朝(3) ジュドーからの依頼
※あるアニメに対する、個人的な強い怨恨が文章の中に散りばめられています。
途中から不愉快を感じましたら、ブラウザバックを推奨します。
「朝っぱらから寿司かい。組織の金をこうも気兼ねなく贅沢している奴、初めて見たよぅ」
寿司バーのカウンターで鮪をほおばっていると、ジュドーがやってきた。
頬張っている最中であり、まともに返事できなかったので、片手をあげて、挨拶の代わりとした。
不遜な態度に思えたのか、カルメンににらまれた。
「とりあえず、ビール。それに、大トロを握ってもらおうか」
「何だ? ジュドーもしっかり食べるんじゃないか」
「ここの寿司はうまいって評判なんだぜ。せっかく来たんだから、何かつまんでも罰は当たらんさ」
手慣れた所作でお手拭きを扱うジュドー。
常連だろ、お前。
「アイザック、カルメン、お前らも何か注文しろ。気にするな」
確かに野郎二人がカウンター席で寿司を食べる図……は、寂しいな。
せめてカルメンが自分の隣に座って、華を添えてくれたらグッド。
「ウニ」
アイザックが自分の隣に座り、注文した。
よりによって、この筋肉ダルマが隣か。一気に場の空間密度が上昇したような気がした。
つまり、息苦しいってことさ。
「アタシは卵」
ジュドーの隣に座ったカルメンが、何とも控えめなメニューを注文していた。
「何さ?」
「いや、カルメン姐さんなら、鯛ぐらい頼んでもバチ当たらんよ?」
「変な気遣いなら、ほっといてくれないかい」
ありゃりゃ。ギブソンも言っていたが、カルメンは本当につかみどころがないな。
まぁ、いいか。スモークサーモン頼もう。
「あー、食べている最中でもいいや、とりあえず、耳に入れておいてくれ」
モグモグと食べながら、とりあえず自分は頷いた。
「オメエさん、昨日、マルコや修道院のチンピラたちをやっつけたそうじゃないか。そんなに強ければ、今夜のガロード戦、テツに任せなくてもいいんじゃないのか?」
情報早いな。しかし、短絡過ぎるな。まぁ、こっちの事情を知らないしな。しかし、カルメンの「よくやった!」と言わんばかりの清々しい顔つきが見れた。コイツはレアかもしれん。
緑茶で頼んだネタを流し込み、ジュドーとの会話に補足を入れることにした。
「まぁ、アレはギブソンがあんまりにも煽るから、ちょっと本気を出しただけだ」
「へぇ、アレでちょっとなのかよ」
「ああ、だが、今夜のガロード戦はあの姿には戻らない」
「何でだ?」
「エメラルド・シティに同じ悪魔がどこかにいるのは確かで、力を使うたびに、そいつに身元を特定されるんはマズいからな」
「何だって、そいつは本当か!」
同じ悪魔のくだりで、驚くジュドー。ただし、昨日と違い、耐性がついたのか固まるには至らず。
「お仲間さんなら、話し合ってどうにかできないのかい?」
カルメンが提案してきた。
「悪魔にも派閥があるんだ。まぁ、穏健派か強硬派しかいないが。で、自分は一応、穏健派寄り。まぁ、本音を言えば、中立」
「日和見主義とも言うんじゃないかい?」
カルメンが意地悪そうな視線で茶化してきた。
次は、大陸おすすめのクメン国ロールを頼んでみた。
「何とでもいうがいいさ。正直、魔界は特権階級を除き、それ以外が、身分の上下を問わず常日頃から争ってばかりだからな。どっちにも属さず、魔界を離れ、人間界で暮らすのも悪くないのさ」
「その魔界はまるでエメラルド・シティみたいだな」
「んー? ああ、そうだな。ジュドーたち幹部はともかく、構成員たちの命はすごく軽いよな。その悪魔がこの無法都市に吸い寄せられるようにして現れるのも不思議ではない……か」
納得しつつも、自分はこのクメン国ロールに対し、「ないなー」と酷評を下した。
何というかね、ものすごく油っぽい肉巻きで、手がすごくベタベタするのと濃い味付けが合わなかった。
それと比べると、アボガド(ちなみに正式名称はアボカド)を巻いたカリフォルニアロールの方がまだマシ……というか、マジうめえ。
残念ながら、世界が違うから注文できないんだよなぁ。
うむ、今、異世界に来ていることをかなり実感してるわ。
……あとで市場にでも足を延ばして、アボカドでも探して、夕食を巻きずしにしてみるか?
