昼(6) おさらい
フェゴールの秘密をイサカから教えてもらうため、秘密を知りたい人を集めていたのニャ。
結局、モナ師匠と数合わせのステアーしか集まらず、他のメンバーには秘密を暴くのは感心しないニャ! と注意されたニャ。
それでショボーンとしていると、緊急招集のアラームが鳴ったので、急いでイサカのもとに集まったのニャ。
なんで彼女のもとに集まるのかと言うと、フェゴールがいないときの次に偉い立場がイサカだからニャ。
「皆さん、よく集まってくれました。先ほど、フェゴール様から連絡があり、思いのほか時間がかかるとのことで、プランBを遂行しようと思います」
プランBが何なのかわかんニャかったから、ステアーに聞いてみた。
「わふー」
聞いた相手が悪かったのニャ。だから、モナ師匠に話を振ってみたのニャ。
「プレイBなら知っておるがの」
幼女に訳知り顔でニヤニヤされたが、そんなのあたちが聞きたい情報じゃないのニャ。
「プランBとは、フェゴール様の代わりに怪盗ルペンの真似をして宝石を奪う仕事と、今回の仕事の上で立ち塞がるであろう脅威・泥門グループの資産を強奪もしくは無力化を狙う計画ですよ」
こそこそとしていたつもりが、イサカには筒抜けで、あたちの視線に合わせるかのように腰を落としたイサカからそう説明を受けたのニャ。
「宝石を奪うのはわかったのニャ。でも、次の説明がよく分かんなかったのニャ」
あたちがそう言いながら小首を傾けると、イサカはあたちの頭を軽く撫でた後、言ったのニャ。
「泥門さんというお金持ちの家に行って、泥棒をするのです。金の延べ棒といったわかりやすいものと、株や小切手といった有価証券という、お金持ちの信用の証となるものを奪い取って、泥門さんのステータスを貶めて、困らせる作戦です」
ごめんね、イサカ。あたち、それでもわかんニャかった。
顔に出ていたのか、その後の計画のルートで、あたちは宝石の方へと回された。
ちなみに、宝石強奪班は、イサカ、あたち(ラム)、ステアー、シグ、ベレッタ、モナ師匠。
その他のメンバーは、泥門邸襲撃班ニャ。
そして、移動には『バクゲキキ』というのに乗ったのニャ。
平べったくて、黒くて、変な三角形のだったニャ。
普通は、たった2人しか乗れないらしいけれど、そこはイサカ権限でヒコーキの中によくわかんないけど、広々とした空間を作ってくれて、あたちたちは全員乗ったのニャ。
もう一つのヒコーキもみんな乗っていたから、おんなじ仕組みになっているはずニャ。
今回のあたちたちの目的は、泥門というお金持ちのコレクションである宝石を奪うことニャ。
そして、その泥門だけど、ニャんとフェゴールが誰かを知っていたのニャ。
その誰かは「サタン」というフェゴールと同じ悪魔なのニャ。
ニャニャニャ。そのサタンはフェゴールと同じ扱いが嫌で、過去に追っ手を差し向けて、フェゴールを殺そうとした前科がある、すっごく悪いやつなのニャ。
「でも、どうして知っていたのニャ?」
なぜなら、フェゴールが直接、テレビの中のイケメンに出会ったところを見たメンバーはいなかったのニャ。
「情報提供者です」
イサカがそう教えてくれたのニャ。で、誰なのニャ。
「普通、そういうのはトップシークレットになっているのよ、子猫ちゃん」
と、いつのまにか知らない女の人が、ソファの上でくつろいでいたのニャ。
金髪でオシャレな髪型にキラキラしたドレスの人だったのニャ。
というか、
「あたちにはラムという名前があるのニャ。お前は誰なのニャ!」
子猫呼ばわりされたから、ビシッと指をさしてみたのニャ。
すると、この女の人、イサカとはまた一味違った妙なオーラを出してきて、こちらの身動きを封じてきたのニャ。
イサカが恐怖であたちを縛るなら、この女の人はあたちの身体を重くしてきた。呼吸も何だか息苦しいのニャ。
