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「キャァァアアアアアアアアッ!」


 クラブダイルが機体を大きく揺らしながら着実に這いあがり、そしてその巨大なハサミをサイドドアから機内に突っ込んできた。


 木の棒でハサミを殴打してみるが、何故かあまり効き目は無い。向こうも土壇場で根性を見せてるとか、そんな感じなのか。


「く! みんな下がってて!」


 キャサリンが俺とレベッカを下がらせ、大型チェーンソーを構えて前に出る。


「キャサリン、大丈夫か⁉」

「大丈夫じゃなくても大丈夫なようにやってやるッ! イィィィィイイヤァァアアアアアッ!」


 キャサリンは豪快にチェーンソーをカニの腕に叩き付け、それで傷がつかないとわかると何度も同じところに叩き付けることで無理矢理外殻を打ち砕き、その傷口に無情なる機械の牙をねじ込んだ!


「てぇりゃぁぁあああああああッ‼ ハァッ‼」


 そして全体重をかけながら最高出力で回転させたチェーンソーをクラブダイルの腕にめり込ませていき、遂に腕の一本を切り落としてしまった!


「フォーッ‼ 流石災害対策万全系女子だぜキャサリン!」

「いえ、まだよ! まだ腕は一本残ってるし、こいつ、全然怯んでないわ!」


 木の棒で突かれると怯むのにチェーンソーで腕を落とされても怯まない生命の神秘。 


「そ、そうだ! 振り落としてやる!」


 ダニーが慣れない操縦であるにも関わらず操縦桿をやたらめったらに動かして機体を揺さぶる。するとクラブダイルが少しばかりふらついた。


「よし、行けるぞ! このまま落としてやる! キャサリン、もっと脚を切り落としてやれッ!」

「いや、まだだ! まだ落とすなダニー!」


 だが俺はそれに異を唱えた。


「おいおい、今更クラブダイルに情でも移ったのかいライアン?」

「馬鹿言うな。今ここで落としても解決にはならんということだ。何せあの生命力だ、もしかしたらこの程度の高さからなら落ちても生き残って、また人を襲い続けるかもしれない」

「おいおい、じゃあどうしろと? まさかこのまま宇宙まで飛んでって、地球外に怪物を追放しろとでも?」

「そうは言ってない、ちゃんと落とすさ。ただし、あそこでだ」

「おいおいマジかよ。そりゃあ、確かにあそこに落とせば倒せる可能性もあるだろうけどさ……でも、悪くはないアイデアかも」


 俺が指差した先を見て、ダニーは唸った。キャサリンとレベッカもこの賭けに乗るようだ。


「……だが、本当に上手くいくのか?」

「大丈夫だ。この手の怪物はボンベの次くらいに、こういう攻撃に弱い。それに、どうやらあそこはもう避難済みのようだからなおさら持ってこいだ」

「そういうもんなのか?」

「細かいことは気にするな! とにかくあそこの上空に向かって全速で飛ぶぞ! 俺らも手伝うから!」


 俺たちの乗ったヘリは共同操縦によって何とかバランスを取りながら、その状況下で出せる限界の速力を以てして俺の見据える先に向かって疾走する。


「今だ! 急減速しながら右回頭‼」


 俺の号令と同時に、ヘリコプターは機体を九十度右方に旋回しながら空中で急減速! 空中でドリフトするような激しい機動だ!


 その勢いのまま空中で何回転もしながら静止!


「よし! 振り落としたぞ!」


 この急激な機動にクラブダイルは耐えられなかった! クラブダイルの脚は急激な慣性によって引き剥がされ、重力に引っ張られて落下する!


 そしてクラブダイルが落下したところから、辺り一面を蒼白く染めんばかりの激烈なスパークが発生した!


 そう、俺たちがクラブダイルを落としてやったところは、変電所なのだ! 変電所の電線を断ち切り、鉄塔を倒し、配電盤を押し潰しながら落下したクラブダイルが、莫大な電気の奔流にその身を焼かれているのである!


「やった! 死んでるぞ! クラブダイルを殺したぞ! イェア‼」

「ハッハァ! ワニとカニのダブルバーベキューだ!」


 しかし地上に横たわる焼け焦げたクラブダイルを視認した直後、俺たちは強烈な遠心力に身を揺さぶられた。


 無理な機動と不馴れな操縦が祟って、失速してしまったのだ。


 身体が重力を感じなくなる。落下が始まったのだ。


 ああ、俺はここで死ぬのか。ならば次こそは、色んな意味でまともな世界に生まれたい……でもこの世界でも、もう少し平凡な高校生なりに色々と楽しんでみたかったな……。


 そう死を覚悟したところで、俺の視界は暗転した。


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