などという他愛もないことを考えていると、ジュドーから何か頼まれた。
テーブルのお皿を片して、ジュドーが持ってきた複数の写真に目を通した。
一人は、刀を差した美青年。その刀で独特の剣術を用い、一瞬にしてこちらの得物なり、分厚い防具をバッサリと斬ってしまうらしい。
別の写真を見てみると、割と真面目そうな人柄がうかがえる。が、いくら命が軽いので有名なエメラルド・シティの住人を大根の試し切りをするような軽さでバッサバッサと斬り倒していれば、当然、お尋ね者になるわなぁ。
「すでに、こちらの殺し屋が10人やられた」
おお、意外と強いな。
「いや、情報を拾うとな、散弾銃を近接距離から撃っても、銃弾が衣服を突き抜けず、ホコリを払うかのように手で払っただけですべての銃弾が地面に落ちたそうだ」
「ショットガンで撃って、顔に銃弾が着弾しないのはおかしい。その辺は?」
「そういえば、かなり涼しい顔をしていたらしいな」
すげー理不尽なチート臭がする。
この世界の神とやらは、自分たちの世界の神がそうだったように、忠誠を誓った美少年美少女に加護を与えたのだろうか。
そう聞かされると、コイツは強いのではなく、ズルいやつだった。
「もう一人はこいつだ」
と写真の中の被写体は、少女だった。しかも、銃スキーの自分が、現在最も激しく嫌悪している銃を持っていた。
その銃の名は、ヘカートⅡ。
ガトリングガン派の天敵である。
ヘカートⅡがあの放送を機に、有名になったらしい。そこはいい。問題は、「ガトリングよええ」「ガトリング時代遅れ」「マッチョは死んで正解」というアホなコメントが一部踊った。
自分はイサカに止められるまで烈しい殺意を抱いた。
聡子さんに頼んで、このあほなコメントした奴を特定してもらい、私誅に走ろうか。お前らのバカにするガトリングで身体全身を穴ぼこにしてやろうか、ともいろいろ画策した。
まぁ、やらなかったのは、日本が悪魔にもすごく過ごしやすい貴重なエリアという恩恵だ。
結果、自分は苦難の末、ヘカートⅡを毛嫌いすることにした。
そして、決めた。
美少女がヘカートⅡを持っていたら、問答無用で撃ち殺そう。
それも、ガトリングガンで。
世間への評価は得られないだろうが、美少女が対物ライフルを持っているだけでその銃が最高の兵器として称えられるのは我慢がならない。
ヘカートⅡは確かに優れた銃ではあるが、その銃を持っていれば何でもかんでも困難なミッションが簡単になるような銃ではない。
銃にはそれぞれの役割があり、決して万能ではない。
ちなみにこの美少女にやられた殺し屋の数は、17。
理由は、弾が全然当たらないらしい。あり得ない反射神経でハンドガンクラスの弾なら簡単に顔を振って避けるらしい。ショットガンが相手でもどこかの映画のクモ男みたいに、ワイヤーをうまく用いてあり得ない挙動を作り、巧みにかわすそうな。
「どうだろうか?」
「構わない。ガロード戦のいい前哨戦になるだろう」
こちらの方としても断る理由がない。
男の方はテツに相手してもらおう。
女の方は自分がやる。ただし、肉塊以外のまともな末路が想像できないがな。