「マモンさん、ラムの無知からくる発言については私が謝ります。どうか、作戦前のメンバーを消耗させるのはやめてくださいませんか?」
イサカがすかさず女の人の前に出て行って、あたちの代わりに謝ってくれたのニャ。
女の人ことマモンは、あたちをじっと見て、あたちの周りの様子がぐるぐるになったころに、あたちを許してくれた。
あたちは四つん這いになりながら、大きく息を吸って吐いてを繰り返したのニャ。
「子猫ちゃん、私の名はマモン。フェゴールと同じ悪魔よ」
と、マモンはあっさりと認めたのニャ。
それでも、泥門が悪魔だという理由にはつながらないのニャ。
「そうね。正体がわかった理由はね……アイツが私の利益を奪ったから、かな」
イサカが教えてくれた話によると、元々マモンがお金を稼いでいた地域に泥門が短い期間で大稼ぎをして、マモンの利益を奪ったみたいニャ。
それでマモンは相手がどういう人物かをそれなりのお金を用いて、探ったのニャ。
なかなか尻尾を掴ませてくれなかったらしいけど、大金を動かした甲斐あって、徐々に有用な情報が集まった、とのことニャ。その結果、悪魔でないとわからないある特徴を探り出し、裏を取ったうえで泥門が悪魔サタンだと判明したのだそうニャ。
「で、サタンってどんな悪魔なのニャ。スゴイのかニャ」
あたちの素朴な疑問に対し、しばらくキョトンとしていたマモンは、プッと吹き出した後、お腹を抱えて笑い転げたのニャ。失礼なヤツにゃ。
「子猫ちゃんもなかなか言うわねぇ。さすがはフェゴールのパートナーかしら」
でも、なんか褒められたので、エヘンと胸を張っておいたのニャ。
「そうね。強さを知りたいのなら、私たち7人の中ではナンバー2ね。
泥門ことサタンは、七つの大罪のひとつ、憤怒を司るわ。
ちなみに一番強いのが、傲慢を司るルシファー。一番弱いのが、怠惰を司るベルフェゴール。
私は、強欲を司っているわ。順位は4番目ね」
この発言であたちはまた疑問が湧いたのニャ。
ナンバー4がナンバー2に勝てるのかニャ? と。
「直接の殴り合いだったら、当然、負けるわ。でも、お金を扱う分野なら私がぶっちぎりで勝てるわ。今回だって、貴方たちフェゴールのパートナーズ全員を利用して、サタンが築き上げた財産を一瞬で失くそうとしているわよね。経済力で優位に立つには正攻法以外のやり方を駆使してでも相手を叩き潰さなきゃいけないの。それが同じ悪魔でも、私の得意分野で好き放題するなら、それなりの覚悟をするべきよ」
この話は、運動神経の良い人間があたちたち獣人に勝負を挑むようなモノみたいニャ。
どんなに人間としては才能に優れていても、生まれたころから瞬発力や判断力が優れた種族であるあたちたちに勝負を挑むとか、そもそも挑むこと自体が無謀になるのニャ。
つまり、そういうことを言いたいんだろうニャ。これは理解できたのニャ。
「わふー、わふわふわふー」
犬コロが窓際でいきなり興奮し始めたのニャ。
あの犬コロが興奮するのは決まってフェゴールを見つけたときニャ。
あたちも気になったので、窓から地面の風景を眺めたのニャ。
かつては賑わっていて、今はその残骸でしかない廃墟が広がっていたのニャ。
つい、あたちが生まれた国のことを思い出して、無意識にフーフー呻ってしまったのニャ。
「アオーーン」
犬コロがフェゴールに気付いてもらおうと、必死になって窓ガラスを叩きはじめたのニャ。
その音があまりにもうるさくて、無意識下の興奮が冷めたのニャ。
ヒコーキはあっけなくフェゴールを抜き去ったと同時に、犬コロが寂しそうにしていたのニャ。
これから任務だというのに、世話の焼けるやつなのニャ。
泥門のビル頂上に着くまでのあいだ、あたちは犬コロをかまってあげたのニャ。




