11
11
「今日は能力の定期検診だよ。皆、学院の医務室に集まるように」
検診。検査される。見つかる。調教される。
医師の聞き取りと能力検査。
能力を持つ医師が、相手の心に触れていく。
ミアンはしっかりと心を閉ざす。表層を吹き荒れる恐怖の嵐。
「ハーミアン。ただびと。能力なし」
医師が書き込む。
何十人も見なければならないのだ。使用人のちょっとしたひっかかりにかまっている時間はない。
「しかし、臆病だね、この子は。診察がそんなに怖いかい?」
逆に、食い下がったのはカナだった。
「駄目なんですか、私、これっぽっちも力はないんですか?」
「諦めるんだね、きみはただびとだよ」
「父はただびとだったけれど、母には力があったんです。きっと、きっと私にも!」
「こればっかりはね、遺伝じゃないのだから」
「カナ」
夕食に出て来なかったカナを心配して探した少女たちは、大階段の陰でしゃがみ込んでいたカナをみつけ、部屋に連れ帰った。
「私だって、私だって、母様みたいな能力があっていいのに。
能力さえあれば、学院生になれるのに。
貴族の血を鼻にかけて威張っているやつらを見返してやれるのに!」
「能力を持ってたって、そんなにいいことはないわよ」
エレという少女が慰めようとする。
「うちは兄さんだけが能力者で、院生になれたの。力を引き出す訓練は大変よ。
結局たいした力はなくて、うちに戻って商売を継いだわ」
「それでも!能力さえあれば、こんな生活から抜け出せるのよ!
他に方法はないわ!」
「やーね、もとお嬢様は。こんな生活で悪かったわねぇ」
「家や家族をなくしたのはあなただけじゃないのよ」
「親の七光りなんかない子のほうが多いんだから」
空気が。
ぎすぎすした空気が、ミアンを取り巻き、息が苦しくなる。
もう、やめよう。喧嘩は止めよう。
歪みが、歪みが大きくなるよ。
『歪み』
ふっと出て来た、その言葉。
どうして?
なん・・・だったっけ・・・?




