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「どうしたのベッキー。何か気付いたことでも?」

「こ……これです」


 レベッカが震える手でスマートフォンを操作して、その画面を俺たちの方に向ける。


「ロ、ロボコンダがわたしをフォローしてます……」


 そこに映っていたのは、SNSの通知画面だ。そしてこう書かれていた。「ロボコンダさんがあなたをフォローしています」と。


「え……ちょ、待った待った! 何これ? ロボコンダってあのロボコンダ? 誰かの悪戯じゃないの?」


 流石のキャサリンでもこれには混乱しているようだ。そりゃそうだろう、如何にあらゆる災害を想定して備えているとは言え、機械の蛇がSNSで親友をフォローするなんて、文字通りに想定外だろう。俺でもこれは正直、自分の頭の方を疑う。


「そうか、わかったぞ! 奴が突然携帯ショップに突入した理由が!」


 しかしケヴィンは目を大きく見開き手を打って一人合点していた。


 もし彼が研究所の護衛やっていた経験でこんなことに対する理解力を会得したのだとしたら、俺は一生そんな業界には行きたくないと思う。


「え、今ので何がわかったんです?」

「自己進化だ……ロボコンダは生物を急に機械に作り変えたものだから多分不完全なんだ色々と。だからそれを自己進化によって補おうとしているんだ!」

「自己進化……なるほど、そのために他の精密機械を取り込もうとしている訳ね」

「恐らくそうだ。今や機械の身体となった奴は、人間の捕食よりも精密機器の摂取を優先するだろう。そして、携帯電話かパソコンを自らの一部としてしまったことでネットに接続できるようになったのだとしたら、そのアカウントも本物の可能性が高い」

「ロボコンダという名前を自分でも名乗ってるのも、名前が無いところに丁度ネットニュースの情報が入ったからだと思えば合点がいくわね」


 もっと根本的なところが合点いかない気もするのだが、これも起こってしまった以上は仕方が無いのだろうか。


「それでベッキー、ロボコンダは一体何を呟いてるの? もしかしたらそこに何か鍵があるかも」

「え、は、はい! TLを見てみます……あ、これです! これが最初の呟きです!」


 レベッカが慌てながら液晶画面をスワイプして、ロボコンダの履歴から探し出した書き込みを示す。


 そこにはこう書かれていた。


『あー、オレェ、ロボットになっちゃったよー』


 散々暴れておきながら、出来の悪い脚本を演技経験の無い人が読んだような気の抜ける台詞で被害者面である。ナメとんのか。


「なるほど、やはりネットに書き込みができる程度には自己進化を成し遂げていたのか。ならば交渉もできるかもしれない……レベッカさん、そのスマホを貸してくれるか?」

「は、はい」


 ケヴィンはレベッカからスマホを受け取ると早速、ロボコンダに対してリプライを送った。内容はこうである。


『違うよ。大蛇の心を持つ、ロボコンダだよ』


 心が大蛇なら人が喰われることには変わりは無い気しかしないのだが。


 するとロボコンダはすぐさま喰いついてリプライを返してくれる。


『ロボコンダ?』


 自分で名乗っとったやろ。


『身体はロボットだけど、心は大蛇だ。ハッピーバースデー、ロボコンダ!』


 以後、ロボコンダからの返信無し。


「……何でこんな文面で説得しようと思ったんですかケヴィンさん……」

「い、いや、本来の自然界の動物としての心を思い出せば大人しくなるかと思ったのだが……」

「何言ってるんですか、普通の大蛇でも人襲う時は襲うでしょうが! 悪魔の力身につけた正義のヒーローとは訳が違うんですよ!」


 元海兵隊だか何だか知らないが、ちょっと心配になってきたぞ、この人。


 そしてケヴィンがこの調子だと、こないだの事件みたいにまた俺が首突っ込んで色々しないとまともに収束させられる気もしない。俺とて別に怪事件の専門家でも何でもないのだが、少なくともあんな文面でロボコンダを説得できるとは思わない。


 適当にケヴィンを支援したら抜けようと思ってたのに、何だか話の流れ的にもそうはいかなさそうな気がしてきてしまった。


「う、うーん、とりあえず、ロボコンダは自己進化のための電子機器取り込みを中断する気は今のところ無いようだ」


 ロボコンダの新しい呟きを見てみると、電子機器を取り込む意気込みやらが書かれていた。


 だが、これは案外希望が持てるかもしれない。


「……ロボコンダが今後も電子機器を食べ続けるなら、ここに勝利の鍵があるかもしれないな」


 俺はスマートフォンの画面を睨みつけながら倒すべき敵の持つ普通にモンスターとは違った特徴、その可能性に思考を巡らせ、やがて奴に対抗し得るかもしれない作戦を思いついた。


 だがこれにはタイミングもあるし、人手や下準備も必要で、確実という訳でもない。ここぞという時に使う切り札だ、そう思った俺はこのアイデアを今はしばし、沈黙することとした。


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