俺を見ていた。
「あの、いや、これはたまたまで……」
あまり目立ちたくないので、誤魔化そうとしていると……
「うおー! 今の見たか! 凄かったな!」
「おい、今の見たか! あんな流れるように相手倒すとか凄いな!」
あれ、思った反応と違った。もっと引かれるかと思ったのに。それどころか、逆に絶賛の渦が出来上がっていた。
「イテて……てか、凄いなお前!?」
その後、なぜかユウからも絶賛されていた。どうこの状況を打破しようかと考えていると……
「へえー、君凄いね!」
なんか緑髪ショートで、短剣を二本両手に持った女子が話しかけてきた。初対面の相手にはいきなり話しかけられるのには慣れていないのだが……それも女子に。
「君は、えーと……」
「ボクは、アリス・エミリーっていうの! クラスメイトとしてよろしくね!」
「ああ、俺はウィン・アルストだ。よろしく……」
自己紹介してる間もずっとぴょんぴょんしてて元気な娘だなと思っていると先生から号令がかかった。
「次はマラソンだ全員並べ! 並ぶのに一分遅れるごとに1km追加だ。さっさと並べ!」
俺からしたら1km程度ならたいして変わらないが他の生徒からしたらとても嫌らく急いで整列しに向かっている。
「じゃあ、ウィン! これからよろしく!」
そう言って彼女も走って整列しに行ったと思ったら……
「うわっ!」
10メートル程進んだ先で勢いよく転んだ。見事に頭からバタンと……
「その、大丈夫か……?」
「うん! このきゅらいだいびょうぶ!」
うん、鼻血出て涙目になっている。まあ、本人が大丈夫だと言っているし大丈夫だと思うが。
…………いちおう治癒系の魔法かけといてあげるか。彼女は多分あれだな、元気過ぎて動きまわった挙げ句怪我するタイプだな。
それと胸と背については可哀想だが、現実を受け止めてもらうしかないな……